CrossHealth / 薬局持久度レポート
需要はまだ増える。問われるのは、誰が引き継ぐか
大阪府8つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市区町村まで下りたレポートへ進めます。
この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。
大阪府の調剤薬局は4,765軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、府全体で+11%増える見通しです。ただし医療圏ごとに±0%から+17%まで開きがあり、さらに「薬局が閉じたあと、誰かが引き継ぐか」は圏域で5倍近く違いました。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが南河内医療圏(±0%)、いちばん伸びるのが豊能医療圏(+17.0%)。医療圏をクリックすると、その中の市区町村差まで下りられます。
人口動態 ── 需要の源大阪府は「人が減り、お年寄りが増える」
大阪府全体では、総人口は868万→757万人(-13%)と減る一方、65歳以上は243万→270万人(+11%)と増えます。高齢化率は28.1%→35.7%へ。処方せんの多くをお年寄りが占めるため、人口が減っても医療需要は簡単には減りません。府全体の65歳以上のピークは2045年ですが、その波がいつ来るかは医療圏で違います。南河内医療圏だけは、20年たっても65歳以上が±0%——実質増えません。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届352件のうち、そのまま消えたのは103件でした
直近12か月(2025年7月〜2026年6月)に大阪府で出された薬局の廃止届は352件。ただしこのうち249件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは103軒(薬局4,765軒の2.16%)でした。注目したいのは圏域差です。引き継がれなかった割合は三島医療圏の8.8%から堺市医療圏の48.0%まで開きます。廃止届の件数が多い圏域が、必ずしも危ういとは限りません。北河内医療圏の廃止届は51件(薬局数に対して9.4%と府内でもっとも高い水準)ですが、その72.5%は別の担い手に引き継がれており、そのまま消えたのは14件です。逆に堺市医療圏は廃止届25件(5.9%と府内でもっとも低い)ですが、その48.0%が引き継ぎ手のないまま消えています。
下は「引き継がれなかった割合」(真の閉局 ÷ 廃止届)が低い順。低いほど、閉じても次の担い手が見つかっている圏域です。割合とあわせて必ず件数をご覧ください。母数の小さい圏域では1件の増減で割合が4〜6ポイント動くため、順位そのものは入れ替わりえます。両端(三島と堺市)の開きは確かなものですが、中位の圏域どうしの順位は、この件数では読み取れません。
ランキング ── 圏域差処方せんが増える医療圏・増えない医療圏
南河内(±0%)から豊能(+17.0%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計(2045年の店数)はいまも掲載していません(下の注記)。
くわしい数字 ── 地域別8医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | いまの 薬局数 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。個店のランキングは作りません。
医療圏の型 ── 競争で減るのか、需要で減るのか大阪府の医療圏は、すべて都市型(競争淘汰)です
薬局が閉じていく筋道には、大きく2つあります。ひとつは近くに薬局が多く、競争のなかで数が絞られていく道(都市型)。もうひとつは周りに薬局が少ないまま、患者そのものが減っていく道(郊外型)。大阪府の8の二次医療圏を分けると、都市型が8圏・郊外型が0圏です。競争側の比率は圏によって0.68〜0.97まで開きます(0.5以上なら都市型)。同じ県のなかでも、減り方の筋道は一様ではありません。このうち4圏は、社人研の推計で20年に15%を超えて人口が減る側に入ります。県全体の総人口は2025→2045で-12.7%です。全国47都道府県・335の二次医療圏・65,634行(うち移転や承継を除いた本当の閉局3,952件)を学習した統計モデルによる分類です。特定の地方だけで学んだモデルを他の県に当てはめたものではありません。共通の係数は47都道府県すべての実データから学習しており、この地域の値は、この地域に実際にある薬局の実測値から計算しています。この分類は「どの筋道で薬局が減りやすい地域か」を示すもので、個々の薬局の見通しではありませんし、出店や撤退の判断もしません。
機能の届出 ── 厚生局の名簿で数える地域支援・医薬品供給対応体制加算の届出は88.4%です
薬局の機能は、これまで薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告で数えていましたが、ここからは地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で数え直しています。大阪府でこの名簿に載っている保険薬局は4,666軒で、そのうち届出があるのは──地域支援・医薬品供給対応体制加算 4,123軒=88.4%、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)(推定) 3,136軒=67.2%、在宅薬学総合体制加算 2,459軒=52.7%、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定) 3,810軒=81.7%です。名簿の版は令和8年7月1日版(東北厚生局=青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県のみ令和8年6月1日版。7月分が未公開のため入手可能な最新を使用)。8つの厚生局・47都道府県をすべて同じ月の版でそろえてあるので、県どうしを並べて比べられます(GMISの自己申告は県によって取り込みの穴があり、これができませんでした)。推定を含む項目があります。「かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)」は令和8年度改定でかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は服薬管理指導料に統合され、単独の届出名称が無くなりました。新様式の名簿にある「服薬管理指導料の注1」を代理指標として数えた推定値です(告示・通知文の逐語確認はしていません)。「電子的調剤情報連携体制整備加算」は令和8年度改定で「医療DX推進体制整備加算」の後継と判断して数えた推定値です(同一制度の後継という対応関係は未確認)。このページがこれまで載せていた届出率は、改定前の版の名簿を店名で突き合わせて数えたものでした。並べると、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は今回67.2%/これまで77.2%(差-10.0ポイント)です。差の主な理由は3つで、(1)令和8年度改定で後発医薬品調剤体制加算が地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合されたこと(地域支援の届出率が跳ね上がる)、(2)かかりつけ薬剤師指導料が服薬管理指導料に統合され、代理指標に切り替えたこと、(3)これまでが店名の突き合わせ、今回が医療機関コードでの集計であること。どちらかが誤りという意味ではありません。これから先は、47都道府県を同じ月の版でそろえた今回の数え方を主に使います。同月版でそろえた全国比較では、地域支援・医薬品供給対応体制加算は88.4%で全国47都道府県中44位、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は67.2%で全国47都道府県中5位、在宅薬学総合体制加算は52.7%で全国47都道府県中1位、電子的調剤情報連携体制整備加算は81.7%で全国47都道府県中37位です。順位は名簿の数え方がそろっている範囲での並びで、地域の医療の良し悪しを表すものではありません。分母は名簿に載っている薬局の数で、このページの他の場所に出てくるGMIS由来の薬局数とは出典が違うため一致しません。また届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、実際に提供された量ではありません。
いま出していない数字いま出していないのは、2045年の薬局店数の推計だけです
このページでは、次の数字をまだ出していません。(1)2045年の薬局店数 2045年に薬局が何軒になるかという推計です。供給動学モデルは47都道府県のフル学習に更新され、「どの筋道で閉じるか」の係数は検算に通りました。しかし店数の水準を出すには、閉じる側と開く側の数え方がそろっている必要があります。実際に20年ぶん回すと全国で+25.4%(薬局が2割以上増える)、薬局の少ない医療圏では最大+913%という結果になりました。原因は2つで、ひとつは新規指定の名簿がほぼ完全に取れるのに対して廃止届のほうに取りこぼしが残ること(モデルの純増+1074軒/年に対し名簿の実測は+387軒/年)、もうひとつは薬局の少ない医療圏で開局数が全国平均側に引っ張られること(20軒未満の圏では推定2.5軒/年に対し実測0.33軒/年)です。 解禁の条件は、廃止届の取りこぼしをなくすこと(東海北陸のOCR再収穫・名簿の多年化)と、小さい医療圏で開局数が平均へ引っ張られないようにモデルを直すことです。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選んでいます。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 大阪府(このページ・Lv1)=8つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市区町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市区町村(Lv3)=境界・薬局分布・徒歩アクセス・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は潰れる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計は、いまも出していません(参入と退出の数え方がそろわず、そのまま回すと全国で薬局が2割以上増える計算になってしまうため)。医療圏の「都市型/郊外型」分類は、供給の統計モデルが47都道府県フル学習になったので掲載に切り替えました。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・府全体で年間58,448,381枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方】近畿厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています(直近12か月・府全体で103件)。廃止届は352件出ていますが、うち249件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。「薬局が無くなったか」を問うレポートなので、承継・移転は閉局に数えません。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(府内464店を除外)。位置は国土数値情報の市区町村境界への点内判定で割り当てています。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づき、申告データのある4,128店を分母にしています(府内全4,765店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
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