CrossHealth / 薬局持久度レポート
同じ県にふたつの政令市。ひとつは、もう高齢者が増えない
福岡県13つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市区町村まで下りたレポートへ進めます。
福岡県の調剤薬局は2,907軒。高齢化で処方せんの需要は今後20年、県全体では+7.3%増える見通しです。ただし医療圏に割ると-20.0%(田川)から+27.2%(福岡・糸島)まで47.2ポイント開き、13医療圏のうち8圏は65歳以上の人口がすでにピークを過ぎています。そこにある薬局は1,239軒——県内の42.6%です。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが田川医療圏(-20.0%)、いちばん伸びるのが福岡・糸島医療圏(+27.2%)。医療圏をクリックすると、その中の市区町村差まで下りられます。
人口動態 ── 需要の源県全体では+7.3%。でも8つの医療圏では、もう増えない
福岡県全体では、総人口は507万→462万人(-8.9%)と減る一方、65歳以上は147万→158万人(+7.3%)と増えます。高齢化率は29.0%→34.1%へ。ただしこの「増える」は県平均の話です。田川/有明/直方・鞍手/飯塚/朝倉/八女・筑後/京築/北九州の8医療圏は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っており、ここには薬局が1,239軒(県内の42.6%)あります。福岡市を含む3医療圏(福岡・糸島/粕屋/筑紫)は65歳以上が+25.3%と伸び、薬局1,329軒(県内の45.7%)がそこに集まっています。いっぽう筑豊の3医療圏(飯塚/直方・鞍手/田川)は-15.3%。同じ県の中で、需要の向きが逆を向いています。
ふたつの政令市 ── 福岡市と北九州市北九州市は7区のうち4区が、すでに減少局面
福岡県には政令指定都市がふたつあります。この2つは、薬局から見るとまったく別の県のように振る舞います。福岡市の7区は、7区すべてで65歳以上人口が2050年まで増え続ける推計です(ピーク年はすべて2050年)。いっぽう北九州市の7区では、4区(門司区・八幡東区・若松区・戸畑区)がすでに2025年にピークを打っています。北九州医療圏は、政令指定都市を抱えながら圏全体の65歳以上人口が-3.7%と減る、福岡県で唯一の圏域です。それでも薬局は668軒(県内の23.0%)あります。「高齢化が進む=薬局の需要が増える」という言い方が、どこでも成り立つわけではないことを、この2市は同じ県の中で示しています。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届163件のうち、そのまま消えたのは67件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に福岡県で出された薬局の廃止届は163件。ただしこのうち96件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは67軒(薬局2,907軒の2.30%)でした。引き継がれなかった割合は県全体で41.1%、圏域では朝倉医療圏の0.0%から有明医療圏の75.0%まで開きます。注目したいのは、閉局が「縮む地域だけの話ではない」ことです。真の閉局率が高い上位3圏は田川(4.35%・需要-20.0%)/粕屋(3.68%・需要+19.5%)/八女・筑後(2.56%・需要-5.6%)で、需要が最も減る圏と、増える側の圏が同居しています。逆に朝倉医療圏は薬局47軒で真の閉局0件、廃止届2件も承継されました。なお同じ期間・同じ数え方で九州8県を並べると、福岡県の2.30%は8県中3番目(上位は沖縄県4.09%・鹿児島県2.80%)。最も高い沖縄県(4.09%)と最も低い佐賀県(1.79%)の差は2.30ポイントで、福岡はその中位にいます。
ランキング ── 圏域差処方せんが増える医療圏・減る医療圏
田川(-20.0%)から福岡・糸島(+27.2%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは直方・鞍手の11,536枚から宗像の17,575枚まで1.52倍の開きで、「いま薄い地域が、これからさらに薄くなる」とは限らない点に注意してください。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は現在再学習中です(下の注記)。
くわしい数字13医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 福岡・糸島 | 975 | 13,092 → 16,656 | +27.2% |
| 北九州 | 668 | 12,969 → 12,486 | -3.7% |
| 久留米 | 278 | 12,809 → 13,610 | +6.3% |
| 筑紫 | 218 | 13,432 → 16,390 | +22.0% |
| 粕屋 | 136 | 13,115 → 15,673 | +19.5% |
| 有明 | 124 | 12,637 → 10,493 | -17.0% |
| 京築 | 100 | 12,813 → 12,129 | -5.3% |
| 飯塚 | 91 | 12,453 → 10,907 | -12.4% |
| 八女・筑後 | 78 | 13,186 → 12,448 | -5.6% |
| 田川 | 69 | 13,198 → 10,555 | -20.0% |
| 直方・鞍手 | 62 | 11,536 → 9,878 | -14.4% |
| 宗像 | 61 | 17,575 → 18,647 | +6.1% |
| 朝倉 | 47 | 12,902 → 11,857 | -8.1% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計と、機能の届出率は出していません
このページでは3つの数字を外しています。ひとつめは2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿地方で学習したもので九州を含んでおらず、閉局の数え方も古いままなので、学習しなおす必要があります。ふたつめは、かかりつけ薬剤師指導料・地域連携薬局・在宅対応の届出率。福岡県は薬局機能情報提供制度のデータが手元のデータベースにまだ取り込まれておらず、いま集計すると全店0%になってしまいます。これは「届け出ている薬局が無い」のではなく「データが無い」だけなので、数字としては出しません。みっつめは徒歩圏カバー率で、こちらも250mメッシュの人口データが福岡県分未投入のためです。できあがり次第このページに戻します。あわせて、過去にさかのぼる件数(4年ぶんの集計と年ごとの推移)は名簿の号が一部そろっていない時期があるため下限値として出しています(詳しくは下の注記)。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 福岡県(このページ・Lv1)=13つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市区町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市区町村(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字(1)供給の将来】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。供給の統計モデルが近畿地方で学習したもので九州を含まず、閉局の定義変更(移転・承継を除外)にも追随していないためです。
- 【いま出していない数字(2)機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料・地域連携薬局・在宅対応の届出率は、福岡県では掲載していません。薬局機能情報提供制度(GMIS)の届出データが当データベースに未取込で、集計すると全店0%になってしまうためです。0%は「届け出ている薬局が無い」という意味ではなく、単にデータが無いという意味です。他県版(大阪・千葉・兵庫)にはこの軸があり、福岡版には無い、という違いがあります。なお同じ欠測は全国14県・薬局11,630店ぶんにあります(完全に空: 佐賀県・大分県・宮崎県・徳島県・沖縄県・熊本県・福岡県・福島県・長崎県・鹿児島県/ほぼ空: 宮城県・山形県・岩手県・秋田県)。
- 【いま出していない数字(3)徒歩圏カバー率】250mメッシュ人口が福岡県分未投入のため、「歩いて薬局に行ける人の割合」は出していません(千葉県版にはあります)。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間38,014,486枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方と集計期間】九州厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。集計期間は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)で、これは九州厚生局管轄8県でそろえた共通の窓です。この期間の廃止届は163件で、うち96件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは67件です。大阪府(暦年2025・78件/1.64%)・千葉県(暦年2025・42件/1.48%)とは窓が違うため、全国比較には参考窓の暦年2025(2025年1月〜12月・12ヶ月)(71件/2.44%)を使ってください。件数を並べるときは必ず期間を添えること。
- 【名簿の欠けと「本当にゼロ」の区別】ある月の閉局が0件でも、それが「その月は閉局が無かった」のか「名簿そのものが無い」のかは福岡県だけを見ても分かりません。九州厚生局管轄8県の月次をまとめて並べ、8県ぜんぶで0件の月=名簿の欠け、他県には記録があるのに福岡だけ0件=本当にゼロ、と判定しています。福岡県で名簿そのものが無いのは2020-05の1ヶ月で、いずれも既定窓・参考窓の外です。既定窓・参考窓はどちらも12ヶ月すべてに名簿があります。収録の終端(2026-06)は掲載遅れで打ち切り中のため、どちらの窓にも入れていません。
- 【★過去にさかのぼる数字は「下限」です】九州の廃止名簿は、廃止日から1〜3ヶ月遅れて毎月1号ずつ出ます。その号を1つずつ復元して確かめたところ、**2024年の5号(2024-02・2024-03・2024-05・2024-06・2024-08)がそろっていません**(過去分アーカイブから現行名簿へ収集方法が切り替わった時期にあたります)。そのため廃止日が2023-12〜2024-06の7ヶ月は、本来載るはずの号の一部しか手元に無く、件数が実際より少なく出ています。この期間を含む数字——4年窓(222件)と年次推移の2023年・2024年——は**下限値**としてお読みください。いっぽう既定の集計期間(直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月))と参考の暦年2025(2025年1月〜12月・12ヶ月)はこの穴の外にあり、影響を受けていません。
- 【閉局の年次推移は参考値】2021〜2025の5暦年ぶんを clo_by_year に持っていますが、名簿の収集経路(過去分アーカイブと現行名簿)の重なり方が年で違うため、年ごとの増減はトレンドの目安にとどめ、本文の断定には使っていません。上記のとおり2023年・2024年は下限値です。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(県内179店を除外)。位置は届出上の市区町村コードで割り当てています(福岡県は全2,907店に市区町村コードがあり、未割当は0件)。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。福岡県は13の二次医療圏に分かれます。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
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