CrossHealth / 薬局持久度レポート
処方せんが増えるのは、札幌だけ
北海道21の二次医療圏(全国最多)の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町村まで下りたレポートへ進めます。
北海道の調剤薬局は2,185軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、道全体では±0%——ほぼ横ばいです。既刊の4府県はいずれも+7.6%〜+11.1%と増える見通しでしたが、北海道は「高齢者が増えるから需要も増える」が成り立たない最初の地域です。しかも道全体の横ばいは平均の話で、医療圏に割ると-31.0%(南檜山)から+17.1%(札幌)まで48.1ポイント開きます。21医療圏のうち19圏でマイナス。はっきり増えるのは札幌医療圏ひとつだけです。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが南檜山医療圏(-31.0%)、いちばん伸びるのが札幌医療圏(+17.1%)。医療圏をクリックすると、その中の市町村差まで下りられます。
広さ ── 本州の県と同じ物差しでは読めない薬局1軒あたりの面積は、圏によって67.6倍違う
北海道の面積は78,369km²(北方領土を除く)。薬局2,185軒で割ると1軒あたり35.9km²です。ただしこれも平均で、札幌医療圏の3.8km²から遠紋医療圏の257km²まで67.6倍開きます。遠紋の1軒あたり257km²は、円に直すと半径約9kmです。本州の府県レポートで使ってきた「徒歩10分(約800m)で行ける薬局」という物差しは、北海道の多くの地域では意味を持ちません。実際、薬局が1軒も無い市町村が31あり(そこに住む65歳以上は30,095人)、薬局が8軒に満たない市町村まで広げると143——道内188市区町村の76%にのぼります。ここに道内の65歳以上の17.7%が住んでいます。※この面積の指標は行政区域ポリゴンの幾何だけから出したもので、道路・公共交通・冬期の通行は含みません。250mメッシュの人口を使った徒歩アクセス率(千葉県版で出したもの)は、北海道分のメッシュが未投入のため出せていません。
人口動態 ── 需要の源高齢者すら、もう増えない
北海道全体では、総人口は501万→407万人(-18.8%)と減ります。ここまでは他の府県と同じです。違うのは65歳以上で、169万→169万人(±0%)と、20年たっても増えません。高齢化率は33.7%→41.5%へ上がりますが、それは分母(総人口)が減るからで、分子は増えていません。道全体の65歳以上のピークは2040年。医療圏で見ると、21圏のうち18圏は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っています。そこには薬局が1,041軒(道内の47.6%)あります。まだピークが先なのは東胆振・十勝・札幌の3圏だけです。
集中 ── 北海道のかたち薬局43.0%・65歳以上42.0%が札幌医療圏に
北海道の薬局2,185軒のうち940軒=43.0%が札幌医療圏(17市区町村)にあります。65歳以上人口で見ても42.0%。面積では道の4.5%です。同じ見方を既刊の府県ですると、京都府の最大圏(京都・乙訓)は68.5%、大阪府(大阪市)は38.0%、兵庫県(阪神)は31.0%。北海道の集中は京都府ほどではありませんが、集中している圏だけが伸びるという点が違います。残り20圏の薬局は合わせて1,245軒で、そのすべてが横ばいかマイナスです。道を4ブロックに分けると、道央(1347軒・+6.2%)だけがプラスで、道南(-14.4%)・道北(-9.8%)・道東(-8.0%)はいずれもマイナスです。その道央のプラスも、札幌を除くと成り立ちません。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届100件のうち、そのまま消えたのは46件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に北海道で出された薬局の廃止届は100件。ただしこのうち54件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは46軒(薬局2,185軒の2.11%)でした。この2.11%は、同じ数え方で出した京都府1.67%・大阪府1.64%・兵庫県1.54%・千葉県1.48%より高く、5道府県でいちばん高い水準です。引き継がれなかった割合(廃止届のうち真の閉局の割合)も46.0%で、大阪府38.4%・京都府33.3%・兵庫県30.3%を上回ります。閉じた薬局の半分近くに、次の担い手が見つかっていない計算です。ただし件数は圏域に大きく偏っています。真の閉局46件のうち22件(47.8%)が札幌医療圏で、7つの医療圏では12ヶ月に廃止届が1件も出ていません(南檜山・留萌・北空知・上川北部・北渡島檜山・根室・東胆振/薬局174軒)。件数が一桁の圏域は1件で率が大きく動くため、圏どうしの率の比較は慎重にお読みください。
機能の届出 ── 需要の順位とは、そろわない兵庫県で見えた並びは、北海道では再現しませんでした
かかりつけ薬剤師指導料の届出率は北海道全体で66.8%。大阪府77.2%・兵庫県75.3%より低く、千葉県62.9%・京都府62.8%より高い水準です。道内では上川北部の37.5%から南空知の78.9%まで開きます。在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率は上川北部の20.8%から日高の64.5%まで。兵庫県では在宅の届出率の順位が需要の伸びの順位と8圏すべてで一致しましたが、北海道では順位相関が0.022(1に近いほど一致・0は無関係)で、まったく関係がありません。地域連携薬局も-0.003。「需要が細る地域ほど届出が薄い」という兵庫県の並びは、北海道では再現しませんでした。逆に強く出たのは広さで、薬局1軒あたりの面積と需要の変化の順位相関は-0.527(広い圏ほど需要が減る)。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。
ランキング ── 圏域差薄い圏ほど、これからさらに薄くなる
南檜山(-31.0%)から札幌(+17.1%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは南檜山の9,167枚から東胆振の17,762枚まで1.94倍の開きで、道平均は15,711枚。これは大阪府12,266枚・兵庫県13,628枚・京都府11,273枚より多く、1軒あたりで見ると北海道はいちばん厚い地域です(薬局の数が人口に対して少ないことの裏返しでもあります)。注意したいのは向きです。兵庫県では「いま薄い地域が、これからさらに薄くなるわけではない」と書きましたが、北海道では逆でした。1軒あたり処方せんと需要の変化の順位相関は0.603——いま1軒あたりが薄い圏ほど、これから需要が減る側にいます。実際、1軒あたりが最小の南檜山(9,167枚)は需要の変化も-31.0%で道内最下位です。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は出していません(下の注記)。
くわしい数字21医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 札幌 | 940 | 16,796 → 19,669 | +17.1% |
| 上川中部 | 198 | 14,574 → 14,131 | -3.0% |
| 南渡島 | 196 | 14,691 → 12,872 | -12.4% |
| 十勝 | 130 | 16,716 → 16,817 | +0.6% |
| 後志 | 104 | 12,635 → 10,015 | -20.7% |
| 釧路 | 93 | 17,045 → 14,737 | -13.5% |
| 西胆振 | 84 | 14,668 → 11,744 | -19.9% |
| 北網 | 75 | 17,335 → 15,538 | -10.4% |
| 東胆振 | 74 | 17,762 → 17,655 | -0.6% |
| 南空知 | 57 | 13,850 → 10,949 | -20.9% |
| 中空知 | 47 | 13,204 → 10,041 | -24.0% |
| 日高 | 31 | 11,607 → 9,557 | -17.7% |
| 上川北部 | 24 | 15,245 → 11,535 | -24.3% |
| 根室 | 23 | 13,564 → 12,584 | -7.2% |
| 留萌 | 21 | 9,280 → 6,526 | -29.7% |
| 遠紋 | 20 | 13,963 → 10,828 | -22.5% |
| 宗谷 | 20 | 15,514 → 12,467 | -19.6% |
| 富良野 | 16 | 14,780 → 12,677 | -14.2% |
| 北渡島檜山 | 13 | 11,794 → 8,979 | -23.9% |
| 北空知 | 10 | 15,297 → 10,843 | -29.1% |
| 南檜山 | 9 | 9,167 → 6,326 | -31.0% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。医療圏が21あるため、道央・道南・道北・道東の4ブロックでも畳めるようにしてあります。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計は、北海道では出せません
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿6府県だけを学習しており、北海道は学習の対象外です。近畿で推定した係数を、人口密度も距離も気候も違う北海道にそのまま当てはめることはしません。それまでは、確定している需要側の数字(将来推計人口とNDB処方せん実績)と、現在の供給の事実(薬局数・直近12ヶ月の閉局・面積)だけでお伝えします。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 北海道(このページ・Lv1)=21の二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市町村(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。供給の統計モデルが近畿6府県のみを学習しており、北海道は学習の対象外だからです。北海道を含めて学習しなおすまで、出しません。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・道全体で年間34,329,450枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。北海道は圏域が広く、患者が圏をまたいで受診する量も本州より大きい可能性がありますが、その流出入は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方と集計期間】厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。北海道の名簿アーカイブは2020年5月〜2026年7月と既刊で最長(全434件)ですが、収録元PDFが2〜3ヶ月分ずつの綴りで月の欠落があり、とくに2025年1〜4月が薄いため、暦年ではなく完全にそろう2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)を集計期間としました。この期間の廃止届は100件で、うち54件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは46件です。兵庫県(43件)・京都府(21件)とは同じ12ヶ月窓なので件数を並べられますが、大阪府(暦年2025・78件)や千葉県(暦年2025・42件)と直接並べることはできません。
- 【アーカイブ全期間の値は年次トレンドに使えない】2020年5月〜2026年7月の434件(うち真の閉局180件)は参考として保持していますが、2020年6月・2021年6〜7月・2022年7〜8月・2023年11〜12月・2024年1月・7〜8月が0件=収録の穴です。「年々増えている/減っている」という読み方はできません。
- 【圏域ごとの閉局は件数が小さい】北海道の真の閉局は12ヶ月で46件、うち22件が札幌医療圏です。9医療圏では真の閉局が0件、うち7医療圏は廃止届そのものが0件でした。1件で率が大きく動くため、圏どうしの閉局率・承継率の比較は傾向としてのみお読みください。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません。位置は届出上の市区町村コードで割り当てています(北海道は対象2,185店すべてに市区町村コードがあります)。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づき、申告データのある2,185店を分母にしています(道内全2,185店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【薬局が0軒・ごく少数の自治体】北海道では31市町村に薬局が1軒もありません(そこに住む65歳以上は30,095人=道内の1.8%)。薬局8軒未満まで広げると143市町村(道内188市区町村の76%)で、1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れます。表・地図では注記つきでお読みください。既刊4府県では薬局0軒の自治体は0〜1つでした(大阪府の千早赤阪村のみ)。
- 【面積の指標について】area_km2 は国土数値情報の行政区域ポリゴンから球面積を積算したものです(穴は減算)。道路網・公共交通・冬期の通行止めは含みません。「薬局1軒あたり35.9km²」は幾何的な広さであって、住民が実際にどれだけ移動するかではありません。250mメッシュ人口による徒歩アクセス率(千葉県版の指標)は、mesh_backbone_250m に北海道分が未投入のため出せていません。投入されしだい追加できます。
- 【北方領土】国土数値情報には色丹村・泊村・留夜別村・留別村・紗那村・蘂取村の6村(約4,900km²)が含まれますが、医療圏マスタにも将来推計人口にも収録が無いため、面積を含めすべての集計から除いています。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。北海道は21の二次医療圏で、これは全国最多です。府県レポートの「8圏」「6圏」と同じ感覚では読めないため、道央・道南・道北・道東の4ブロックの集計も併せて載せています。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【順位相関について】21医療圏あるため、兵庫県で使った「順位が何圏一致したか」はほとんど意味を持ちません(在宅は1圏)。かわりに順位相関(スピアマン)を出しています。相関であって因果ではなく、「だから在宅を増やすべき」といった主張はしません。
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