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2036年に、薬剤師は足りるのか

国は薬剤師の偏在を測るために「薬剤師偏在指標」という数字を公表しています。 1.00が全国平均で、それを下回ると相対的に薄い地域ということになります。 2036年の推計値も一緒に出ていて、それを335の二次医療圏ぶん並べると、こうなります。

230全国平均を下回る圏
(いま)
78全国平均を下回る圏
(2036年)
316/3352036年に
良くなる圏

335圏のうち316圏で改善し、平均を下回る圏は230から78へ減ります。数字だけ見れば、薬剤師の偏在は10年あまりでほぼ解消することになっています。 ではその改善は、どこから来るのでしょうか。

計算式を開けると、こう書いてあります

将来時点の薬剤師偏在指標は、①分子部分については、現在時点の算定式における調整薬剤師労働時間に、 薬剤師需給予測における薬剤師数の伸び率(1.15)を乗ずることにより算定する。 ②分母部分については、目標年次の直近時点の性・年齢階級別将来推計人口を用いて算出した 薬剤師の推計業務量を用いる。厚生労働省「薬剤師確保計画ガイドライン」(薬生総発0609第2号・令和5年6月9日)

分子は薬剤師の側、分母は仕事の量です。つまり2036年の指標は、どの地域の薬剤師も一律に1.15倍になると置き仕事の量は人口が減るぶん減ると置いて、割った数です。 この1.15という数字自体も、2036年の全国の需要数を全国の供給数で割ったもので、地域ごとの値ではありません。

ですから、ある町の指標が2036年に良くなるのは、そこで薬剤師が増えるからではありません。全国どこでも同じ倍率を掛けたうえで、その町から人が減るからです。指標は「薬剤師が行き渡った」ではなく、「相手の数が減った」ことを映していることがあります。

一律に1.15倍になる、とされている人たち

では、その分子を担うのは誰か。いま薬局で働く薬剤師は197,437人、平均46.8歳。19.6%にあたる38,785人が60歳以上です。5人に1人。70歳以上が11,481人、85歳以上も588人います。

薬局病院
薬剤師の数197,437人57,595人
平均年齢46.8歳42.5歳
50歳以上40.1%27.5%
60歳以上19.6%10.8%
70歳以上5.8%2.1%

70歳以上の割合は、薬局が病院の2.8倍です。病院には定年があり、薬局の開設者にはありません。その違いが、そのまま形に出ています。 70歳を過ぎて働き続けている11,481人は、辞めないことを選んでいるというより、辞めれば店が無くなるのかもしれません。 薬局の廃止届のうち3軒に2軒は承継・移転で、店はそこに残ります (廃止届と閉局の違い)。裏を返せば、引き継ぐ人が現れなかったぶんが、薬局のない自治体になりますいま145市区町村)。

そして、その年齢構成は地域で違います

60歳以上の割合は都道府県で大きく開きます。指標は全国一律1.15倍で計算されますが、その一律の前提と、実際の年齢構成は揃っていません。下の表は、各県の薬局薬剤師の年齢と、その県の二次医療圏のうち平均を下回る数です。

都道府県薬局薬剤師平均年齢60歳以上平均未満の圏
いま→2036
北海道7,32346.3歳19.5%19 → 6 / 21
茨城県4,10947.4歳19.8%6 → 1 / 9
兵庫県10,01247.4歳19.1%5 → 0 / 8
神奈川県16,69746.3歳18%0 → 0 / 9
鳥取県75449.3歳26.8%2 → 0 / 3
静岡県5,44847.6歳21.4%4 → 1 / 8
岐阜県2,79447歳22.4%4 → 2 / 5
東京都26,84145.9歳17.9%2 → 1 / 13
高知県99149.6歳28.4%3 → 0 / 4
宮崎県1,40148.4歳23.6%6 → 1 / 7
愛知県10,54246歳19.2%10 → 5 / 11
大阪府15,25846.5歳18.7%4 → 0 / 8
福島県2,51146.3歳20.9%3 → 3 / 6
石川県1,55546.9歳20.4%3 → 1 / 4
鹿児島県2,03349.5歳24.5%8 → 5 / 9
秋田県1,38948.9歳24.8%6 → 1 / 8
三重県2,42846.9歳20.8%4 → 0 / 4
佐賀県1,32749.3歳24.8%3 → 0 / 5
福岡県8,43747.2歳18.4%7 → 1 / 13
千葉県9,91846歳17.7%5 → 0 / 9
島根県89145.6歳19.1%5 → 2 / 7
滋賀県2,21646.2歳18.6%4 → 2 / 7
岡山県2,55647.8歳21.6%4 → 2 / 5
沖縄県1,57449.1歳24.7%4 → 4 / 5
宮城県3,66245.7歳17.8%3 → 0 / 4
福井県83947.8歳23.6%4 → 4 / 4
熊本県2,39047.4歳20.6%9 → 5 / 10
山形県1,45246.7歳22.9%4 → 0 / 4
青森県1,57547.4歳22.9%5 → 2 / 6
京都府3,63145.7歳17.9%5 → 5 / 6
山梨県1,26048.8歳25.6%3 → 1 / 4
奈良県1,79448.4歳20.9%4 → 1 / 5
埼玉県11,62145.6歳16.6%3 → 0 / 10
新潟県2,97946.1歳17.5%6 → 3 / 7
徳島県1,14848歳19.1%2 → 0 / 3
群馬県2,58547.1歳20.2%7 → 5 / 10
愛媛県1,95247.1歳22.4%5 → 2 / 6
長野県3,02649.6歳26.7%7 → 1 / 10
香川県1,42148.5歳21.1%1 → 1 / 3
広島県4,70347.7歳20.8%4 → 0 / 7
岩手県1,65147.4歳25.4%8 → 2 / 9
富山県1,30146.4歳20.2%4 → 3 / 4
和歌山県1,31850.8歳29.6%6 → 4 / 7
栃木県2,72345.2歳17%3 → 1 / 6
山口県2,08350.4歳26%3 → 0 / 8
長崎県1,83248.8歳21.9%7 → 0 / 8
大分県1,48649.9歳27.4%6 → 0 / 6

表は地理の順(JISコード順)です。高い順・低い順には並べていません。

この数字について

偏在指標は厚生労働省の薬剤師偏在指標(二次医療圏・病院/薬局別)。 2036年の値は上の算定式によるもので、各地域の薬剤師の増減を個別に推計したものではありません。 この指標が使っている「現在」は、薬剤師数が令和2年(2020年)の三師統計、人口が住民基本台帳の 2018年1月1日時点、受療率が患者調査2017年です。将来人口は社人研「日本の地域別将来推計人口」 平成30(2018)年推計の2035年値を用いています。 いっぽう年齢構成は令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計(2024年)で、指標の「現在」とは年次が違います。並べているのは同じ時点の比較ではなく、指標が置いた前提と、いま分かっている実態との照らし合わせです。ここでは「薬剤師が足りない」「余る」という判断はしていません。指標がどう作られているかを示すところまでが、このページの役割です。 個々の薬局・薬剤師は扱っていません。

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