CrossHealth / 薬局アクセスレポート
歩いて行ける薬局が1軒しかない人は、県内に107万人。
その“1軒”にあたる薬局は、877軒※。
なぜ数えるのか
「ここがなくなると遠くなっちゃって困るのよ」——閉局が心配されている薬局で、患者さんから聞いた声です。米国では、薬局が閉まったあと、残された人の服薬が続かなくなることが報告されています(処方薬を切らさず手元に持っていた日数の割合が、閉局のなかった人と比べて閉局後3か月で約6ポイント低くなり、その差が12か月続いた)。私たちが確かめた範囲では、日本で薬局が閉まったときに、服薬がどれくらい続かなくなるかは、まだ調べられていません。車を使えない人にとって、歩いて行ける1軒は、便利さではなく薬を受け取り続けるための足場です。制度の上でも、健康の相談や自宅への訪問を担う薬局が位置づけられています(健康サポート薬局・地域連携薬局/医薬品医療機器等法 第6条の2第1項第4号・同施行規則 第1条の2第2項第5号)。どこにその1軒があるかを知っておけば、閉まる前に、別の届け方を用意できます。
文・木内翔太
いま(2025年)── 歩いて届くか徒歩10分で届かない人は9.5%。医療圏では0.8%から25.2%まで開く
県全体は全国で3番目に小さい。開きの両端は川崎南部と県西である。
10%以下10〜20%20〜40%40〜60%60%超
色=徒歩10分では届かない人の割合。医療圏をクリックすると、その圏のページへ進む。
番号=地図の医療圏・%=徒歩10分では届かない人
いま(2025年)── 歩いて行ける唯一の薬局誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局は、877軒(4町を除く)。県西では45.2%にあたる
徒歩10分以内に薬局が1軒しかない人は107万人(住民の11.7%・全国13.8%)。その唯一の薬局は県内の薬局の20.9%にあたる(4町を除く。全国は35.2%)。
この数は、徒歩10分という1つの物差しで見た場合です。どの薬局も、在宅の訪問・健康の相談・夜間や休日の対応などで、地域を支えています。
その圏の薬局のうち、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局の割合(色は地図と同じ)。軒数は補足の表に。※印の圏は、町ごとの値を出していない市区町村(薬局が少ないなど、数字が1つの店を指してしまう町)を除いた合計で、割合の分母(その圏の薬局の数)からも除いています:県西(中井町・山北町・箱根町・真鶴町)。
2040年 ── 処方せん2040年の処方せんは、いまの分業率のままで1.0%増える
県内の院外処方せんは2025年の6,355万枚から2040年に6,420万枚へ、1.0%増える(9圏のうち5圏で増える)。院外処方率(神奈川90.1%・全国80.7%)は9圏すべてで全国の中央値81.2%以上にあり、分業率の仮定を当てる圏はない。
では、どうすればよいか誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局が3割を超える市区町村が、19ある
県全体の平均ではなく、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局が3割を超える19市区町村が、計画の中で数える対象になりえます(薬局が10軒以上ある51市区町村のうち)。その市区町村で、備える手立て(承継の相談先・自宅への訪問・オンライン服薬指導と配送)が使える状態にあるかを、確かめておくことができます。
南足柄市 78.6%・葉山町 72.7%・綾瀬市 57.1%・二宮町 56.2%・大磯町 56.2%・三浦市 55.0%・開成町 53.8%・愛川町 52.9%・湯河原町 50.0%・寒川町 47.4%・伊勢原市 38.0%・横浜市泉区 35.4%・小田原市 34.9%・厚木市 34.6%・鎌倉市 33.3%・秦野市 32.5%・横浜市旭区 31.8%・横須賀市 31.0%・海老名市 30.4%(その市区町村の薬局のうち、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局の割合)
どちらの薬局名簿(保険薬局名簿・施設基準届出受理医療機関名簿)にも薬局が載っていない村:清川村(1村・住民 計2,877人)
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市区町村ごとの1枚(A4)
薬局の数と、歩いて届く範囲を、A4の1枚にまとめました。出典と作成時点を入れてあるので、そのまま会議やご相談の資料にお使いいただけます。受け取る地域をお選びください(58地域)。
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補足数字の中身と数え方
9つの医療圏の数字(表)
| 医療圏 | 薬局数 | 徒歩10分では 届かない人 | 歩いて行ける 唯一の薬局 | 処方せん 2025→2040 (分業率そのまま) | 同 (分業率の仮定) | 院外 処方率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 川崎南部 → | 320 | 0.8% | 19軒(5.9%) | +10.6% | +10.6%※ | 92.7% |
| 川崎北部 → | 337 | 3.7% | 48軒(14.2%) | +8.5% | +8.5%※ | 93.5% |
| 横浜 → | 1,681 | 6.8% | 290軒(17.3%) | +1.5% | +1.5%※ | 89.8% |
| 湘南東部 → | 354 | 8.8% | 72軒(20.3%) | +2.9% | +2.9%※ | 91.0% |
| 相模原 → | 339 | 10.1% | 56軒(16.5%) | +0.2% | +0.2%※ | 89.6% |
| 県央 → | 367 | 14.8% | 106軒(28.9%) | −0.5% | −0.5%※ | 85.2% |
| 湘南西部 → | 296 | 16.8% | 100軒(33.8%) | −4.5% | −4.5%※ | 89.1% |
| 横須賀・三浦 → | 342 | 19.9% | 116軒(33.9%) | −9.6% | −9.6%※ | 92.3% |
| 県西 → | 171 | 25.2% | 70軒(45.2%) (4町を除く) | −8.8% | −8.8%※ | 86.2% |
徒歩10分では届かない人の割合が小さい順。「誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局」の割合は、その圏の薬局数に対する割合。処方せんの2列は2040年の推計で、いま(2025年)の数字とは時点が違います。※は院外処方率がすでに全国の中央値(81.2%)以上で、分業率の仮定を当てていない圏です(左の列と同じ値)。
閉局 ── 廃止届と、本当に閉まった薬局
2025年6月から2026年5月までの12か月に、県内で出された薬局の廃止届は246件でした。そのうち176件は承継か移転で、営業は続いています。本当に閉まったのは70軒(県内の薬局の1.66%)です。
期間は、厚生局の名簿がそろっている直近の月から自動で選んでいます。
神奈川県保健医療計画のなかの薬剤師
神奈川県保健医療計画(第8次・令和6〜11年度)の本文から、薬剤師・薬局に関する記述を抜き出しました。計画は、薬剤師偏在指標・薬剤師少数区域・薬局の偏在・薬剤師確保策・二次医療圏ごとの薬剤師について書いています。
・薬剤師偏在指標(薬局と病院)()では、業態別に見ると、薬局薬剤師が薬剤師多数県、病院薬 剤師が薬剤師少数県となっています。
引用は計画本文からそのまま抜き出したものです(要約・言い換えはしていません)。計画の改定により記述は変わります。
機能の届出(厚生局の名簿)
地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」(令和8年7月1日版)に載っている県内の保険薬局は4,200軒です。届出の割合は、地域支援・医薬品供給対応体制加算 90.8%(全国90.8%)、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1・推定)60.0%(全国59.4%)、在宅薬学総合体制加算 46.6%(全国40.9%)、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定)85.5%(全国84.2%)です。県の順位は付けていません(名簿の版や旧い届出名の扱いで入れ替わるため)。「推定」の2項目は、令和8年度改定で届出の名称が変わったため、後継と判断した区分で数えています。届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、提供した量ではありません。分母が名簿の薬局数なので、このページの他の薬局数(4,207軒)とは一致しません。
2045年の薬局の店数を出していない理由
将来の薬局の店数は、閉じる側(廃止届)と開く側(新規指定)の数え方がそろわないため、推計を出していません。そのまま計算すると全国で薬局が2割以上増える結果になり、実態と合わないからです。
限界と数え方・地図の使い方
- 出所:厚生局・GMIS・NDBオープンデータ・社人研の将来推計人口など。検算と不確実性は方法論のページに。
- 言えること:地域単位(県・二次医療圏)で、住民が歩いて薬局に行けるか。
- 言えないこと:個々の薬局の見通し・個店の順位・出店や撤退の判断は扱いません。
- 徒歩分:250mメッシュ(2025年推計人口)ごとに道路網(OSRM)で計算。県外の薬局も歩いて届けば数えます。
- 歩いて行ける薬局が1軒しかない人:徒歩10分以内にある薬局がちょうど1軒の人。その1軒が閉まると、歩いて10分では届かなくなる。
- 薬局の数:厚生局 保険薬局名簿(2026年7月1日現在・近畿厚生局の管内=福井・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の7府県は6月1日現在)。調剤を行う薬局のみ。
- 人口は2020年国勢調査をもとにした推計(社人研2023年推計)で、2021年以降の人口の動きは反映していません。薬局は2026年7月の名簿です。
- なぜ10分か:国の都市評価は徒歩圏を半径800mとしています。これを不動産広告の換算(道路距離80mで1分)に当てると10分。CrossHealthはこの10分を目安に用いています(国土交通省「都市構造の評価に関するハンドブック(改定版)」令和8年1月 p.16・p.21/不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第15条第9号)。道路網の徒歩10分は、直線でおよそ600m相当で、800mより狭い範囲です(大阪・茨城・鳥取の72,834メッシュで一致率95.4%)。
- なぜ数えるのか(出典):Qato DM, et al. JAMA Netw Open. 2019;2(4):e192606(米国の閉局と服薬の継続)/医薬品医療機器等法 第6条の2第1項第4号・同施行規則 第1条の2第2項第5号(薬局の役割)。
- 地区の物差し:医師には、国が地区ごとに数える「無医地区」があります。薬局について国が公表しているのは、私たちが確かめた範囲で、町村に1軒も無いかどうか(無薬局町村)までです。
- 誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局:徒歩10分以内に薬局が1軒しかない人がいて、その人にとってのその1軒。所在地で県内にあるものを数えます(県外の9軒は除外)。
- ※県の「誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局」の数と割合は、数字が特定の店を指すことになる市区町村を除いて数えています(全国の値は除いていません)。
- 処方せん:NDBの医療圏別実績に、年齢ごとの受療率を固定して将来人口を当てた推計。分業率の仮定:院外処方率(処方箋料の算定回数を、処方料と処方箋料の合計で割った値・NDBオープンデータ)が全国の医療圏の中央値(81.2%)より低い圏は、2040年までにその値まで上がるとしました。
- 閉局の数え方:閉局の数を出すのは、厚生局の廃止名簿の号から6か月以上の期間が決まり、その期間の廃止届を集計に使う版で数え直せる(再現率0.85以上)38都道府県です。全国では、2025年4月から2026年6月に出された薬局の廃止届4,175件のうち62.3%が承継か移転でした(47都道府県)。届が集まっている範囲で計算しています。
- 医療圏は国土数値情報A38由来のマスタ(第8次医療計画準拠)。
- 人の割合(歩いて行ける薬局が1軒しかない人・徒歩10分では届かない人)は住民(2025年推計人口)に対する割合、誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局の割合は県内の薬局に対する割合です。
- 全国の値(歩いて行ける薬局が1軒しかない人=住民の13.8%・誰かにとって、歩いて行ける唯一の薬局=薬局の35.2%・院外処方率80.7%)は、47都道府県を同じ名簿・同じ物差しで数えた値です(1枚レポートと同じ計算)。全国での位置は、47都道府県を同じ物差し(徒歩10分では届かない人の割合)で比べたものです。
- 地図:県 → 医療圏 → 市区町村の3段階で下りられます。医療圏ページの地図は、まだ以前の物差し(1軒あたり処方せんの圏内での動き)です。
- 市区町村ごとのページの例(大阪市淀川区)
- 病院薬剤師マップ ── この県の病院に、病棟の薬剤師体制はあるか(無料)
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