病院薬剤師の配置と施設基準
病棟に、薬剤師は来ていますか
入院した患者のベッドサイドに薬剤師が関わる体制を「病棟薬剤業務実施加算」といいます。 200床以上の病院で、この加算1を届け出ているのは全国で 25.2%。 ただし薬剤師が足りないから取れていない県と、薬剤師はいるのに取れていない県があります。 同じ低さでも、打ち手は正反対です。
47都道府県は、4つの型に分かれる
横は薬剤師の数(200床以上の病院の100床あたり常勤薬剤師)、 縦は体制の届出(病棟薬剤業務実施加算1の届出率)。 十字の線は47県の中央値(5.54人/17.6%)です。点の色に良し悪しの意味はありません。
- 加算1の届出(200床以上)
- 100床あたり常勤薬剤師
- 加算1・2・3のいずれか
- 薬剤業務向上加算
同じ「届出が少ない県」でも、打ち手が正反対になる
200床以上の病院を、加算1を届け出ている病院とそうでない病院に分けると、 100床あたりの常勤薬剤師は 7.06人 と 5.25人。 体制のある病院ほど薬剤師が多いのは確かです。ただしこれは相関で、 「薬剤師を増やせば届出が進む」と読めるものではありません。
現に、薬剤師の数が全国の半分より多いのに届出が進んでいない県が8県あります。 ここで人員確保の施策を打っても的を外します。効くのは体制整備と届出の後押しです。 逆に人の数から足りない15県では、体制整備だけを求めても現場が動けません。
人も体制もある16県
薬剤師が全国の半分より多く、届出も進んでいる
少ない人数で回している8県
薬剤師は多くないが、届出は進んでいる
人はいるが、届出が進んでいない8県
薬剤師の数は足りている。効くのは体制整備と届出の後押し
人も体制も足りない15県
薬剤師の数から足りない。確保の施策が要る
薬剤師だけが薄いのか、医療職ぜんぶが薄いのか
病床機能報告には医師と看護師の常勤数も入っています。薬剤師と同じ分母(病床)で測ると、 200床以上の病院の100床あたりは薬剤師5.93人・医師27.27人・看護師94.99人。 これを全国=100として県ごとに指数にすると、同じ「薬剤師が少ない県」でも中身が違うことが見えます。
| 都道府県 | 薬剤師 | 医師 | 看護師 | 薬剤師の下振れ |
|---|---|---|---|---|
| 和歌山県 | 79 | 121 | 97 | -30 |
| 佐賀県 | 80 | 105 | 112 | -28 |
| 青森県 | 77 | 86 | 101 | -17 |
| 鳥取県 | 90 | 90 | 122 | -16 |
| 秋田県 | 71 | 74 | 99 | -15 |
全国=100。「薬剤師の下振れ」は、薬剤師の指数が医師・看護師の平均からどれだけ低いかです。
たとえば和歌山県は医師121・看護師97に対して薬剤師79。医師はむしろ全国より多く、薬剤師だけが追いついていません。 こういう県では、地域医療全体の底上げではなく薬剤師に固有の確保策が要ります。 逆に3職種そろって低い県では、薬剤師だけに手を打っても構造は変わりません。
指数の分母は200床以上の病院の病床数で、加算の届出率と同じ母集団です。 常勤の実人数であり、常勤換算ではありません。
外来でがん治療を受ける人は、地域の薬局とつながっているか
入院せずに通院で抗がん剤治療を受ける人が増えています。その体制が外来腫瘍化学療法診療料で、全国1,986病院が届け出ています。
このとき、病院が治療計画(レジメン)を地域の薬局と共有し、薬局側でも副作用を確認できるようにする体制が連携充実加算です。届け出ているのは1,003病院=50.5%。外来でがん化学療法を行う病院の、およそ半分にとどまります。
そして50の二次医療圏では、外来化学療法を行う病院はあるのに、 薬局と連携する体制を届け出た病院が1つもありません。その地域で治療を受ける人は、処方元と薬局のあいだで情報が渡らないまま薬を受け取ることになります。
| 都道府県 | 外来化学療法 | 薬局と連携 | 連携率 |
|---|---|---|---|
| 愛知県 | 73 | 53 | 72.6% |
| 富山県 | 22 | 15 | 68.2% |
| 京都府 | 46 | 31 | 67.4% |
| ── | |||
| 佐賀県 | 16 | 3 | 18.8% |
| 山梨県 | 15 | 3 | 20% |
| 徳島県 | 19 | 6 | 31.6% |
| 宮崎県 | 25 | 8 | 32% |
| 大分県 | 33 | 11 | 33.3% |
外来化学療法の届出が15病院以上の県のみ。病床規模では絞っていません(外来化学療法は200床未満の病院も担うため)。
47都道府県
列名を押すと並べ替わります。初期は加算1の届出率の高い順。
| 都道府県 | 200床以上 | 加算1の届出率 | 加算1・2・3 | 100床あたり薬剤師 | 薬剤師の下振れ | がん薬局連携 | 薬剤業務向上加算 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 和歌山県 | 15 | 46.7% 7/15 | 73.3% | 4.66 | -30 | 59.1%13/22 | 1 |
| 石川県 | 29 | 41.4% 12/29 | 48.3% | 5.41 | -1 | 46.4%13/28 | 2 |
| 京都府 | 50 | 40% 20/50 | 58% | 5.12 | -12 | 67.4%31/46 | 2 |
| 岩手県 | 25 | 40% 10/25 | 48% | 5.39 | 5 | 54.5%12/22 | 0 |
| 滋賀県 | 23 | 39.1% 9/23 | 60.9% | 6 | -11 | 56%14/25 | 0 |
| 岐阜県 | 32 | 37.5% 12/32 | 59.4% | 6.06 | 2 | 54.8%17/31 | 2 |
| 長野県 | 36 | 36.1% 13/36 | 63.9% | 5.96 | 1 | 58.3%21/36 | 1 |
| 大阪府 | 171 | 35.7% 61/171 | 57.3% | 6.15 | 6 | 58.2%78/134 | 6 |
| 東京都 | 190 | 35.3% 67/190 | 59.5% | 7.45 | -4 | 55.1%87/158 | 5 |
| 埼玉県 | 99 | 33.3% 33/99 | 50.5% | 6.45 | 14 | 51.1%46/90 | 0 |
| 神奈川県 | 137 | 32.8% 45/137 | 51.8% | 6.42 | -3 | 61.9%60/97 | 4 |
| 群馬県 | 37 | 32.4% 12/37 | 43.2% | 5.46 | 0 | 45.2%14/31 | 0 |
| 愛知県 | 102 | 31.4% 32/102 | 52.9% | 6.53 | 9 | 72.6%53/73 | 4 |
| 岡山県 | 35 | 31.4% 11/35 | 54.3% | 7.19 | 5 | 35.1%13/37 | 4 |
| 兵庫県 | 93 | 30.1% 28/93 | 52.7% | 6.4 | -2 | 52.3%45/86 | 3 |
| 広島県 | 57 | 29.8% 17/57 | 47.4% | 6.02 | 5 | 40.8%20/49 | 1 |
| 千葉県 | 104 | 28.8% 30/104 | 51% | 6.71 | 20 | 48.8%40/82 | 3 |
| 島根県 | 18 | 27.8% 5/18 | 50% | 5.51 | -5 | 35%7/20 | 1 |
| 奈良県 | 27 | 22.2% 6/27 | 51.9% | 6.21 | -5 | 48.1%13/27 | 3 |
| 熊本県 | 46 | 21.7% 10/46 | 45.7% | 4.99 | 0 | 53.3%16/30 | 2 |
| 愛媛県 | 29 | 20.7% 6/29 | 31% | 5.05 | -8 | 34.6%9/26 | 1 |
| 静岡県 | 59 | 20.3% 12/59 | 42.4% | 5.65 | -3 | 42.9%21/49 | 4 |
| 茨城県 | 50 | 20% 10/50 | 46% | 6.49 | 0 | 45.5%20/44 | 1 |
| 富山県 | 17 | 17.6% 3/17 | 58.8% | 5.54 | -11 | 68.2%15/22 | 0 |
| 宮城県 | 40 | 17.5% 7/40 | 47.5% | 6.44 | 4 | 62.5%20/32 | 2 |
| 大分県 | 23 | 17.4% 4/23 | 43.5% | 5.63 | -5 | 33.3%11/33 | 2 |
| 福島県 | 36 | 16.7% 6/36 | 30.6% | 5.6 | -4 | 47.1%16/34 | 1 |
| 北海道 | 128 | 16.4% 21/128 | 35.2% | 4.81 | 4 | 46.5%53/114 | 1 |
| 鹿児島県 | 37 | 16.2% 6/37 | 37.8% | 5.4 | 1 | 35.6%16/45 | 0 |
| 福岡県 | 136 | 16.2% 22/136 | 37.5% | 5.37 | -6 | 45.7%43/94 | 5 |
| 山形県 | 25 | 16% 4/25 | 32% | 4.56 | -7 | 83.3%10/12 | 0 |
| 新潟県 | 45 | 15.6% 7/45 | 46.7% | 4.62 | -3 | 45.9%17/37 | 0 |
| 福井県 | 13 | 15.4% 2/13 | 30.8% | 5.28 | -12 | 37.5%6/16 | 0 |
| 香川県 | 20 | 15% 3/20 | 40% | 5.14 | -11 | 52.4%11/21 | 0 |
| 沖縄県 | 42 | 14.3% 6/42 | 31% | 6.11 | 0 | 39.1%9/23 | 1 |
| 徳島県 | 21 | 14.3% 3/21 | 33.3% | 6.47 | 4 | 31.6%6/19 | 0 |
| 栃木県 | 28 | 14.3% 4/28 | 46.4% | 7.39 | 7 | 56.5%13/23 | 0 |
| 青森県 | 25 | 12% 3/25 | 36% | 4.56 | -17 | 47.6%10/21 | 0 |
| 高知県 | 18 | 11.1% 2/18 | 27.8% | 4.63 | -14 | 52.9%9/17 | 1 |
| 長崎県 | 38 | 10.5% 4/38 | 31.6% | 3.74 | -12 | 41.9%13/31 | 1 |
| 三重県 | 40 | 10% 4/40 | 47.5% | 5.55 | 2 | 50%14/28 | 1 |
| 秋田県 | 21 | 9.5% 2/21 | 47.6% | 4.2 | -15 | 56%14/25 | 0 |
| 山口県 | 46 | 8.7% 4/46 | 26.1% | 4.47 | 5 | 44.8%13/29 | 1 |
| 鳥取県 | 13 | 7.7% 1/13 | 38.5% | 5.32 | -16 | 63.6%7/11 | 0 |
| 宮崎県 | 28 | 7.1% 2/28 | 25% | 5.42 | -9 | 32%8/25 | 1 |
| 佐賀県 | 17 | 5.9% 1/17 | 35.3% | 4.77 | -28 | 18.8%3/16 | 0 |
| 山梨県 | 17 | 0% 0/17 | 29.4% | 5.9 | -7 | 20%3/15 | 1 |
薬剤業務向上加算は、免許取得直後の薬剤師への研修体制に加えて、都道府県と協力して自院の薬剤師を、薬剤師が不足している地域の医療機関へ出向させる体制を評価する加算です。出向先は都道府県の薬剤師確保を担当する部署と協議して選ぶことが施設基準に定められ、 不足地域の判断は薬剤師偏在指標に基づきます。全国で68病院。県によっては0件です。
二次医療圏まで下ろすと、県内の濃淡が出ます
200床以上の病院がありながら病棟薬剤業務実施加算がどれも無い二次医療圏が、全国に50あります (310圏中)。どの圏域かは県ごとに違い、県内でも偏っています。 病院側の医療圏ごとの内訳——どの圏域に届出が無いか、圏域ごとの薬剤師密度まで——は、 都道府県別レポートに載せています。
レポートの本体は薬局の供給持久度で、そこに病院の章が加わる形です。 同じ県を薬局の側から見ると、病院とは別の濃淡が出ます。
出典と、この数字で言えないこと
- 届出の状況:厚生労働省 各地方厚生局「届出受理医療機関名簿(医科)」 令和8年8月1日現在(関東信越・東北ブロックは令和8年7月1日現在)。 病院=病床20以上の医科医療機関。
- 薬剤師の数:厚生労働省「令和7年度 病床機能報告」施設票、 令和7年7月1日時点の常勤の実人数(常勤換算ではありません)。全国6,877病院・47,628人。
- この2つは基準日が1年ずれています。並べて見るときはその前提で。
- 病床機能報告は全病院を覆っていません。報告対象は一般病床または療養病床を 持つ病院で、精神病床だけの病院は載りません。薬剤師数の分母はこの母集団です。
- 届出があること=実際に算定していること、ではありません。名簿は受理の記録で、算定実績とは別です。
- 病棟薬剤業務実施加算の1・2・3は対象が異なります。加算1は全ての病棟に専任の薬剤師を配置し病棟ごとに週20時間相当を求めるもの、 加算2は一般病棟等を対象とするもの、加算3は救命救急入院料・特定集中治療室管理料等を 算定する治療室を対象とするものです。このページで主に見ているのは加算1です。
- 分母を200床以上に揃えているのは、加算1が全病棟への薬剤師配置を要件とするためです。 20床の病院と600床の病院を同じ分母に入れると、届出率が病床規模の分布を映すだけになります。
- 個別の病院名は出していません。医療機関ごとの数字を並べ替えたものは、 無料・有料を問わず作りません。
無料の道具箱
登録不要・無料。どれも同じ公的データから作っていて、横に繋がっています。