CrossHealth / 薬局持久度レポート
県の平均は、9つの医療圏のどこの実感でもありません
茨城県9の二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町村まで下りたレポートへ進めます。
茨城県の調剤薬局は1,372軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、県全体では+5.0%——ほぼ横ばいです。ところがこの「ほぼ横ばい」は、県内のどこの実感でもありません。医療圏で開くと日立の-7.9%からつくばの+30.3%まで38.2ポイント開きます。しかもこの落差は、つくば医療圏ひとつで作られています。つくばを外すと、残り8圏の落差は15.6ポイントまで縮みます。「つくば・県南は伸びて、県北は厳しい」と言われますが、数字を開くと県南の土浦医療圏は+4.2%、取手・竜ヶ崎医療圏は+4.1%で、県内2位は県南ではなく水戸医療圏(+7.7%)です。伸びているのは「県南」ではなく、つくば市でした。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが日立医療圏(-7.9%)、いちばん伸びるのがつくば医療圏(+30.3%)。医療圏をクリックすると、その中の市町村差まで下りられます。じつは3つの医療圏(鹿行、常陸太田・ひたちなか、取手・竜ヶ崎)では、圏の中の市町村どうしの落差が、この地図の色の落差(38.2ポイント)よりも大きいので、圏の色だけを見て終わらないでください。
広さ ── 平地の県、それでも3倍の差薬局1軒あたりの面積は、圏によって3.1倍違う
茨城県の面積は6,096km²。薬局1,372軒で割ると1軒あたり4.4km²です。ただしこれも平均で、つくば医療圏の2.6km²から常陸太田・ひたちなか医療圏の8.1km²まで3.1倍開きます。薬局が8軒に満たない市町村は7あり(県内44市町村の16%)、そこに県内の65歳以上の4.4%が住んでいます。うち河内町には薬局が1軒もありません(高齢化率43.0%→56.2%、総人口-38.8%)。※この面積の指標は行政区域ポリゴンの幾何だけから出したもので、道路・公共交通・地形は含みません。250mメッシュの人口を使った徒歩アクセス率(千葉県版で出したもの)は、茨城県分のメッシュが未投入のため出せていません。
人口動態 ── 需要の源総人口は15%減る。65歳以上はほぼ横ばい
茨城県全体では、総人口は278万→236万人(-15.2%)と減ります。65歳以上は87万→92万人(+5.0%)で、20年たってもほとんど増えません。高齢化率は31.4%→38.9%へ上がりますが、それは分母(総人口)が減るからです。県全体の65歳以上のピークは2040年。医療圏で見ると、9圏のうち2圏(日立、筑西・下妻)は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っています。市町村まで下りると、44市町村のうち21市町村がすでにピーク越えです。高齢化率がいちばん高いのは大子町の52.2%で、いちばん低いつくば市の20.1%とは32.1ポイント違います。同じ県の中に、住民の2人に1人が65歳以上の町と、5人に1人の市が同居しています。
地域区分 ── 県北・県央・鹿行・県南・県西県南は伸びる。ただしつくば市を外すと+5.1%
茨城県を県の総合計画と同じ5区分で見ると、65歳以上人口が増えるのは県南(+11.9%)と県央(+11.6%)で、県北(-9.7%)・鹿行(+1.9%)・県西(-0.7%)は減るか横ばいです。ここまでは「県南が伸びて県北が厳しい」という通説どおりです。ところが県南14市町村からつくば市(65歳以上+43.9%)を1つ抜くと、残り13市町村の65歳以上人口は+5.1%まで落ちます。県南が伸びているのではなく、つくば市が伸びているのです。県内最大の医療圏は水戸(薬局17.7%)で、一極集中はゆるやかなほうです。この5区分は市町村単位で足したものなので、医療圏の区分(9圏)とは境界が一致しません。
承継 ── 1日で60件の廃止届が出た日暦年2025の廃止届124件のうち、60件は同じ1日です
暦年2025に茨城県で出された薬局の廃止届は124件。ただしこのうち86件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは38軒(薬局1,372軒の2.77%)でした。ここで数字の読み方に、ひとつ注意が要ります。廃止届124件のうち60件(48.4%)が2025年4月30日という同じ1日に集中しており、うち56件が移転・承継です。同じ日付の廃止届は関東信越の10都県で計164件出ています。1件1件の事業承継ではなく、複数県にまたがる法人の再編で機関コードが一斉に付け替わった、と読むのが自然です。この一斉分を除くと、廃止届は64件、引き継がれなかった割合は30.6%ではなく59.4%になります。消えた薬局の数(真の閉局38軒)はこの影響をほとんど受けません(一斉分60件のうち真の閉局は4件)。閉局の件数は、同じ名簿・同じ数え方の関東信越10都県の中でだけ比べられます。その10都県の中で茨城県の真の閉局率2.77%は1位ですが、4年ぶん(2022〜2025年)で見ると7.58%で4位に下がります。単年の順位を、その地域の性質として読まないでください。
機能の届出 ── 需要の順位とは、ほとんど関係しないかかりつけ届出率は県全体で63.8%
かかりつけ薬剤師指導料の届出率は茨城県全体で63.8%。県内では水戸の58.8%から筑西・下妻の69.8%まで開きます。在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率は県全体で45.6%、水戸の39.9%から取手・竜ヶ崎の52.9%まで。兵庫県では在宅の届出率の順位が需要の伸びの順位と8圏すべてで一致し、「需要が細る地域ほど届出が薄い」という並びでした。茨城県9圏での一致は1圏、順位相関は-0.217です。実際、かかりつけ届出率が県内最高なのは県都の水戸医療圏(58.8%)ではなく筑西・下妻医療圏(69.8%)で、水戸は県内最低です。「都市部ほど届出が厚い」も「過疎だから届出が薄い」も、茨城県では言えません。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。
ランキング ── 圏域差1軒あたり処方せんは、県内で1.28倍しか開かない
日立(-7.9%)からつくば(+30.3%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは鹿行の10,490枚から水戸の13,378枚まで1.28倍の開きで、県平均は12,736枚。埼玉県13,991枚・神奈川県15,458枚・東京都15,210枚より少なく、大阪府12,266枚と同じあたりです。茨城県は医師の数が人口あたりで全国2番目に少ない県ですが、薬局1軒あたりの処方せんは全国31位で、多いほうではありません。医師の少なさと、薬局の負荷は、別の問題として見る必要があります。1軒あたり処方せんと需要変化の順位相関は0.65。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は出していません(下の注記)。
くわしい数字9医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 水戸 | 243 | 13,378 → 14,402 | +7.7% |
| 取手・竜ヶ崎 | 208 | 13,309 → 13,861 | +4.1% |
| つくば | 190 | 13,248 → 17,261 | +30.3% |
| 常陸太田・ひたちなか | 159 | 13,270 → 13,766 | +3.7% |
| 土浦 | 118 | 12,769 → 13,300 | +4.2% |
| 日立 | 116 | 12,694 → 11,691 | -7.9% |
| 筑西・下妻 | 116 | 11,921 → 11,591 | -2.8% |
| 古河・坂東 | 112 | 11,707 → 11,861 | +1.3% |
| 鹿行 | 110 | 10,490 → 10,689 | +1.9% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は暦年2025の集計で、移転・承継を除いています。廃止届には2025年4月30日の一斉承継60件が含まれるため、承継の量を見るときは『一斉分を除いた』列も併せてご覧ください。圏どうしの閉局率は4年ぶんの列で見てください。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計は、茨城県では出せません
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿6府県だけを学習しており、茨城県は学習の対象外です。確定している需要側の数字(将来推計人口とNDB処方せん実績)と、現在の供給の事実(薬局数・届出・面積・閉局)だけでお伝えします。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 茨城県(このページ・Lv1)=9の二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市町村(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。供給の統計モデルが近畿6府県のみを学習しており、茨城県は学習の対象外だからです。近畿で学習した値を関東の県に流用することもしません。
- 【★2025年4月30日の一斉承継】暦年2025に茨城県で出された廃止届124件のうち60件(48.4%)は、廃止日が2025年4月30日の同じ1日に集中しており、うち56件は移転・承継です。同じ日付の廃止届は関東信越10都県で計164件(うち移転・承継143件)出ています。1件1件の事業承継ではなく、複数県にまたがる法人の再編で機関コードが一斉に付け替わったものと読むのが自然です。このため『引き継がれなかった割合』は、一斉分を含めると30.6%、除くと59.4%と大きく変わります。本文・表では両方を出しています。消えた薬局の数(真の閉局38軒)はこの影響をほとんど受けません(一斉分60件のうち真の閉局は4件)。一斉承継の日を含まない直近12ヶ月(直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月))では、廃止届69件・真の閉局29件・引き継がれなかった割合42.0%です。
- 【閉局の窓は3層】既定は暦年2025(2025年1月〜12月)(真の閉局38件)。暦年で公開している大阪府・千葉県・埼玉県・東京都と『同じ期間』です。1医療圏あたりの真の閉局は1〜11件しかないので、圏域どうしを見るときは4年窓(暦年2022〜2025(4年)・真の閉局104件・廃止届279件)を使ってください。直近12ヶ月(直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)・真の閉局29件)は、12ヶ月窓で公開している兵庫県・京都府・北海道・神奈川県・埼玉県と並べるための窓です。
- 【単年の圏域ランキングを性質として読まないこと】埼玉県版で分かったとおり、1医療圏あたりの廃止届が10件前後しかないため、単年の圏域順位は年ごとに入れ替わります。茨城県でいちばん動くのは古河・坂東医療圏で、真の閉局率は暦年2025では0.89%=県内8位ですが、4年ぶん(2022〜2025年)では12.5%=県内2位に跳ね上がります(暦年別の真の閉局は4件・2件・7件・1件)。単年と4年の圏域順位の順位相関は0.533。逆に日立医療圏は単年(5.17%)でも4年(13.79%)でも県内1位で、こちらは単年の揺らぎでは説明しにくい水準です。各圏の4年値は hazard_true_4y_pct、年別内訳は clo_by_year に入れてあります。
- 【閉局は同じ厚生局ブロックの中でだけ比べる】茨城県は関東信越厚生局の管内で、栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・山梨・長野と同じ名簿・同じ数え方です。この10都県の中では件数・率を並べられます(peer_block に機械可読で入れてあります)。東海北陸厚生局の県(静岡・愛知・岐阜・三重・富山・石川)は原本が画像PDFのOCR由来で件数が下限値なので、並べてはいけません。
- 【窓の中に廃止0件の月がある理由】既定の暦年2025のうち1ヶ月(2025-11)は茨城県の廃止届が0件です。これは収録の穴ではありません。その月を載せるはずの号がアーカイブにそろっており、同じ関東信越ブロックの他県の廃止届はその月付けで実際に載っているため、「その月に茨城県の廃止が無かった」=真のゼロと判定しています(岐阜県版・静岡県版と同じ方式。判定の内訳は clo_coverage に月ごとに入れてあります)。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間17,473,357枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。県境部(千葉・埼玉・栃木・福島)では患者が県をまたいで受診する量もありますが、その流出入は織り込んでいません。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(茨城県では260店を除外)。位置は届出上の市区町村コードで割り当てています(茨城県は対象1,372店すべてに市区町村コードがあります)。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づきます。茨城県は対象1,372店すべてに申告があり、分母は薬局数と一致します(欠測0)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【薬局が0軒・ごく少数の自治体】茨城県には薬局が1軒も無い自治体が1つあります(河内町)。薬局8軒未満は7市町村(県内44市町村の16%)で、そこに県内の65歳以上の4.4%が住んでいます。1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れます。表・地図では注記つきでお読みください。
- 【面積の指標について】area_km2 は国土数値情報の行政区域ポリゴンから球面積を積算したものです(穴は減算)。道路網・公共交通・地形は含みません。「薬局1軒あたり4.4km²」は幾何的な広さであって、住民が実際にどれだけ移動するかではありません。250mメッシュ人口による徒歩アクセス率(千葉県版の指標)は、mesh_backbone_250m に茨城県分が未投入のため出せていません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。茨城県は9の二次医療圏です。本文中の「県北・県央・鹿行・県南・県西」は、茨城県が総合計画で使う地域区分に市町村を割り付けた集計であり、医療圏の区分とは境界が一致しません(常陸太田・ひたちなか医療圏は県北と県央にまたがります)。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【医師密度について】茨城県の人口10万人あたり医療施設従事医師数は202.0人で全国で少ないほうから2番目(46位/47)ですが、この数字は都道府県単位でしか持っていないため、二次医療圏の比較には一切使っていません。薬局1軒あたり処方せんは全国31位で多いほうではなく、全国47都道府県での相関もr=-0.158と弱いので、「医師が少ないから薬局を増やすべき」といった含意は書きません。
- 【順位相関について】兵庫県では在宅届出率の順位が需要の順位と8圏すべてで一致(需要が細る圏ほど届出が薄い)でしたが、埼玉県10圏では1圏、茨城県9圏では1圏しか一致しません。兵庫の完全一致は圏数が少ないことによる偶然だった可能性が高く、法則として扱ってはいけません。相関であって因果でもありません。
- 【閉局の座標】茨城県の閉局348件はすべてに座標があり、住所からも全件で市町村が読み取れます。両者を突き合わせた不一致は1件で、これは座標が県庁付近に落ちているジオコード事故なので、住所側の市町村に読み替えています(clo_geofix)。
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