CrossHealth / 薬局持久度レポート
いまは、どこも同じ。分かれるのは、これから
三重県4つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町まで下りたレポートへ進めます。
三重県の調剤薬局は866軒。1軒あたりの処方せんは南勢志摩の12,057枚から中勢伊賀の13,641枚まで、わずか1.13倍しか開きません。いまの三重県は、県内のどこを切っても薬局1軒が受け持つ量がほぼ同じ県です。ところが2045年の姿を推計すると、その幅は1.64倍(東紀州9,404枚 〜 北勢15,427枚)に開きます。県全体の65歳以上人口は+3.5%とほぼ横ばいなのに、医療圏に割ると東紀州-25.2% 〜 北勢+15.6%と40.8ポイント開く。三重県で起きるのは「全体の増減」ではなく「県内の分岐」です。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが東紀州医療圏(-25.2%)、いちばん伸びるのが北勢医療圏(+15.6%)。4圏を変化の小さい順に並べると東紀州→南勢志摩→中勢伊賀→北勢となり、そのまま県土を南から北へたどる順番になります。医療圏をクリックすると、その中の市町差まで下りられます。
人口動態 ── 需要の源県の65歳以上は+3.5%。その1行が、県内の分岐を隠している
三重県の総人口は170.3万→142.2万人(-16.5%)。65歳以上は53.2万→55.0万人(+3.5%)で、県全体で見ればほぼ横ばいです。高齢化率は31.2%→38.7%。ところが29市町に割ると、65歳以上が増えるのは12市町だけ。残る17市町は減り、しかもその全部が「2025年がすでにピーク」=これから減っていく市町です。医療圏でも2圏(東紀州・南勢志摩)がピーク済みで、そこには薬局が256軒(県内の29.6%)あります。いちばん若いのは朝日町(高齢化率18.7%)、いちばん高いのは2045年の南伊勢町(68.8%)で、同じ県の中に住民の5人に1人が高齢者の町と、3人に2人が高齢者になる町が並んでいます。
いまの薄さ ── 県内はほぼ均質1軒あたり処方せんは、県内で1.13倍しか開かない
薬局1軒が1年に受ける処方せんの推計は、南勢志摩12,057枚・東紀州12,575枚・北勢13,344枚・中勢伊賀13,641枚。最大でも最小の1.13倍で、兵庫県(1.38倍)・和歌山県(1.43倍)と比べても幅が狭い。人口密度も産業も違う4圏で、薬局1軒あたりの負荷がここまで揃っているのは、供給が需要に合わせて分布してきた結果と読めます。注目したいのは、この均質さが将来には続かないことです。2045年の推計では東紀州9,404枚 〜 北勢15,427枚で1.64倍。いま薄い・厚いの問題ではなく、これから向きが分かれる、というのが三重県の形です。
薬局のいない町 ── それは南ではなかった県内で唯一薬局が0軒の木曽岬町は、いちばん伸びる北勢医療圏にある
三重県29市町のうち、調剤を行う薬局が1軒も無いのは木曽岬町(2025年の人口5,656人・うち65歳以上2,084人・高齢化率36.8%)の1町だけです。人口が減っていく東紀州や南勢志摩ではなく、県内で唯一需要が大きく増える北勢医療圏(+15.6%)にあります。木曽岬町は木曽三川の河口に位置する面積約16km²の町で、三重県内で接しているのは桑名市だけ、もう一方の隣は愛知県弥富市です。住民は県境も市境も越えて薬局にかかっているとみられ、「薬が手に入らない」という意味ではありません。さらに薬局が8軒未満の自治体が13市町あり、合わせると14市町(県人口の9.3%)が「薬局8軒未満」の自治体でした。薬局が少ない自治体では、1軒の増減がそのまま地域の医療アクセスに効きます。本レポートで市町別の比率(届出率・閉局率)を出すとき、分母が8軒未満のものに注記を付けているのはこのためです。
東紀州 ── 2045年、住民の過半が65歳以上になる東紀州医療圏の高齢化率は45.8%→54.6%
東紀州医療圏は5市町・薬局31軒。県土の17%を占める広さに、県内の薬局の3.6%だけがあります。総人口は5.9万→3.7万人(-37.3%)、65歳以上も-25.2%と減り、高齢化率は45.8%から54.6%へ。2045年には住民の過半数が65歳以上になる推計です。5市町すべてで65歳以上人口が2025年をピークに減り始めており、うち4市町は薬局が8軒未満です。機能の届出でも、地域連携薬局25.8%・在宅患者訪問薬剤管理指導32.3%と県内で最も低い水準でした(届出データは31店ぶん)。いっぽうで、この12ヶ月に東紀州から出された薬局の廃止届は0件です。人口が減っていることと、薬局が消えていることは、少なくともこの12ヶ月については別の話でした。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届16件のうち、そのまま消えたのは7件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に三重県で出された薬局の廃止届は16件。ただしこのうち9件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは7軒(薬局866軒の0.81%)、引き継がれなかった割合は県計43.8%でした。三重県は廃止名簿が2020年10月から連続して残っている県で、暦年で数え直すと真の閉局は2021年から2025年まで5〜8件(平均6.4件)。直近12ヶ月の7件は、例年どおりの水準です。件数が少ないため、医療圏別に割ると0〜3件になります。このページでは県全体の数字を主に扱い、圏別の閉局率で順位をつけることはしません。なお、他県の閉局率と直接並べることもしていません。薬局の廃止情報は地方厚生局ごとに公表様式が違い、東海北陸厚生局管内の6県はそろって近畿・関東より低い値が出るためです(詳しくは下の注記)。
機能の届出 ── 需要の順位とは一致しなかった「需要が減る地域ほど届出が薄い」は、三重では半分しか当たらない
三重県は、薬局機能情報(GMIS)の届出データが県内866店すべてにそろっている県です(欠測0店)。在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率を医療圏ごとに並べると、東紀州の32.3%から南勢志摩の51.6%まで開きます。兵庫県では、この並びが処方せん需要の伸びの並びと8圏すべてで一致しましたが、三重県で一致したのは4圏中2圏でした。当たっているのは端です。需要の縮小が最大の東紀州は、地域連携薬局25.8%・在宅32.3%と県内最低。外れているのは真ん中で、かかりつけ薬剤師指導料の届出率が県内最高なのは中勢伊賀の71.6%——需要が-0.2%とほぼ横ばいの圏です。逆に県内で唯一大きく伸びる北勢は64.8%で、県平均(67.2%)を下回ります。「伸びる地域ほど届出が厚い」という関係は、三重県では見えませんでした。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。また医療圏が4つしかないため、順位の一致・不一致は偶然でも起こります。強い主張はできません。
ランキング ── 圏域差処方せんが減る医療圏・増える医療圏
東紀州(-25.2%)から北勢(+15.6%)まで、40.8ポイントの開きがあります。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは南勢志摩の12,057枚から中勢伊賀の13,641枚まで1.13倍の開きで、「いま薄い地域が、これからさらに薄くなる」とは限りません。実際、いま1軒あたりが県内で最も少ないのは南勢志摩ですが、2045年に最も少なくなるのは東紀州です。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は三重県では出していません(下の注記)。
くわしい数字4医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 北勢 | 395 | 13,344 → 15,427 | +15.6% |
| 南勢志摩 | 225 | 12,057 → 11,278 | -6.5% |
| 中勢伊賀 | 215 | 13,641 → 13,612 | -0.2% |
| 東紀州 | 31 | 12,575 → 9,404 | -25.2% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計と、徒歩でのアクセスは出していません
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、そのモデルは近畿6府県だけを学習対象にしており、三重県は入っていません。近畿で推定した数字を東海の県に当てはめて出すことはしません。徒歩でどれだけの人が薬局に届くかという分析も、三重県の250mメッシュ人口データが未投入のため出していません。どちらもデータがそろい次第このページに戻します。それまでは、確定している需要側の数字(将来推計人口とNDB処方せん実績)と、現在の供給の事実(薬局数・直近12ヶ月の閉局)だけでお伝えします。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 三重県(このページ・Lv1)=4つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市町で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市町(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。供給の統計モデルが近畿6府県だけを学習対象にしており、三重県は学習外のためです。徒歩アクセスも、250mメッシュ人口が三重県分未投入のため出していません。データがそろい次第、戻します。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間11,306,425枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方と集計期間】東海北陸厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。三重県分の名簿には廃止日2020-10-31〜2026-05-31が連続して収録されており、兵庫・和歌山のような収録開始の遅れはありません。それでも集計期間は既報県と同じ2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)に揃えています(廃止日から名簿掲載までのラグが最大13ヶ月あり、手元の最新号では2026年5月以降が右側打ち切りになるため)。この期間の廃止届は16件で、うち9件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは7件です。
- 【他県の閉局率と並べないでください】同じ12ヶ月窓・同じ数え方でも、東海北陸厚生局管内の6県は真の閉局率0.38〜1.27%(三重県0.81%)、近畿・関東・北海道は1.54〜2.40%と、ブロックでまとまって水準が違います。経営環境の差なのか、廃止名簿の公表様式・取り込み精度の差なのかは、このデータだけでは切り分けられません。三重県内どうしの比較と、三重県の年次推移(同じ名簿・同じ取り込み)は比較できます。
- 【閉局の件数が少ないことの意味】三重県の真の閉局は12ヶ月で7件です。医療圏別に割ると1圏あたり0〜3件になり、比率(閉局率・承継されなかった割合)は1件の増減で大きく振れます。東紀州医療圏は廃止届そのものが0件のため、承継されなかった割合は定義できません。圏別の比率は参考値として扱い、順位づけには使わないでください。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(県内157店を除外)。位置は届出上の市町村コードで、三重県では866店すべてに市町村コードが付いています。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づきます。三重県は県内866店すべてに届出データがあり(欠測0店)、分母=薬局数です。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【薬局が1軒もない自治体】木曽岬町(北勢医療圏)には調剤薬局がありません。三重県内で接しているのは桑名市のみで、もう一方の隣は愛知県弥富市です。県境・市境を越えて薬局を利用している住民が多いとみられ、「薬が手に入らない」という意味ではありません。到達時間の分析は250mメッシュのデータが三重県分未投入のため、このレポートには含めていません。
- 【圏をまたぐ受療は見ていません】処方せんは「その医療圏の医療機関から出た枚数」で、住民がどこにかかったかは区別していません。中心市に病院が集まる圏域では、周辺から流入した患者のぶんも中心市側に計上されます。三重県は北勢が愛知県、伊賀が奈良県・京都府と接しており、県境をまたぐ受療もこのデータでは見えません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。三重県は北勢・中勢伊賀・南勢志摩・東紀州の4圏です。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
- 【順位の一致について】医療圏が4つしかないため、「届出率の順位と需要の順位が一致した/しなかった」は偶然でも起こります(無作為に並べて全一致する確率は4.2%)。相関であって因果ではありませんし、「だから在宅を増やすべき」とも書きません。
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