CrossHealth / 薬局持久度レポート
薬局が1軒もない自治体が、12ある
奈良県5つの二次医療圏の薬局を、供給・高齢化・需要で見える化。地図の医療圏をクリックすると、市町村まで下りたレポートへ進めます。
奈良県の調剤薬局は607軒。高齢化で処方せんが増えると言われますが、奈良県の65歳以上人口は今後20年で+0.7%——県全体でもほぼ横ばいです。さらに39市町村のうち12には薬局が1軒もなく、その合計面積は県土の56.3%にのぼります。
地図 ── クリックで深掘り薬局1軒あたり処方せんの、医療圏ごとの将来
色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化。薬局の数がいまのままだと仮定して、高齢化で処方せんがどう動くかを示しています。いちばん厳しいのが南和医療圏(-26.8%)、いちばん伸びるのが中和医療圏(+6.9%)で、その差は33.7ポイント。医療圏をクリックすると、その中の市町村差まで下りられます。
地理 ── 人口あたりではなく、距離が薄い県土の63.6%を占める南和医療圏に、薬局は29軒
奈良県は面積3,692km²のうち、南和医療圏だけで63.6%を占めます。そこにある薬局は29軒(県内の4.8%)。100km²あたりに直すと1.2軒で、いちばん密な西和医療圏(94.4軒)の78.7分の1です。県平均は16.4軒。ただし人口あたりで見ると南和は薄くありません。薬局1軒あたりの人口は南和が1,973人、西和が2,066人で、南和のほうがむしろ少ないくらいです。つまり奈良県で薄いのは「1人あたりの軒数」ではなく「距離」です。薬局が1軒もない12自治体はすべて村で、奈良県にある12の村すべてにあたります。そこに17,830人(県人口の1.4%)が暮らし、うち9,083人が65歳以上です。
徒歩アクセス ── 250mメッシュで測る薬局が1軒もない11村は、30分歩いても薬局に着きません
250mメッシュの人口(1,271,988人ぶん)から、いちばん近い薬局までの直線距離を測りました。市町村の境を越えて、実際にいちばん近い1軒を探しています(県境を越えて大阪・京都・三重・和歌山の薬局も候補にした版も計算しましたが、変わったのは奈良市の0.3ポイントだけでした)。奈良県で徒歩10分以内に薬局がある人は82.6%(千葉県は同じ計算で87.3%)。20分以内なら94.6%、30分以内でも96.8%で、40,367人は30分を超えます。医療圏で見ると西和の91.6%から南和の42.3%まで開きます。そして薬局が1軒もない12村では、10分以内に薬局がある人は0.4%、20分でも16.0%。うち11村は30分歩いても0%——つまり村内のどこにいても、薬局まで2.4km以上あります。いちばん遠いのは十津川村で、住民の半分が8.7時間ぶんの距離に住んでいます。もちろん実際に歩く人はいません。ここでの「徒歩◯分」は直線距離を分速80mで割った距離のものさしで、クルマやバスの前提がどれだけ強いかを示す数字として読んでください。
250m実メッシュ人口 × 県内の調剤薬局607店。直線距離÷分速80m。道路網・標高・公共交通は考慮していません。
人口動態 ── 需要の源高齢者も、もう増えない(+0.7%)
奈良県全体では、総人口は127万→102万人(-20.2%)と減ります。ふつう高齢化が進む県では「人は減るが65歳以上は増える」ので需要は落ちませんが、奈良県の65歳以上は43万→43万人(+0.7%)とほぼ横ばいで、2040年をピークに減り始めます。高齢化率は33.5%→42.3%へ。医療圏に割ると南和の-26.8%から中和の+6.9%まで33.7ポイント開き、南和・東和の2医療圏は65歳以上人口がすでに2025年でピークを打っています(ここに薬局115軒=県内の18.9%)。
承継 ── 消えた薬局と、続いた薬局廃止届27件のうち、そのまま消えたのは9件でした
直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に奈良県で出された薬局の廃止届は27件。ただしこのうち18件は新しい機関コードが記載されており、移転や承継で事業が続いた=その場所から薬局が消えてはいません。そのまま消えたのは9軒(薬局607軒の1.48%)でした。引き継がれなかった割合は県全体で33.3%。薬局数の多い3医療圏で見ると、中和は廃止届10件のうち9件が移転・承継で、引き継がれなかったのは10.0%にとどまります。いっぽう西和は50.0%でした。なお、閉局そのものが少ない県です。東和・南和医療圏は12ヶ月の廃止届が合わせて1件しかなく、率で語れる件数ではないため本文では扱いません。
機能の届出 ── 需要が減る地域ほど、薄いかかりつけの届出率が低いのは、需要が減っていく2つの医療圏
かかりつけ薬剤師指導料の届出率を医療圏ごとに並べると、南和の58.3%から西和の76.0%まで17.7ポイント開きます。下位2圏(南和・東和)は、処方せん需要が減っていく2圏とそのまま同じでした。在宅患者訪問薬剤管理指導の届出率も東和の48.7%が県内最低、西和の64.7%が最高です。ただし奈良県は医療圏が5つしかなく、兵庫県で見られたような順位の完全一致は起きていません(在宅は1/5圏の一致)。届出は自己申告で、届出=実際の提供ではありません。
ランキング ── 圏域差処方せんが増える医療圏・減る医療圏
南和(-26.8%)から中和(+6.9%)まで。薬局の数がいまのままなら、1軒あたりの処方せんはこう動きます。現在の1軒あたり処方せんは南和の7,991枚から中和の14,131枚まで1.77倍の開きがあります。同じ計算をした大阪府は1.15倍、千葉県1.36倍、兵庫県1.38倍でしたから、奈良県は圏域による濃淡がいちばん大きい県ということになります。いちばん薄い南和が、これからさらに-26.8%——薄いところがさらに薄くなる並びです。ただし南和の枚数はNDBのマスキング(件数の少ない区分は非公表)で小さめに出ている可能性があり、注記のとおり割り引いてお読みください。実際には開局・閉局で店数も動きますが、その将来推計は現在再学習中です(下の注記)。
くわしい数字5医療圏データ一覧
| 地域(医療圏) | 薬局 | 1軒あたり処方せん 2025 → 2045(枚/年) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 奈良 | 175 | 13,377 → 14,183 | +6.0% |
| 西和 | 159 | 13,350 → 13,468 | +0.9% |
| 中和 | 158 | 14,131 → 15,106 | +6.9% |
| 東和 | 86 | 11,884 → 10,871 | -8.5% |
| 南和 | 29 | 7,991 → 5,846 | -26.8% |
※処方せんはNDBの医療圏別実績(2023年)に、将来推計人口の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。薬局数は2025年時点で固定しています。閉局は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)の集計で、移転・承継を除いています。個店のランキングは作りません。
いま出していない数字供給の将来推計は、再学習中です
このページでは、2045年の薬局店数の推計と、医療圏を「都市型(競争淘汰)/郊外型(需要減)」に分ける分類を外しています。これらは開局・閉局を予測する統計モデルから出していましたが、閉局の数え方を「移転・承継を除いた本当の閉局」に改めたこと、医療圏の対応表を国土数値情報由来のマスタに統一したこと(奈良県では御所市・生駒市・広陵町の3市町の所属が変わりました)の2点により、モデルを学習しなおす必要が生じました。できあがり次第このページに戻します。それまでは、確定している需要側の数字(将来推計人口とNDB処方せん実績)と、現在の供給の事実(薬局数・直近12ヶ月の閉局)だけでお伝えします。数字を急いで出すより、間違っていた数字を下げるほうを選びました。
この地図の使い方(3段階のドリルダウン)
- 奈良県(このページ・Lv1)=5つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
- 二次医療圏(Lv2)=圏内の市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
- 市町村(Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。
このレポートの範囲と、正直な限界
- 【このレポートで言えること】地域単位(都道府県・二次医療圏)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
- 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
- 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類はこのページから外しています。閉局の定義変更(移転・承継を除外)と、医療圏マスタへの統一(奈良県では御所市・生駒市・広陵町の3市町が変更)により、供給の統計モデルを再学習する必要が生じたためです。再学習が済み次第、戻します。
- 【処方せんの推計方法】NDBオープンデータの医療圏別・院外処方せん実績(2023年・県全体で年間7,949,900枚)に、その医療圏の65歳以上人口の伸びを掛けた推計です。医療圏より細かい単位では公表されていません。
- 【処方せん実績の性質】NDBの院外処方せん枚数は「処方せん料の算定回数」=処方せんを発行した医療機関の所在する医療圏で数えられます。薬局がどこで調剤したかではありません。また件数の少ない区分はマスキング(非公表)されるため、人口の少ない南和医療圏では実際より小さく出ている可能性があります。南和の1軒あたり7,991枚という値は、その分を割り引いてお読みください。
- 【薬局数は2025年で固定】1軒あたり処方せんの将来値は、薬局の数がいまのまま変わらないと置いた場合の数字です。開局・閉局による店数の変化は含みません。
- 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
- 【閉局の数え方と集計期間】近畿厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています。奈良県分の名簿は2025年7月号からの収録のため、暦年ではなく完全な12ヶ月がそろう2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)を集計期間としました(この期間に奈良県の全27件が収まります)。この期間の廃止届は27件で、うち18件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだと読めます。そのまま消えたのは9件です。大阪府(暦年2025・78件)や千葉県(暦年2025・42件)と件数を直接並べるときは、集計期間が違う点にご注意ください。
- 【閉局の件数が少ないこと】奈良県は12ヶ月の真の閉局が9件と少なく、医療圏ごとの閉局率・承継率は1件動くだけで大きく振れます。廃止届が1件しかない東和・南和医療圏については、率を本文の主張に使っていません。
- 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません(県内94店を除外)。位置は届出上の市町村コード、またはそれが無い場合は国土数値情報の市町村境界への点内判定で割り当てています。
- 【薬局0軒の自治体】薬局が1軒もない12自治体(十津川村・上北山村・川上村・天川村・野迫川村・下北山村・東吉野村・御杖村・山添村・曽爾村・黒滝村・明日香村)は、GMIS(薬局機能情報提供制度)と近畿厚生局の保険薬局一覧(2026年6月現在)の両方で0軒であることを確認しています。「近くに薬局が無い」ことと「薬が手に入らない」ことは同じではありません。院内処方・配置薬・近隣自治体の薬局・オンライン服薬指導などは、このデータでは見えていません。
- 【徒歩アクセスの測り方】250m実メッシュの人口(1,271,988人ぶん)から最寄りの調剤薬局までの直線距離を測り、分速80m(時速4.8km)で分に換算したものです。道路網・標高・公共交通は考慮していません。山間部では実際に歩くことは想定されておらず、クルマ・バス・院内処方・配置薬・オンライン服薬指導などが前提になっています。「徒歩30分圏に薬局が無い」ことは「薬が手に入らない」ことを意味しません。市町村の境をまたいだ最寄り薬局を認めています(METHODS §4)。県境を越えて大阪・京都・三重・和歌山の薬局も候補にした場合との差は、奈良市の90.1%→90.4%だけで、他の38市町村では変わりませんでした。
- 【面積】国土数値情報の市区町村境界(2024年1月1日)から計算した値です(県計3,692km²。公表値3,690.94km²と0.1%以内で一致)。
- 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づき、申告データのある553店を分母にしています(県内全607店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
- 【医療圏の区分】国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致・第8次医療計画準拠)に従っています。奈良県は奈良・東和・西和・中和・南和の5圏で、「奈良医療圏」は奈良市1市のみで構成されます。
- 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
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