CrossHealth / 薬局持久度レポート

高齢化しても、処方せんは増えない。増えるのは9つのうち1つだけ

岩手県9つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要・広さで見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町村まで下りたレポートへ進めます。

データ基準:2025年医療圏:9市町村:33

この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。

岩手県の調剤薬局は625軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、県全体で-7.7%——増えるどころか減ります。高齢化率は35.8%から44.1%へ上がりますが、それは分母(総人口 113.8万→85.3万人・-25.0%)が減るからで、分子である65歳以上人口そのものが407,859人から376,322人へ減っていくためです。しかもこの県平均すら、9つの医療圏のうち8圏がマイナスで、プラスは盛岡医療圏(+4.2%)ひとつだけです。

625
薬局
ドラッグストア専業101軒を除く
-7.7%
2045年の処方せん需要
9医療圏のうち8圏がマイナス
24.4km²
薬局1軒あたりの面積
圏では13.9〜83.3km²(6.0倍)
-7.7%
65歳以上人口
2025→2045・県全体で減る

地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来

色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが釜石(-24.7%)、唯一プラスなのが盛岡(+4.2%)。その差は28.9ポイントです。

両磐:薬局55軒/1軒あたり処方せん(→2050) -17.0%両磐久慈:薬局18軒/1軒あたり処方せん(→2050) -15.4%久慈二戸:薬局29軒/1軒あたり処方せん(→2050) -22.7%二戸宮古:薬局32軒/1軒あたり処方せん(→2050) -24.5%宮古岩手中部:薬局121軒/1軒あたり処方せん(→2050) -3.6%岩手中部気仙:薬局26軒/1軒あたり処方せん(→2050) -18.8%気仙盛岡:薬局262軒/1軒あたり処方せん(→2050) +4.2%(クリックで詳細)盛岡胆江:薬局61軒/1軒あたり処方せん(→2050) -11.0%胆江釜石:薬局21軒/1軒あたり処方せん(→2050) -24.7%釜石
色=薬局1軒あたり処方せんの変化(→2045)
減る増える
医療圏そのものの形で塗り分けています。
Requestまだ公開されていない地域も、リクエストできます公開されたら、メールでお知らせします(無料)。 今すぐ必要な方は会員の優先生成へ。
Lv1のこの色は絶対値(その医療圏の処方せんが実際に増えるか)です。医療圏ページ(Lv2)の色は圏内でのシェア移動を示す相対値で、意味が違います。

広さ ── 岩手でいちばん効く軸薬局1軒が受け持つ面積は、圏によって6.0倍、市町村では235.4倍違います

岩手県の面積は15,259 km²で、薬局1軒あたり24.4 km²。医療圏で見ると盛岡13.9 km²から宮古83.3 km²まで6.0倍、市町村では矢巾町4.2 km²から岩泉町988.5 km²まで235.4倍開きます。いちばん薄いのは岩泉町で、面積988.5 km²は県庁所在地の盛岡市(885.6 km²)より広く、県内で最も狭い平泉町(63.8 km²)の15.5倍にあたります。そこにある薬局は1軒です。この数字は徒歩10分カバー率の代わりではありません。道路も公共交通も冬の通行止めもリアス地形も入っていない、幾何だけの指標です。

人口動態 ── 需要の源9つの医療圏のうち8つは、65歳以上がもう減りはじめています

岩手県全体では、総人口は113.8万→85.3万人(-25.0%)と減り、65歳以上も407,859→376,322人(-7.7%)と減ります。高齢化率は35.8%→44.1%に上がりますが、それは分母が速く減るからです。65歳以上人口のピークがすでに2025年という医療圏が9つのうち8あり、そこに薬局が363軒=県内の58.1%あります。2050年になっても増え続ける医療圏はひとつもありません。市町村で見ると、33のうち65歳以上が増えるのは6だけ(盛岡市/北上市/滝沢市/紫波町/矢巾町/金ケ崎町)です。

総人口65歳以上
0万30万60万90万120万20252030203520402045205078万36万
実データ(社人研 将来推計人口・2023年推計)。総人口も65歳以上も右肩下がり。

承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届16件のうち、そのまま消えたのは8件でした(7ヶ月ぶん)

まず期間の話からです。岩手県の廃止名簿は、厚生局が公開している一覧表のうち2025年10月〜2026年4月の7ヶ月ぶんが完全にそろいます。ここに行き着くまでにひと手間かかりました。処理月2025年11月・2026年5月・2026年6月ぶんの一覧表は、PDFはあるのに文字データが入っていない画像で、機械では1行も読めません。この状態はデータ上「その月は廃止が0件だった」と見分けがつきません。そこで3本を目視で読み取りました。2025年11月ぶんにはそもそも薬局の一覧表が無く(医科3件・歯科1件のみ)、これは本当に0件でした。2026年5月ぶんに3件、6月ぶんに4件の薬局が載っていました。残る欠けは処理月2025年9月ぶん(手元に無い)の1つだけです。この7ヶ月で廃止届は16件、うち移転・承継が8件、そのまま消えた「真の閉局」が8件でした(うち1件は目視で復元したぶん)。年率に直すと2.19%ですが、分子が8件しかありません。1件動くだけで年率が0.27ポイント動き、95%信頼区間は0.9〜4.3%まで広がります。この数字で他県と順位をつけることはできません。14ヶ月まで広げた参考値(真の閉局15件・年率2.06%)もありますが、こちらは号のそろわない月を含むぶん下限値で、既定の7ヶ月窓と一致しません。その食い違いそのものが、名簿に穴があることの証拠です。

機能の届出 ── いま出せない数字かかりつけ・地域連携・在宅の届出率は、岩手県では出していません

既刊の県では「かかりつけ薬剤師指導料の届出率」「地域連携薬局」「在宅患者訪問薬剤管理指導」の3つを載せてきましたが、岩手県では出しません。もとになる薬局機能情報提供制度(GMIS)のデータが、岩手県では625軒中25軒(4.0%)にしか入っていないためです。これは「岩手の薬局が届出をしていない」のではなく、データの取り込みが済んでいない可能性が高い状態です。ここで率を計算して載せると、存在しない事実を公開することになります。そのため県・医療圏・市町村のすべてで空欄にしました。0%ではありません。宮城県・山形県・秋田県も同じ状態です。

ランキング ── 全国の中の岩手医師は全国43位に少ないのに、処方せんは薬局に来ています

薬局1軒あたりの年間処方せんは県全体で13,265枚。全国17位/47で、真ん中よりやや厚い側です。ただしその出どころは岡山県などとまるで違います。人口10万人あたりの医療施設従事医師は218.5人で全国43位=全国で5番目に少ないのに、住民1人あたりの院外処方せんは7.3枚で全国12位(多い順)。理由は院外処方率の高さで、県全体84.5%は全国11位です。医師の少ない県でありながら、出た処方せんはほぼ薬局に来ている、という姿になります。そして人口10万人あたりの薬局数は54.9軒で全国17位(多い側)ですが、65歳以上1万人あたりでは15.3軒=全国35位(少ない側)。高齢化率が全国7位に高いぶん、実際に薬を使う人に対する薬局の数は薄いのです。

釜石
-24.7%
宮古
-24.5%
二戸
-22.7%
気仙
-18.8%
両磐
-17.0%
久慈
-15.4%
胆江
-11.0%
岩手中部
-3.6%
盛岡
+4.2%

くわしい数字9医療圏データ一覧

地域(医療圏)薬局1軒あたり処方せん
2025 → 2050(枚/年)
変化
盛岡26212,878 13,421+4.2%
岩手中部12113,149 12,680-3.6%
胆江6113,391 11,917-11.0%
両磐5514,852 12,326-17.0%
宮古3212,301 9,282-24.5%
二戸2912,754 9,862-22.7%
気仙2614,952 12,148-18.8%
釜石2113,975 10,525-24.7%
久慈1813,679 11,577-15.4%

※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は2025年10月〜2026年4月の7ヶ月ぶんで、1年ぶんではありません。**圏別の閉局率は算出していません**(9圏のうち8圏が廃止届5件未満、残る1圏も廃止届8件で、率にすると1件で大きく動くため)。かかりつけ・地域連携・在宅の届出率は、GMISの取り込みが済んでいないため空欄です(0%ではありません)。

沿岸 ── 事実だけを置きます沿岸4医療圏に薬局97軒。因果は書きません

久慈/宮古/釜石/気仙の4医療圏には薬局が97軒(県内の15.5%)あり、4圏とも65歳以上人口のピークは2025年=すでに減少局面です。薬局1軒あたりの面積は宮古83.3 km²・久慈59.9 km²と県内でも広い側にあります。本レポートは、これらと東日本大震災との因果を一切主張しません。使っているデータは震災から12〜14年後のもの(将来推計人口は2023年推計、処方せんは2023年、廃止名簿は2025〜2026年)で、震災の前後を比べる設計になっていないためです。廃止届が0件だったことを「震災後も薬局が減らなかった」と読むこともできません。

いま出していない数字供給の将来推計と、機能の届出率

このページでは2つのものを外しています。ひとつは2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類です。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿地方で学習したもので、岩手県を対象に含みません。人口密度も距離も気候も違う土地に、近畿の係数を当てはめることはしません。もうひとつは、かかりつけ・地域連携・在宅の届出率です(上の節のとおり)。どちらも、正しく作り直せたときに載せます。

この地図の使い方(3段階のドリルダウン)

  • 盛岡医療圏(Lv2)
  • 岩手中部医療圏(次点)
  • 盛岡市(Lv3候補)

このレポートの範囲と、正直な限界

  • 閉局の既定窓は2025年10月〜2026年4月の**7ヶ月**で、1年ぶんではありません。既刊(12ヶ月窓・暦年2025・岡山の8ヶ月窓)と率をそのまま並べてはいけません。並べるときは年率換算(2.19%)を使い、換算値であることを明示してください。
  • ★処理月2025年11月・2026年5月・2026年6月ぶんの一覧表は、**PDFはあってもテキスト層の無い画像**で機械では1行も読めませんでした。この状態は「その月0件」と見分けがつきません。**3本を目視で読み取って復元しています**(2025年11月は薬局の一覧表そのものが無く本当に0件、2026年5月は3件、6月は4件)。**店名・開設者名・法人名は一切記録せず、DBにも書き戻していません。**
  • ★既定窓の真の閉局8件のうち3件、移転・承継8件のうち4件は目視復元ぶんです。復元を含まないDBだけの値(真の閉局7件)は**下限値**です。
  • ★県レベルでも分子が1桁です(真の閉局8件)。95%信頼区間は年率0.9〜4.3%で、東北6県すべての区間と重なります。**閉局率で県を順位づけしてはいけません。**
  • ★**医療圏別の閉局率は算出していません。** 9圏のうち8圏が廃止届5件未満(`small_n_clo_areas`)で、残る1圏も廃止届8件だからです。圏別に出しているのは件数だけで、圏どうしの比較には使えません。
  • ★**県間比較の窓は既定窓とは別です。** 東北6県で並べるときは、6県すべてが**機械可読だけで**号がそろう2025年12月〜2026年2月の3ヶ月を使います(他5県は目視復元をしていないので、岩手だけ復元を混ぜると条件がそろいません)。
  • 多年・暦年推移・前年比は作れません。名簿が処理月2025-07〜2026-06の12ヶ月ぶんしか無いためです。「増えている/減っている」という時間方向の書き方はしません。
  • 参考窓(14ヶ月・年率2.06%)は**下限値**で、既定窓(年率2.19%)と一致しません。この食い違いそのものが、名簿に穴があることの実証です。順位の根拠には使えません。
  • 閉局率の県間比較は東北6県の中だけで行っています。厚生局ごとに名簿の捕捉率が構造的に違うためです。ただし上記のとおり順位づけには使えません。
  • ★**かかりつけ・地域連携・在宅の届出率は出していません。0%ではありません。** GMIS機能情報が岩手県では625軒中25軒(4.0%)にしか入っておらず(`func_gap_status='near_empty'`)、率を出すと取り込み漏れを『届出をしていない』という実在しない事実にしてしまうためです。宮城・山形・秋田も同じ状態です。
  • ★**兵庫県で見えた『在宅届出率の順位=需要の順位』は、岩手県では検証していません**(届出率そのものを出していないため)。この仮説を岩手県で肯定も否定もしていません。
  • 薬局1軒あたりの面積(24.4 km²)は**徒歩カバー率の代用ではありません**。道路網・公共交通・冬期の通行止め・三陸沿岸のリアス地形をまったく含まない幾何の指標です。本レポート(Lv1/Lv2)では徒歩アクセスを算出していません。
  • 市町村別の処方せんは実測ではありません。NDBの最小公表単位が二次医療圏のため、高齢人口で按分した推計です。薬局の少ない町村では極端に跳ねます。
  • NDBは院外処方せんだけを数えています。岩手県の院外処方率は84.5%%で全国11位(高い順)、宮古医療圏は65.6%%=全国335圏で低いほうから28番目です。「1軒あたりが厚い/薄い」を県間で比べるときは、必ずこの差を添えてください。
  • 「1軒あたり処方せんが全国17位」を「岩手は1軒が繁盛している」と読み替えないでください。65歳以上1万人あたりの薬局数は全国35位(少ない側)です。
  • 薬局数は2025年で固定しています。供給動学モデル(近畿で学習)は岩手県を対象に含まないため差し止めています。**近畿で学習した値の流用は禁止です。**
  • 小さい分母が圏レベルにもあります。久慈18軒・釜石21軒・気仙26軒・二戸29軒は `small_n_area`(30軒未満)です。率の順位づけに使わないでください。
  • ★構成市町村が2つしかない医療圏が3つ(両磐/胆江/釜石)あり、この3圏は**Lv2(圏内比較)が定義上作れません**。既刊で最も多い部類です。
  • 薬局0軒の自治体は岩手県にはありません(33市町村すべてに1軒以上)。ただし薬局1軒の自治体が5つ(葛巻町/平泉町/住田町/岩泉町/田野畑村)と2軒の自治体が4つあり、この9自治体はLv3の対象から外しています(沖縄版の倫理線)。
  • ★**東日本大震災との因果は一切主張していません。** データは震災から12〜14年後のもので、震災前後を比べる設計になっていません。廃止届が0件だったことを「震災後も薬局が減らなかった」とは読めません。
  • 法人一斉付け替えの検出器は、東北ブロックでは**機能しません**。ブロックの移転・承継が96件しかなく、既定閾値20はその20.8%にあたるためです。屋号を見ない『新機関コードの連番ブロック』検出器(秋田係が新設)も移植しましたが、岩手県の該当は0件で、公開値に影響はありません。
  • 個店のランキング・名指しの閉局予測・出店戦略の助言は一切含んでいません。地域単位の事実のみです。

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