CrossHealth / 薬局持久度レポート
県の落差をつくっているのは、東西ではなく半島でした
静岡県8の二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町まで下りたレポートへ進めます。
静岡県の調剤薬局は1,909軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、県全体では+3.8%——ほぼ横ばいです。東西に約155km、日本でも指折りに長い県ですから、落差は東西方向に出そうに思えます。実際に薬局の重心の経度と需要変化の順位相関は-0.69で、たしかに西ほど増える傾向はあります。ただし数字を開くと、県の落差36.1ポイント(賀茂-26.4% 〜 西部+9.7%)は、ほとんどが伊豆半島の2医療圏で作られています。伊豆の2圏を外すと、残り6圏の落差は8.7ポイントまで縮みます。静岡県は「東西に長い県」である前に、「半島を抱えた県」でした。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが賀茂医療圏(-26.4%)、いちばん伸びるのが西部医療圏(+9.7%)。医療圏をクリックすると、その中の市町差まで下りられます。
広さ ── 半島と山あいの距離薬局1軒あたりの面積は、圏によって5.4倍違う
静岡県の面積は7,772km²。薬局1,909軒で割ると1軒あたり4.1km²です。ただしこれも平均で、静岡医療圏の3.4km²から賀茂医療圏の18.2km²まで5.4倍開きます。薬局が8軒に満たない市町は8あり(県内37市区町の22%)、そこに県内の65歳以上の2.9%が住んでいます。静岡県には薬局が1軒も無い市町はありません。※この面積の指標は行政区域ポリゴンの幾何だけから出したもので、道路・公共交通・地形(南アルプスや伊豆の山越え)は含みません。250mメッシュの人口を使った徒歩アクセス率(千葉県版で出したもの)は、静岡県分のメッシュが未投入のため出せていません。
人口動態 ── 需要の源総人口は15%減る。65歳以上はほぼ横ばい
静岡県全体では、総人口は351万→297万人(-15.3%)と減ります。65歳以上は111万→115万人(+3.8%)で、20年たってもほとんど増えません。高齢化率は31.6%→38.7%へ上がりますが、それは分母(総人口)が減るからです。県全体の65歳以上のピークは2040年。医療圏で見ると、8圏のうち2圏(賀茂・熱海伊東)は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っています。この2圏がそのまま伊豆半島です。伊豆ブロックの高齢化率は2025年ですでに47.3%——県平均31.6%の1.5倍で、2045年には56.8%、つまり住民の5人に3人が65歳以上になります。
地域区分 ── 伊豆・東部・中部・西部伊豆は県の面積の9.9%、薬局の4.2%
静岡県を県の計画と同じ4区分で見ると、伊豆(薬局81軒・65歳以上-15.1%)だけがはっきりマイナスで、東部(517軒・+4.7%)・中部(681軒・+1.7%)・西部(630軒・+8.4%)は横ばいから微増です。県内最大の医療圏は静岡(薬局21.9%)で、京都府の最大圏68.5%・北海道の札幌47.5%・大阪府の大阪市38.0%と比べると一極集中はゆるやかです。静岡市と浜松市という2つの政令市を抱えながら、薬局は8つの医療圏にわりあい平らに散っている——これが静岡県のかたちです。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届28件のうち、そのまま消えたのは9件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に静岡県で出された薬局の廃止届は28件。ただしこのうち19件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは9軒(薬局1,909軒の0.47%)でした。引き継がれなかった割合は32.1%です。この件数を、他の都道府県と並べないでください。静岡県を含む東海北陸厚生局の廃止名簿は原本が画像PDFで、OCRで読み取ったうえ、読み違えた行は捨てる(正確性を優先する)設計になっているため、件数は下限値です。厚生局のブロックごとに名簿の捕捉のしかたが違うので、この数字が使えるのは静岡県内の医療圏どうしの比較と東海北陸6県どうしの比較までです(根拠の数字はデータの clo_source_caveat に入れてあります)。県内では2医療圏(賀茂・富士)で12ヶ月に廃止届が1件も出ておらず、真の閉局9件のうち4件が西部医療圏に出ています。12ヶ月では件数が一桁なので、医療圏どうしを見るときは4年ぶん(2022年5月〜2026年4月(4年))を使ってください——この4年で静岡県に出た廃止届は104件、うち真の閉局は47件(薬局1,909軒の2.46%)です。それでも1件で率が動く規模なので、圏どうしの比較は傾向としてのみお読みください。
機能の届出 ── 兵庫県とは逆向きでした需要が細る圏ほど、届出率は高い
かかりつけ薬剤師指導料の届出率は静岡県全体で67.6%。県内では静岡の63.6%から熱海伊東の81.6%まで開きます。在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率は県全体で46.8%、静岡の42.8%から熱海伊東の73.5%まで。兵庫県では在宅の届出率の順位が需要の伸びの順位と8圏すべてで一致し、「需要が細る地域ほど届出が薄い」という並びでした。静岡県は同じ8圏ですが、順位相関は-0.214——向きが逆です。実際、需要の変化が県内で下から2番目の熱海伊東医療圏がかかりつけ81.6%・在宅73.5%と県内最高で、いちばん縮む賀茂医療圏の在宅56.2%も県平均を上回ります。「過疎だから届出が薄い」とは静岡県では言えません。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。
ランキング ── 圏域差1軒あたり処方せんは、県内で1.4倍しか開かない
賀茂(-26.4%)から西部(+9.7%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは賀茂の10,344枚から熱海伊東の14,791枚まで1.43倍の開きで、県平均は12,724枚。大阪府12,266枚・兵庫県13,628枚と北海道15,711枚のあいだにあたります。1軒あたりが県内最小なのは賀茂医療圏(10,344枚)で、需要の変化も県内最下位(-26.4%)です。1軒あたり処方せんと需要変化の順位相関は0.452。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は出していません(下の注記)。
くわしい数字8医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 静岡 | 418 | 11,529 → 11,776 | +2.1% |
| 西部 | 400 | 13,958 → 15,307 | +9.7% |
| 駿東田方 | 339 | 12,260 → 12,717 | +3.7% |
| 志太榛原 | 263 | 12,242 → 12,370 | +1.0% |
| 中東遠 | 230 | 13,868 → 14,721 | +6.2% |
| 富士 | 178 | 12,733 → 13,565 | +6.5% |
| 熱海伊東 | 49 | 14,791 → 13,539 | -8.5% |
| 賀茂 | 32 | 10,344 → 7,615 | -26.4% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。静岡県の閉局件数は名簿がOCR由来のため下限値で、他ブロックの県とは並べられません。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計は、静岡県では出せません
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿6府県だけを学習しており、静岡県は学習の対象外です。加えて静岡県は閉局名簿そのものがOCR由来の下限値で、この県のデータで閉局の起こりやすさを推定することも、いまはできません。確定している需要側の数字(将来推計人口とNDB処方せん実績)と、現在の供給の事実(薬局数・届出・面積)だけでお伝えします。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 静岡県(このページ・Lv1)=8の二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市町で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市町(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。供給の統計モデルが近畿6府県のみを学習しており、静岡県は学習の対象外だからです。静岡県を含めて学習しなおすまで、出しません。
- 【★閉局件数は下限値です・他ブロックと並べられません】静岡県を含む東海北陸厚生局(富山・石川・岐阜・静岡・愛知・三重)の廃止名簿は、原本が画像PDFでテキスト層がありません。OCRで読み取り、機関番号を厳密に検証して読み違えた行は捨てる(再現率より正確性を優先する)設計のため、件数は下限値です。薬局1軒あたりの廃止届の件数を都道府県別に並べると、東海北陸の6県がそろって他ブロックのどの県よりも低く、ブロックが完全に分かれます。これは「静岡県では薬局が閉じにくい」という地域差ではなく、名簿の捕捉率の差と読むべきです(具体的な数字はデータの clo_source_caveat 参照)。静岡県の閉局の数字は (1)県内の圏域どうし (2)東海北陸6県どうし の比較にのみお使いください。全国順位や全国平均との対比には使えません。
- 【閉局の窓は3層】既定は2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)(真の閉局9件)。医療圏の単位では0〜4件にしかならないため、圏域どうしを見るときは4年窓(2022年5月〜2026年4月(4年)・真の閉局47件・廃止届104件)を使ってください。暦年2025(真の閉局13件)は、暦年で公開している他県と『同じ期間』で並べるための参考値です(ただし上記のとおり水準は比較できません)。4年窓には東海北陸ブロック全体で0件の月(2023年3月)が1つ含まれ、座標も住所も復元できない4件は圏の内訳に入っていません。
- 【窓の中に廃止0件の月がある理由】既定の12ヶ月窓のうち2ヶ月(2026-02・2026-03)は静岡県の廃止届が0件です。これは収録の穴ではありません。その月を載せるはずの号がアーカイブにそろっており、同じ東海北陸ブロックの他県の廃止届はその月付けで実際に載っているため、「その月に静岡県の廃止が無かった」=真のゼロと判定しています(判定の内訳はデータの clo_coverage に月ごとに入れてあります)。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間24,289,675枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。伊豆半島や県境部では患者が圏をまたいで受診する量もありますが、その流出入は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方と集計期間】厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。集計期間は2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)。東海北陸厚生局の名簿は2020年10月号〜2026年7月号まで欠号がなく(同管内5県の行を横断して確認)、掲載遅れは廃止日から3ヶ月で92.0%なので、廃止日2026年4月30日までがそろいます。この期間の廃止届は28件で、うち19件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは9件です。静岡県は暦年2025も欠号なくそろうため、参考値として13件(廃止届32件)も併記しています。
- 【アーカイブ全期間の値は年次トレンドに使えない】2020年1月〜2026年5月の195件(うち真の閉局83件)は参考として保持していますが、2020年2〜7月と2023年3月が東海北陸ブロック全体で0件=収録の穴です。「年々増えている/減っている」という読み方はできません。
- 【座標のない閉局】静岡県の閉局201件のうち座標があるのは183件(91.0%)で、残り18件は住所がOCRで潰れています。読み取れた12件は住所の地名から市町を特定して割り当て、特定できなかった6件はアーカイブ参考値にのみ残しました。既定の12ヶ月窓・暦年2025では、市町まで割り当てられなかった件数は0件です。地図に閉局の点を出す場合は、座標のある分だけが描かれます。
- 【圏域ごとの閉局は件数が小さい】静岡県の真の閉局は12ヶ月で9件です。3医療圏では真の閉局が0件、うち2医療圏は廃止届そのものが0件でした。1件で率が大きく動くため、圏どうしの閉局率・承継率の比較は傾向としてのみお読みください。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(静岡県では392店を除外)。位置は届出上の市区町村コードで割り当てています(静岡県は対象1,909店すべてに市区町村コードがあります)。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づきます。静岡県は対象1,909店すべてに申告があり、分母は薬局数と一致します(欠測0)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【浜松市の区再編】浜松市は2024年1月1日に旧7区から新3区(中央区・浜名区・天竜区)へ再編されました。将来推計人口と医療圏マスタは旧7区のまま、薬局データと行政区域ポリゴンは新3区で、新旧の対応では北区が2つに割れます。公式の按分比が無いため、本レポートは浜松市を1つの単位として合算しました(合算値は新旧どちらの区割りでも完全に一致し、推計は入りません)。静岡市は3区とも全データで一致するため、3行政区に分けて扱っています。
- 【薬局が0軒・ごく少数の自治体】静岡県には薬局が1軒も無い市町はありません。薬局8軒未満は8市町(県内37市区町の22%)で、そこに県内の65歳以上の2.9%が住んでいます。1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れます。表・地図では注記つきでお読みください。
- 【面積の指標について】area_km2 は国土数値情報の行政区域ポリゴンから球面積を積算したものです(穴は減算)。道路網・公共交通・地形は含みません。「薬局1軒あたり4.1km²」は幾何的な広さであって、住民が実際にどれだけ移動するかではありません。250mメッシュ人口による徒歩アクセス率(千葉県版の指標)は、mesh_backbone_250m に静岡県分が未投入のため出せていません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。静岡県は8の二次医療圏です。本文中の「伊豆・東部・中部・西部」は、静岡県が計画で使う地域区分に医療圏を割り付けた集計であり、医療圏そのものの区分ではありません。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【順位相関について】兵庫県では在宅届出率の順位が需要の順位と8圏すべてで一致(需要が細る圏ほど届出が薄い)でしたが、静岡県では順位相関-0.214と向きが逆でした。相関であって因果ではなく、「だから在宅を増やすべき」といった主張はしません。8圏しかないため、順位の一致・不一致は偶然でも起こりえます。
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