CrossHealth / 薬局持久度レポート
同じ県の中に、増える兵庫と、もう増えない兵庫がある
兵庫県8つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市区町村まで下りたレポートへ進めます。
この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。
兵庫県の調剤薬局は2,799軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、県全体では+8.5%増える見通しです。ただし医療圏に割ると-14.8%(但馬)から+17.4%(阪神)まで32.2ポイント開き、8医療圏のうち4圏は65歳以上の人口がすでにピークを過ぎています。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが但馬医療圏(-14.8%)、いちばん伸びるのが阪神医療圏(+17.4%)。医療圏をクリックすると、その中の市区町村差まで下りられます。
人口動態 ── 需要の源県全体では+8.5%。でも4つの医療圏では、もう増えない
兵庫県全体では、総人口は531万→456万人(-14.1%)と減る一方、65歳以上は162万→176万人(+8.5%)と増えます。高齢化率は30.6%→38.6%へ。ただしこの「増える」は県平均の話です。但馬・淡路・丹波・北播磨の4医療圏は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っており、ここには薬局が347軒(県内の12.4%)あります。人が減るから需要も減る、という段階に入っているのは、県土の広いほうの兵庫です。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届145件のうち、そのまま消えたのは46件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に兵庫県で出された薬局の廃止届は145件。ただしこのうち99件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは46軒(薬局2,799軒の1.64%)でした。注目したいのは圏域差です。引き継がれなかった割合は淡路医療圏の0.0%から北播磨医療圏の62.5%まで開きます。淡路では廃止届5件がすべて移転・承継で、島から薬局が消えた件数はゼロでした。いっぽう北播磨は廃止届8件のうち5件が引き継ぎ手のないまま消えています。廃止届の件数が少ない圏域が、必ずしも安心とは限りません。
医療圏別の内訳(廃止届の多い順)。赤=真の閉局、緑=移転・承継。数字は「真の閉局 / 廃止届計」。
機能の届出 ── 需要が減る地域ほど、薄い歩けない人が増える地域ほど、在宅の届出をしている薬局が少ない
在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率を医療圏ごとに並べると、但馬の41.0%から阪神の70.3%まで開きます。しかもこの順番は、処方せん需要の伸びで8医療圏を並べた順番と8圏すべてで一致しました。需要が減っていく地域ほど、届け出ている薬局の割合が低い、という並びです。かかりつけ薬剤師指導料の届出率も但馬の65.1%が県内最低で、最高の淡路(80.9%)と15.8ポイント違います。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。それでも、人手の余裕がある地域とそうでない地域の差がここに出ている可能性があります。
在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率(低い順=需要が縮む順と一致)。
ランキング ── 圏域差処方せんが増える医療圏・減る医療圏
但馬(-14.8%)から阪神(+17.4%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは但馬の11,300枚から東播磨の15,543枚まで1.38倍の開きで、「いま薄い地域が、これからさらに薄くなる」とは限らない点に注意してください。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計(2045年の店数)はいまも掲載していません(下の注記)。
| 地域(医療圏) | いまの 薬局数 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 但馬 | 84 | 11,300 → 9,628 | -14.8% |
| 淡路 | 70 | 13,022 → 11,393 | -12.5% |
| 丹波 | 52 | 12,862 → 11,649 | -9.4% |
| 北播磨 | 141 | 12,453 → 11,839 | -4.9% |
| 播磨姫路 → | 433 | 12,209 → 12,718 | +4.2% |
| 東播磨 | 340 | 15,543 → 16,711 | +7.5% |
| 神戸 | 810 | 14,100 → 15,577 | +10.5% |
| 阪神 | 869 | 13,657 → 16,035 | +17.4% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。個店のランキングは作りません。
医療圏の型 ── 競争で減るのか、需要で減るのか都市型3圏・郊外型5圏に分かれます
薬局が閉じていく筋道には、大きく2つあります。ひとつは近くに薬局が多く、競争のなかで数が絞られていく道(都市型)。もうひとつは周りに薬局が少ないまま、患者そのものが減っていく道(郊外型)。兵庫県の8の二次医療圏を分けると、都市型が3圏・郊外型が5圏です。競争側の比率は圏によって0.00〜0.82まで開きます(0.5以上なら都市型)。同じ県のなかでも、減り方の筋道は一様ではありません。このうち5圏は、社人研の推計で20年に15%を超えて人口が減る側に入ります。県全体の総人口は2025→2045で-14.1%です。全国47都道府県・335の二次医療圏・65,634行(うち移転や承継を除いた本当の閉局3,952件)を学習した統計モデルによる分類です。特定の地方だけで学んだモデルを他の県に当てはめたものではありません。共通の係数は47都道府県すべての実データから学習しており、この地域の値は、この地域に実際にある薬局の実測値から計算しています。この分類は「どの筋道で薬局が減りやすい地域か」を示すもので、個々の薬局の見通しではありませんし、出店や撤退の判断もしません。
機能の届出 ── 厚生局の名簿で数える地域支援・医薬品供給対応体制加算の届出は91.9%です
薬局の機能は、これまで薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告で数えていましたが、ここからは地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で数え直しています。兵庫県でこの名簿に載っている保険薬局は2,760軒で、そのうち届出があるのは──地域支援・医薬品供給対応体制加算 2,537軒=91.9%、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)(推定) 1,773軒=64.2%、在宅薬学総合体制加算 1,376軒=49.9%、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定) 2,373軒=86.0%です。名簿の版は令和8年7月1日版(東北厚生局=青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県のみ令和8年6月1日版。7月分が未公開のため入手可能な最新を使用)。8つの厚生局・47都道府県をすべて同じ月の版でそろえてあるので、県どうしを並べて比べられます(GMISの自己申告は県によって取り込みの穴があり、これができませんでした)。推定を含む項目があります。「かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)」は令和8年度改定でかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は服薬管理指導料に統合され、単独の届出名称が無くなりました。新様式の名簿にある「服薬管理指導料の注1」を代理指標として数えた推定値です(告示・通知文の逐語確認はしていません)。「電子的調剤情報連携体制整備加算」は令和8年度改定で「医療DX推進体制整備加算」の後継と判断して数えた推定値です(同一制度の後継という対応関係は未確認)。このページがこれまで載せていた届出率は、改定前の版の名簿を店名で突き合わせて数えたものでした。並べると、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は今回64.2%/これまで75.3%(差-11.1ポイント)、地域支援・医薬品供給対応体制加算は今回91.9%/これまで54.5%(差+37.4ポイント)、在宅薬学総合体制加算は今回49.9%/これまで62.8%(差-12.9ポイント)です。差の主な理由は3つで、(1)令和8年度改定で後発医薬品調剤体制加算が地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合されたこと(地域支援の届出率が跳ね上がる)、(2)かかりつけ薬剤師指導料が服薬管理指導料に統合され、代理指標に切り替えたこと、(3)これまでが店名の突き合わせ、今回が医療機関コードでの集計であること。どちらかが誤りという意味ではありません。これから先は、47都道府県を同じ月の版でそろえた今回の数え方を主に使います。同月版でそろえた全国比較では、地域支援・医薬品供給対応体制加算は91.9%で全国47都道府県中26位、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は64.2%で全国47都道府県中11位、在宅薬学総合体制加算は49.9%で全国47都道府県中2位、電子的調剤情報連携体制整備加算は86.0%で全国47都道府県中16位です。順位は名簿の数え方がそろっている範囲での並びで、地域の医療の良し悪しを表すものではありません。分母は名簿に載っている薬局の数で、このページの他の場所に出てくるGMIS由来の薬局数とは出典が違うため一致しません。また届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、実際に提供された量ではありません。
いま出していない数字いま出していないのは、2045年の薬局店数の推計だけです
このページでは、次の数字をまだ出していません。(1)2045年の薬局店数 2045年に薬局が何軒になるかという推計です。供給動学モデルは47都道府県のフル学習に更新され、「どの筋道で閉じるか」の係数は検算に通りました。しかし店数の水準を出すには、閉じる側と開く側の数え方がそろっている必要があります。実際に20年ぶん回すと全国で+25.4%(薬局が2割以上増える)、薬局の少ない医療圏では最大+913%という結果になりました。原因は2つで、ひとつは新規指定の名簿がほぼ完全に取れるのに対して廃止届のほうに取りこぼしが残ること(モデルの純増+1074軒/年に対し名簿の実測は+387軒/年)、もうひとつは薬局の少ない医療圏で開局数が全国平均側に引っ張られること(20軒未満の圏では推定2.5軒/年に対し実測0.33軒/年)です。 解禁の条件は、廃止届の取りこぼしをなくすこと(東海北陸のOCR再収穫・名簿の多年化)と、小さい医療圏で開局数が平均へ引っ張られないようにモデルを直すことです。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選んでいます。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 兵庫県(このページ・Lv1)=8つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市区町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市区町村(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計は、いまも出していません(参入と退出の数え方がそろわず、そのまま回すと全国で薬局が2割以上増える計算になってしまうため)。医療圏の「都市型/郊外型」分類は、供給の統計モデルが47都道府県フル学習になったので掲載に切り替えました。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間38,145,392枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
- 【この数値の改訂について(2026-07-31)】閉局を市区町村・医療圏に割り当てる基準を、座標(ジオコード)から届出上の所在地(住所)に統一しました。厚生局の名簿から起こした座標には、住所を解決できなかったときに都道府県庁などの代表点へ落ちるものが混ざっており、実際には別の市区町村で出された廃止届が県庁所在地に集まって見える誤りがあったためです。薬局の数え方(届出上の city_code)と同じ基準に揃えたことになります。県計は変わりません。医療圏ごとの新旧の対応は全件記録しています(karte_analysis/_closure_audit/fix_plan.json)。
- 【閉局の数え方と集計期間】近畿厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。兵庫県の名簿は2025年7月号からの収録のため、暦年ではなく完全な12ヶ月がそろう2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)を集計期間としました。この期間の廃止届は145件で、うち99件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは46件です。大阪府(暦年2025・78件)や千葉県(暦年2025・42件)と件数を直接並べるときは、集計期間が違う点にご注意ください。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(県内279店を除外)。位置は国土数値情報の市区町村境界への点内判定、または届出上の市区町村コードで割り当てています。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づき、申告データのある2,511店を分母にしています(県内全2,799店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。兵庫県は第8次医療計画で阪神南・阪神北が「阪神」に、中播磨・西播磨が「播磨姫路」に再編され、8圏になりました。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【在宅届出率と需要の順位一致について】8医療圏という少ない数のため、順位が完全に一致すること自体は偶然でも起こりうる相関です。因果関係を示すものではなく、「だから在宅対応を増やすべき」という主張はしません。
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