CrossHealth / 薬局アクセスレポート
歩いて行ける薬局が1軒しかない人は、県内に16万人。
その“1軒”にあたる薬局は、300軒※。
なぜ数えるのか
「ここがなくなると遠くなっちゃって困るのよ」——閉局が心配されている薬局で、患者さんから聞いた声です。米国では、薬局が閉まったあと、残された人の服薬が続かなくなることが報告されています(処方薬を切らさず手元に持っていた日数の割合が、閉局のなかった人と比べて閉局後3か月で約6ポイント低くなり、その差が12か月続いた)。私たちが確かめた範囲では、日本で薬局が閉まったときに、服薬がどれくらい続かなくなるかは、まだ調べられていません。車を使えない人にとって、歩いて行ける1軒は、便利さではなく薬を受け取り続けるための足場です。制度の上でも、健康の相談や自宅への訪問を担う薬局が位置づけられています(健康サポート薬局・地域連携薬局/医薬品医療機器等法 第6条の2第1項第4号・同施行規則 第1条の2第2項第5号)。どこにその1軒があるかを知っておけば、閉まる前に、別の届け方を用意できます。
文・木内翔太
いま(2025年)── 歩いて届くか徒歩10分で届かない人は54.2%。医療圏では36.3%から79.7%まで開く
県全体は全国で最も大きい。開きの両端は盛岡と久慈である。
10%以下10〜20%20〜40%40〜60%60%超
色=徒歩10分では届かない人の割合。医療圏をクリックすると、その圏のページへ進む。
番号=地図の医療圏・%=徒歩10分では届かない人
いま(2025年)── 歩いて行ける唯一の薬局誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局は、300軒(15市区町村を除く)。釜石では71.4%にあたる
徒歩10分以内に薬局が1軒しかない人は16万人(住民の14.0%・全国13.8%)。その唯一の薬局は県内の薬局の50.6%にあたる(15市区町村を除く。全国は35.2%)。
この数は、徒歩10分という1つの物差しで見た場合です。どの薬局も、在宅の訪問・健康の相談・夜間や休日の対応などで、地域を支えています。
その圏の薬局のうち、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局の割合(色は地図と同じ)。軒数は補足の表に。※印の圏は、町ごとの値を出していない市区町村(薬局が少ないなど、数字が1つの店を指してしまう町)を除いた合計で、割合の分母(その圏の薬局の数)からも除いています:盛岡(雫石町・葛巻町・岩手町)・岩手中部(西和賀町)・胆江(金ケ崎町)・二戸(軽米町・九戸村)・気仙(住田町)・宮古(山田町・岩泉町・田野畑村)・両磐(平泉町)・久慈(普代村・野田村・洋野町)。
2040年 ── 処方せん2040年の処方せんは、分業率が上がると置いても減る
県内の院外処方せんは2025年の818万枚から2040年に712万枚へ、13.0%減る(9圏すべてで減る)。院外処方率(岩手84.5%・全国80.7%)が中央値81.2%まで上がる圏があると置いても、11.6%減る(9圏のうち3圏が対象)。
では、どうすればよいか薬局が10軒以上ある15市区町村すべてで、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局が3割を超える
3割を超えるのは一部の市区町村ではなく、すべてです。3割で市区町村を選び分けることはできません。県内で徒歩10分では薬局に届かない62万人(54.2%)と、徒歩10分以内に薬局が1軒しかない16万人が、計画の中で数える対象になりえます。その人たちに、備える手立て(承継の相談先・自宅への訪問・オンライン服薬指導と配送)が使える状態にあるかを、確かめておくことができます。
3割を超える市区町村:紫波町 90.9%・滝沢市 88.2%・八幡平市 78.6%・二戸市 70.6%・久慈市 66.7%・釜石市 60.0%・遠野市 60.0%・矢巾町 58.8%・一関市 57.4%・大船渡市 52.6%・宮古市 52.0%・北上市 49.0%・奥州市 46.6%・花巻市 43.9%・盛岡市 37.6%
薬局が9軒以下の18市区町村は、1軒の増減で割合が大きく動くため、3割の数え方には入れていません。
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補足数字の中身と数え方
9つの医療圏の数字(表)
| 医療圏 | 薬局数 | 徒歩10分では 届かない人 | 歩いて行ける 唯一の薬局 | 処方せん 2025→2040 (分業率そのまま) | 同 (分業率の仮定) | 院外 処方率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 盛岡 → | 266 | 36.3% | 120軒(46.9%) (3町を除く) | −7.1% | −7.1%※ | 85.7% |
| 岩手中部 → | 121 | 57.7% | 56軒(47.5%) (1町を除く) | −11.5% | −11.5%※ | 90.2% |
| 釜石 → | 21 | 61.4% | 15軒(71.4%) | −24.4% | −24.4%※ | 93.6% |
| 胆江 → | 60 | 61.9% | 27軒(46.6%) (1町を除く) | −15.1% | −10.5% | 77.0% |
| 二戸 → | 29 | 70.3% | 15軒(68.2%) (2市区町村を除く) | −22.5% | −22.5%※ | 90.9% |
| 気仙 → | 28 | 71.4% | 15軒(55.6%) (1町を除く) | −21.0% | −21.0%※ | 94.0% |
| 宮古 → | 31 | 71.5% | 13軒(52.0%) (3市区町村を除く) | −24.0% | −6.0% | 65.6% |
| 両磐 → | 55 | 72.3% | 31軒(57.4%) (1町を除く) | −19.1% | −19.1%※ | 81.3% |
| 久慈 → | 18 | 79.7% | 8軒(66.7%) (3市区町村を除く) | −19.7% | −16.5% | 78.1% |
徒歩10分では届かない人の割合が小さい順。「誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局」の割合は、その圏の薬局数に対する割合。処方せんの2列は2040年の推計で、いま(2025年)の数字とは時点が違います。※は院外処方率がすでに全国の中央値(81.2%)以上で、分業率の仮定を当てていない圏です(左の列と同じ値)。
閉局 ── 廃止届と、本当に閉まった薬局
2025年8月から2026年4月までの9か月に、県内で出された薬局の廃止届は25件でした(集計期間が9か月(12か月に満たない))。そのうち13件は承継か移転で、営業は続いています。本当に閉まったのは12軒(県内の薬局の1.91%)です。
期間は、厚生局の名簿がそろっている直近の月から自動で選んでいます。9か月ぶんの件数で、1年ぶんではありません。
岩手県保健医療計画のなかの薬剤師
岩手県保健医療計画(第8次・令和6〜11年度)の本文から、薬剤師・薬局に関する記述を抜き出しました。計画は、薬剤師偏在指標・薬剤師少数区域・薬局の偏在・薬剤師確保策・二次医療圏ごとの薬剤師について書いています。
○ これまで薬剤師数の比較に用いられてきた人口10万人対薬剤師数に代えて、全国的に統一的な尺度を用いて 各地域の薬剤師の偏在状況を相対的に示す指標である「薬剤師偏在指標」により、病院薬剤師と薬局薬剤師のそ れぞれの薬剤師少数区域・薬剤師多数区域を定め、圏域毎に確保すべき薬剤師数の目標と施策を定めるも…
○ 厚生労働省が算定・公表した薬剤師偏在指標85では、本県は「病院薬剤師」が 0.64 で全国順位 43 位、「薬局薬剤師」が0.97で全国順位23位となっています。
引用は計画本文からそのまま抜き出したものです(要約・言い換えはしていません)。計画の改定により記述は変わります。
機能の届出(厚生局の名簿)
地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」(令和8年7月1日版)に載っている県内の保険薬局は627軒です。届出の割合は、地域支援・医薬品供給対応体制加算 93.6%(全国90.8%)、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1・推定)49.1%(全国59.4%)、在宅薬学総合体制加算 28.1%(全国40.9%)、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定)86.9%(全国84.2%)です。県の順位は付けていません(名簿の版や旧い届出名の扱いで入れ替わるため)。「推定」の2項目は、令和8年度改定で届出の名称が変わったため、後継と判断した区分で数えています。届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、提供した量ではありません。分母が名簿の薬局数なので、このページの他の薬局数(629軒)とは一致しません。
2045年の薬局の店数を出していない理由
将来の薬局の店数は、閉じる側(廃止届)と開く側(新規指定)の数え方がそろわないため、推計を出していません。そのまま計算すると全国で薬局が2割以上増える結果になり、実態と合わないからです。
限界と数え方・地図の使い方
- 出所:厚生局・GMIS・NDBオープンデータ・社人研の将来推計人口など。検算と不確実性は方法論のページに。
- 言えること:地域単位(県・二次医療圏)で、住民が歩いて薬局に行けるか。
- 言えないこと:個々の薬局の見通し・個店の順位・出店や撤退の判断は扱いません。
- 徒歩分:250mメッシュ(2025年推計人口)ごとに道路網(OSRM)で計算。県外の薬局も歩いて届けば数えます。
- 歩いて行ける薬局が1軒しかない人:徒歩10分以内にある薬局がちょうど1軒の人。その1軒が閉まると、歩いて10分では届かなくなる。
- 薬局の数:厚生局 保険薬局名簿(2026年7月1日現在・近畿厚生局の管内=福井・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の7府県は6月1日現在)。調剤を行う薬局のみ。
- 人口は2020年国勢調査をもとにした推計(社人研2023年推計)で、2021年以降の人口の動きは反映していません。薬局は2026年7月の名簿です。
- なぜ10分か:国の都市評価は徒歩圏を半径800mとしています。これを不動産広告の換算(道路距離80mで1分)に当てると10分。CrossHealthはこの10分を目安に用いています(国土交通省「都市構造の評価に関するハンドブック(改定版)」令和8年1月 p.16・p.21/不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第15条第9号)。道路網の徒歩10分は、直線でおよそ600m相当で、800mより狭い範囲です(大阪・茨城・鳥取の72,834メッシュで一致率95.4%)。
- なぜ数えるのか(出典):Qato DM, et al. JAMA Netw Open. 2019;2(4):e192606(米国の閉局と服薬の継続)/医薬品医療機器等法 第6条の2第1項第4号・同施行規則 第1条の2第2項第5号(薬局の役割)。
- 地区の物差し:医師には、国が地区ごとに数える「無医地区」があります。薬局について国が公表しているのは、私たちが確かめた範囲で、町村に1軒も無いかどうか(無薬局町村)までです。
- 誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局:徒歩10分以内に薬局が1軒しかない人がいて、その人にとってのその1軒。所在地で県内にあるものを数えます。
- ※県の「誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局」の数と割合は、数字が特定の店を指すことになる市区町村を除いて数えています(全国の値は除いていません)。
- 処方せん:NDBの医療圏別実績に、年齢ごとの受療率を固定して将来人口を当てた推計。分業率の仮定:院外処方率(処方箋料の算定回数を、処方料と処方箋料の合計で割った値・NDBオープンデータ)が全国の医療圏の中央値(81.2%)より低い圏は、2040年までにその値まで上がるとしました。
- 閉局の数え方:閉局の数を出すのは、厚生局の廃止名簿の号から6か月以上の期間が決まり、その期間の廃止届を集計に使う版で数え直せる(再現率0.85以上)38都道府県です。全国では、2025年4月から2026年6月に出された薬局の廃止届4,175件のうち62.3%が承継か移転でした(47都道府県)。届が集まっている範囲で計算しています。始まりの月は名簿の最初の号の月で、件数はわずかに少なく出うる(下限)。
- 医療圏は国土数値情報A38由来のマスタ(第8次医療計画準拠)。
- 人の割合(歩いて行ける薬局が1軒しかない人・徒歩10分では届かない人)は住民(2025年推計人口)に対する割合、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局の割合は県内の薬局に対する割合です。
- 全国の値(歩いて行ける薬局が1軒しかない人=住民の13.8%・誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局=薬局の35.2%・院外処方率80.7%)は、47都道府県を同じ名簿・同じ物差しで数えた値です(1枚レポートと同じ計算)。全国での位置は、47都道府県を同じ物差し(徒歩10分では届かない人の割合)で比べたものです。
- 地図:県 → 医療圏 → 市区町村の3段階で下りられます。医療圏ページの地図は、まだ以前の物差し(1軒あたり処方せんの圏内での動き)です。
- 市区町村ごとのページの例(大阪市淀川区)
- 病院薬剤師マップ ── この県の病院に、病棟の薬剤師体制はあるか(無料)
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