CrossHealth / 薬局持久度レポート

千葉県の薬局は、3つの別々の時間を生きている

9つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・徒歩アクセス・閉局で見える化。地図の圏域をクリックすると、さらに詳しいレポートへ進めます。

対象 千葉県 9二次医療圏・59市区町村期間 2025年 → 2050年概要版・無料

千葉県には調剤薬局が2,839店あります。県全体で見れば、処方せんの需要は2025年から2050年にかけて+14.2%とむしろ増える見通しです。けれど、それは県を一つの塊として見たときの話です。9つの二次医療圏に分けると、需要が+31.7%伸びる圏域と、-23.7%縮む圏域が、同じ県の中に同居しています。

2,839
県内の調剤薬局
9
二次医療圏
42
2025年に閉じた薬局(移転・承継を除く)
87.3%
徒歩10分以内に薬局がある人

千葉県は、薬局から見ると3つの県が重なってできています。1つめは東京に接する都市三圏(東葛南部・東葛北部・千葉)。県内の薬局2,839店のうち1,786店(63%)が集まり、65歳以上人口は2050年まで+21.3〜+31.7%増え続けます。徒歩10分以内に薬局がある人の割合は95〜97%。2つめは内陸・内房の中間三圏(印旛・君津・市原)で626店。高齢人口のピークは2040〜2045年、需要はおおむね横ばいです。そして3つめが、外房・北総東部・南房総の外縁三圏(香取海匝・山武長生夷隅・安房)。薬局は427店(15%)しかなく、65歳以上人口のピークはすでに2025年=いまです。ここから2050年までに高齢者そのものが-16.5%減り、処方せんの需要も-23.7〜-11.6%縮みます。「高齢化で薬局は安泰」という常識が最初に崩れるのが、この3圏です。差はアクセスにも出ています。徒歩10分以内に薬局がある人の割合は、東葛南部の97.3%に対して香取海匝は46.7%。県全体では87.3%ですが、裏を返せば792,319人がすでに徒歩10分圏の外に住んでいます。さらに、いちばん高齢化が進んでいる安房(高齢化率44.7%)の在宅対応の届出率が県内最低の28.1%であることも、数字は隠しません。歩けない人が増える地域ほど、届け出ている薬局が薄いのです。

地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来

色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2050変化です。いちばん伸びるのが東葛南部(+31.7%)、いちばん縮むのが安房(-23.7%)で、同じ県内に55ポイントの開きがあります。

千葉:薬局495軒/1軒あたり処方せん(→2050) +21.3%千葉印旛:薬局342軒/1軒あたり処方せん(→2050) +9.7%印旛君津:薬局168軒/1軒あたり処方せん(→2050) +2.5%君津安房:薬局68軒/1軒あたり処方せん(→2050) -23.7%安房山武長生夷隅:薬局218軒/1軒あたり処方せん(→2050) -11.6%(クリックで詳細)山武長生夷隅市原:薬局116軒/1軒あたり処方せん(→2050) -2.0%市原東葛北部:薬局576軒/1軒あたり処方せん(→2050) +22.4%東葛北部東葛南部:薬局715軒/1軒あたり処方せん(→2050) +31.7%東葛南部香取海匝:薬局141軒/1軒あたり処方せん(→2050) -20.5%香取海匝
色=薬局1軒あたり処方せんの変化(→2050)
減る(-24%)増える(+32%)
医療圏そのものの形で塗り分けています。山武長生夷隅医療圏(クリック可)をクリックすると、二次医療圏の詳細(Lv2)へ進めます。他の医療圏は市区町村詳細版を準備中です。
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徒歩アクセス ── 歩いて行けるか県民の12.7%は、すでに薬局まで徒歩10分より遠い

250mメッシュの人口ひとつひとつについて、最寄りの薬局まで徒歩何分かを計算しました。千葉県全体では87.3%の人が徒歩10分以内、95.2%が20分以内に住んでいます。ただし医療圏別では97.3%(東葛南部)から46.7%(香取海匝)まで開きます。市区町村まで下りると差はさらに広がり、最も薄い長柄町(山武長生夷隅医療圏)は9.9%、最も厚い鎌ケ谷市は99.5%です。

下は医療圏別・徒歩10分以内カバー率(低い順)。

香取海匝
46.7%
山武長生夷隅
51.7%
安房
52.6%
君津
76.7%
市原
80.4%
印旛
80.4%
東葛北部
95.2%
千葉
96.1%
東葛南部
97.3%

人口動態 ── 需要の源県全体では高齢者はまだ増える。でも3つの圏域ではもう減りはじめている

千葉県の総人口は6,258,104人から5,690,156人へ(-9.1%)、65歳以上は1,770,396人から2,022,041人へ(+14.2%)。高齢化率は28.3%→35.5%です。けれど香取海匝・山武長生夷隅・安房の3圏では、65歳以上人口のピークはすでに2025年に来ています。処方せんの担い手ではなく受け手が減りはじめる局面です。

総人口65歳以上
0万175万350万525万700万202520302035204020452050569万202万
実データ(社人研 2023年推計)。県全体の65歳以上人口のピークは2045年。

閉局 ── 実データ2025年に千葉県で閉じた薬局は42軒

厚生局の廃止届は115件ありましたが、うち73件は新機関コードが記載された移転・承継——別のコードで薬局が続いたケースです。つまり「その場所から薬局が消えた」のは42軒、県内薬局の1.48%にあたります。直近3年(2023-2024-2025)の平均では年1.2%。承継が成立したケースまで閉局と数えてしまうと、この県の姿は2.7倍に膨らんで見えてしまいます。承継は薬局が地域に残った証拠であって、消えた証拠ではありません。なお42軒のうち41軒は原資料の住所から市区町村を特定できたもので、医療圏別の集計はこの41軒です。

医療圏別の内訳(廃止届の多い順)。赤=真の閉局、緑=移転・承継。

東葛北部
8 / 36
東葛南部
10 / 27
千葉
5 / 15
印旛
3 / 12
山武長生夷隅
6 / 10
市原
4 / 5
香取海匝
1 / 3
安房
2 / 2
君津
2 / 2

ランキング ── 医療圏差9医療圏データ一覧

医療圏ごとの経営体力(薬局1軒あたり処方せんの2025→2050変化)を並べたものです。

安房
-23.7%
香取海匝
-20.5%
山武長生夷隅
-11.6%
市原
-2.0%
君津
+2.5%
印旛
+9.7%
千葉
+21.3%
東葛北部
+22.4%
東葛南部
+31.7%
地域(医療圏)いまの
薬局数
1軒あたり処方せん
2025 → 2050(枚/年)
変化
東葛南部 →71514,899 19,623+31.7%
東葛北部 →57614,113 17,274+22.4%
千葉 →49512,501 15,169+21.3%
印旛 →34212,632 13,862+9.7%
山武長生夷隅 →21810,917 9,655-11.6%
君津 →16812,854 13,175+2.5%
香取海匝 →14110,948 8,700-20.5%
市原 →11613,875 13,591-2.0%
安房 →6811,412 8,712-23.7%

※処方せんは各医療圏のNDB実績(2023年)を、その圏域の65歳以上人口の伸びで延ばした推計です。個店のランキングは作りません。

この地図の使い方(3段階のドリルダウン)

  • 千葉県(このページ・Lv1)=9つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
  • 山武長生夷隅医療圏(Lv2)=17市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
  • 市区町村(詳細・Lv3)=境界・薬局分布・徒歩アクセス・経営シナリオまで。

このレポートの範囲と、正直な限界

  • 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏・市区町村)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き、そして徒歩でのアクセスです。地域の持続可能性を映すためのものです。
  • 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は潰れる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断もしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
  • 【「薬局1軒あたり処方せん」の意味】各医療圏のNDB院外処方せん実績(2023年)を、その圏域の65歳以上人口の伸び率で延ばし、いまの薬局数で割った値です。1人あたりの受診・処方の量は今のまま変わらないと仮定しています。
  • 【薬局数は2025年で固定】将来の新規開局・閉局による店舗数の変化は織り込んでいません。「需要が増える」=「1軒あたりが楽になる」ではない点にご注意ください(新規開局が増えれば1軒あたりは減ります)。
  • 【閉局の数え方】関東信越厚生局の保険薬局「廃止」情報のうち、届出に新機関コード(=別のコードで事業が続く移転・承継)の記載がないものだけを「閉局」として数えています。2025年の千葉県は、廃止届115件のうち移転・承継が73件、閉局が42件でした。うち41件は住所から市区町村を特定でき、地域別の集計に使っています。残り1件は原資料の住所欄が読み取れず、県計にのみ含めています。※ 公開済みの大阪府版レポートは、この移転・承継を分けずに廃止届の全件を「閉局」として数えています。県をまたいで件数を比べるときはご注意ください。
  • 【閉局データの期間】千葉県の廃止情報は2020年分から手元にありますが、月次名簿の収録が揃っているのは2023年以降です。それ以前の年は件数が少なく見えますが、実際に少なかったのか名簿が欠けているのか区別できません。年次の傾向は2023-2024-2025年だけでお読みください。2026年は年途中(5月まで)の参考値です。
  • 【徒歩アクセス】250mメッシュの人口(国勢調査ベースの将来人口メッシュ)ごとに、最寄りの調剤薬局までの直線距離を分速80m(時速4.8km)で割った近似です。実際の道路・坂・信号・バスは考慮していません。市区町村の境をまたいだ最寄り薬局も「近い」と数えています(郊外では市境をまたぐ通院がふつうのため)。
  • 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、調剤をしないドラッグストア専業は含みません。位置は届出座標にもとづき、国土数値情報の市区町村境界への点内判定で地域に割り当てています。
  • 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
  • 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料・地域連携薬局・在宅対応などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告にもとづき、申告データのある2,633店を分母にしています(対象2,839店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
  • 【機構分類は出していません】大阪府版のLv1には「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」という分類がありましたが、千葉県では1圏域あたりの閉局が1〜11軒と少なく、分類が1〜2軒の増減で入れ替わってしまうため出していません。代わりに需要の向き(増える/横ばい/減る)だけを示しています。

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