CrossHealth / 薬局持久度レポート
高齢者が増えるのは、6つの医療圏のうち松山だけです
愛媛県6つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町まで下りたレポートへ進めます。
この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。
愛媛県の調剤薬局は634軒。高齢化で処方せんの需要は増える——というのが、同じ手法で見てきた多くの県の姿でした。愛媛県は違います。6つの二次医療圏のうち、2045年に65歳以上人口が増えるのは松山医療圏(+8.0%)ひとつだけ。残る5圏は減り、南予の2圏は-24.6%(八幡浜・大洲)・-24.1%(宇和島)と4分の1が失われます。県全体でも65歳以上人口は-4.6%で、ピークは推計の起点である2025年——すでに減少局面です。そしてもうひとつ。愛媛県では処方せんの30.3%がまだ院内で出ています(院外処方せん率69.7%=全国で5番目に低い)。人口動態が20年かけて動かす量より、いま院内に残っている量のほうが大きい、というのが愛媛県の縮尺です。
20市町すべてに薬局があります(薬局0軒の自治体はありません)
2025→2045。ピークは2025年。6圏中5圏がピーク済み
全国80.7%。47都道府県で低いほうから5番目
廃止届25件のうち8件は移転・承継
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが八幡浜・大洲医療圏(-24.6%)、唯一のプラスが松山医療圏(+8.0%)。その幅は32.6ポイントです。
人口動態 ── 需要の源6つの医療圏のうち5つは、もう増えません
愛媛県全体では、総人口が127万→101万人(-20.4%)と減るのに加えて、65歳以上人口も44.3万→42.3万人(-4.6%)と減ります。高齢化率は35.0%→41.9%へ上がりますが、それは分母(総人口)が速く減るからで、高齢者の実数は2025年がピーク——推計の起点がそのままピークです。医療圏で見ると、65歳以上人口のピークをすでに通過しているのは5圏(宇摩/新居浜・西条/今治/八幡浜・大洲/宇和島)で、ここに薬局が323軒・県内の50.9%あります。市町まで下りると、20市町のうち65歳以上が増えるのは松山市(+12.3%)と東温市(+0.2%)の2つだけです。
医薬分業 ── 薬局に届いていない処方せん処方せんの30.3%は、まだ院内で出ています
愛媛県の院外処方せん率(医薬分業率)は69.7%。全国の80.7%を下回り、47都道府県では低いほうから5番目です(福井県/和歌山県/徳島県/群馬県/愛媛県の順)。院内で出ている処方せんは年間3,568,077枚。医療圏でも67.9%(八幡浜・大洲)から72.3%(新居浜・西条)までしか開かず、県内のどこも7割前後です。仮にこの分業率が全国平均(80.7%)まで上がったとすると、院外の枚数は年1,293,091枚——薬局1軒あたり+2,040枚増える計算になります。いっぽう高齢化が20年かけて動かす量は1軒あたり-595枚。いま院内に残っている量のほうが、20年ぶんの人口動態より3.4倍大きいことになります。これはそうなるという予測ではありません。分業率が動くかどうかは制度と地域の医療提供体制の問題で、本レポートはその是非を判断しません。桁を比べるための算術としてだけ読んでください。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局直近12ヶ月の廃止届25件のうち、そのまま消えたのは17件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に愛媛県で出された薬局の廃止届は25件。うち8件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは17件(薬局634軒に対して2.68%)です。号がそろっている15ヶ月(2025年2月〜2026年4月)まで広げると真の閉局24件で、年率にすると3.03%。どちらも同じ桁なので、12ヶ月の数字は単年のまぐれではありません。★この件数を6つの医療圏に割ることはできません。圏別では0〜10件で、廃止届が5件に満たない圏が4圏あり、1件で率が数ポイント動くからです。県全体の数字としてだけお読みください。★また、この閉局率を他県の値と並べることもできません。廃止名簿の捕捉率が地方厚生局ごとに構造的に違ううえ、愛媛県の場合は同じ中国四国ブロックの中でも収集経路が2つに割れており、徳島県・高知県にいたっては名簿PDFに廃止行が実在するのにデータベースには0件で入っています。同じ名簿から取り込んだ香川県との比較と、愛媛県内の医療圏どうしの比較だけが成り立ちます。
機能の届出 ── 松山と、それ以外1軒あたりは全国並み。届出は圏でそろっていない
愛媛県の薬局1軒あたりの処方せんは年12,964枚。47都道府県では少ないほうから21番目で、ちょうど真ん中あたりです。県内では11,216枚(八幡浜・大洲)から15,747枚まで1.4倍開きます。かかりつけ薬剤師の届出は67.5%、地域連携薬局は45.3%、在宅対応は47.3%。分母は634軒=全店で、欠測はありません。圏別ではかかりつけが51.3%(宇摩)から76.9%(新居浜・西条)まで開いており、需要が減る圏ほど届出が薄い、という単純な関係にはなっていません。
ランキング ── 圏域差松山と南予のあいだに、32.6ポイント
八幡浜・大洲(-24.6%)から松山(+8.0%)まで、その幅は32.6ポイント。2045年の高齢化率で見ると、松山医療圏の39.1%に対して宇和島医療圏は54.2%です。広さで見ると、薬局1軒あたりの面積は松山医療圏の5.0km²に対し、宇和島医療圏は25.0km²・八幡浜・大洲医療圏は20.5km²。1軒が受け持つ土地の広さが5.0倍違います。ただしこの面積には人の住んでいない山地も海も入るので、「住民から薬局までの距離」ではありません。
くわしい数字6医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2050(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 松山 | 311 | 13,013 → 14,059 | +8.0% |
| 新居浜・西条 | 91 | 14,031 → 13,503 | -3.8% |
| 今治 | 79 | 12,091 → 10,356 | -14.3% |
| 八幡浜・大洲 | 72 | 11,216 → 8,459 | -24.6% |
| 宇和島 | 42 | 15,747 → 11,945 | -24.1% |
| 宇摩 | 39 | 12,088 → 11,050 | -8.6% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いた「真の閉局」です。★圏別の閉局率・承継されなかった割合は件数が少なく(0〜10件)、圏どうしの多寡としては読めません。件数と一緒にご覧ください。★他県の閉局率と並べることもできません(名簿の捕捉率が違うため)。
いま出していない数字供給の将来推計は、再学習中です
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿6府県だけを対象に学習したもので、愛媛県はそもそも学習データに入っていません。再学習が済むまで出しません。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 松山 県内で唯一、高齢者が増える圏。ただし6市町のうち増えるのは2つだけです
- 八幡浜・大洲 県内でいちばん速く縮む圏。5市町すべてで65歳以上が減ります
- 宇和島 2045年の高齢化率54.2%は県内最高。薬局1軒あたりの面積も最大です
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(二次医療圏・市町)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや名指しの閉局予測は作りません。出店・撤退の判断もしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 薬局数は `pharmacies` の愛媛県・ds_only=0(ドラッグストア専業132店を除く)=634軒。2025年時点で固定しており、将来の開局・閉局による店数変化は含みません。
- 市町→二次医療圏の割当ては `medical_area_master`(国土数値情報A38由来・NDB335圏と一致)を唯一の正としています。`pharmacies.iryo_ken` との差分は0件、薬局634軒すべてに届出市町コードがあり、座標からの推定(PIP)に頼った割当ては0件です。
- 市町別の処方せんは実測ではありません。NDBの最小公表単位が二次医療圏のため、65歳以上人口で按分した推計です。
- 処方せんは院外だけの数字です。愛媛県は院外処方せん率69.7%で、院内の年間3,568,077枚は含まれていません。「1軒あたり12,964枚」は薬局に来ている分であって、地域の処方総量ではありません。
- 医薬分業の算術(分業率が全国平均まで上がった場合の増分)は予測ではありません。そうなるという主張でも、そうすべきという主張でもなく、桁を比べるための仮定です。
- 閉局は `pharmacy_closures` の `shinkocode=0`(新しい機関コードの記載が無いもの)=「真の閉局」です。移転・承継は別建て(clo_relo)で併記しています。
- 閉局の集計窓は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)。四国厚生支局の名簿PDFから号(処理年月)を復元し、この12ヶ月は必要な3号がすべてそろっている(最小カバー率1.0)ことを確認したうえで決めました。
- ★2024年以前の閉局件数は下限です。愛媛県分の号は2023-09/2023-10/2023-11/2023-12/2024-01ほか計14号が欠けており、廃止月2023-07〜2025-01は過少計上です。年次トレンド・多年の順位づけは書けません。
- ★閉局率を他県の値と並べてはいけません。廃止名簿の捕捉率が地方厚生局ごとに構造的に違います(富山版2.3b節)。愛媛県はさらに、同じ中国四国ブロックの中でも収集経路が2つに割れており、徳島県・高知県は名簿PDFに廃止行が実在するのにデータベースには0件で入っています。比較できるのは同一名簿の香川県と、愛媛県内の医療圏どうしだけです。
- ★閉局を医療圏別に語っていません。圏別の廃止届は0〜10件で、5件に満たない圏が4圏あります。圏別の率はJSONに保持していますが、圏どうしの順位づけには使えません。
- 小さい分母があります。薬局8軒未満の市町が7(上島町/久万高原町/砥部町/伊方町/内子町/鬼北町/松野町)。うち薬局1〜2軒の上島町/伊方町/松野町は、集計がそのまま個店の記述になるため、本文の主役にせず、Lv3(市町詳細)の対象からも外しています。
- 薬局が0軒の自治体はありません(20市町すべてに調剤薬局があります)。
- `chg` の意味が階層で違います。Lv1=絶対値(その圏の処方せんが実際に増えるか)、Lv2=圏内でのシェア移動(相対値)。愛媛県はLv1がマイナスの圏が多いので、この読み替えが特に重要です。
- `e65_peak_year` は5年刻みの推計上のピークです。「2025年ピーク」は起点年なので「すでに減少局面」、「2045年ピーク」は「推計期間内はまだ増えている」の意味です。
- 徒歩アクセス(徒歩10分カバー率)は出せません。`mesh_backbone_250m` に愛媛県分が0件のためです。代わりに面積(km²/軒)を載せていますが、これは無人の山地・海域も含む値で、「住民から薬局までの距離」ではありません。
- 供給動学(2045年の店数推計・将来ハザード・機構分類)は差し止めています。モデルが近畿6府県のみを学習対象にしており、愛媛県は入っていないためです。
- 上島町は全域が離島(弓削・生名・岩城・魚島)で、四国本土と橋でつながっていない愛媛県で唯一の自治体です。薬局1軒のため small_cell として扱っています。今治市・宇和島市・八幡浜市にも島しょ部がありますが、本レポートは市町単位までしか下りないので、島ごとの数字は出していません。
- みかん・造船・タオルといった愛媛県の産業構造、道後温泉などの観光、しまなみ海道の交通は `crosshealth.db` に収録がないため、本レポートでは一切扱っていません。語ったのは薬局数・閉局・人口推計・NDB処方せん(院内/院外)・面積の範囲だけです。
- 個店のランキング・名指しの閉局予測・出店戦略の助言は一切含みません。地域単位の事実のみです。
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