慢性腎臓病の早期発見へ、日本医療政策機構が「確かな政策実装」を提言
日本医療政策機構が、慢性腎臓病、いわゆるCKDの早期発見と早期介入に向けた政策提言を公表しました。
慢性腎臓病は自覚症状に乏しいため、適切な早期介入につなげることが公衆衛生上の大きな課題となっています。
この提言は、健診で腎機能の異常を指摘された人を、確実な受療と継続的な管理に結びつけるための方向性を示したものです。
自治体や職域の視点を中心に、データ整備や健診の最適化、医療連携など、具体的な課題解決に向けたアプローチが整理されています。
本提言は、CKDの早期発見・早期介入を確実な政策実装へとつなげる観点から、健診で腎機能の異常を指摘された人を確実な受療と継続的な管理に結びつけるための課題と方向性を、自治体・職域の視点を中心に整理したものである。
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 4)
日本は健診制度が充実しており、幅広い世代に対して年1回の尿検査が行われるなど、充実した制度があります。
さらに、労働安全衛生法に基づく一般健康診断において、40歳以上の労働者を対象に、健診項目に血清クレアチニンを追加する方針が示されました。
これにより、従来の尿検査に加えて、腎機能低下の早期発見体制が強化されることとなります。
しかし、健診で異常を指摘されても、実際に医療機関を受診する割合は極めて低いのが現状です。
このため、健診から医療への円滑な移行を促すための支援や環境整備が、これまで以上に重要となっています。
2025年12月に厚生労働省が公表した「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」報告書では、40歳以上の労働者を対象に、一般健康診断の検査項目に血清クレアチニンを追加するとの結論が示された。
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 5)
1つ目の重要な論点は、リアルワールドデータを含むデータの収集と活用体制の整備です。
現在は、健診データやレセプトデータが分断されて管理されており、効果的な分析が困難な構造になっています。
提言では、保険者が保有するデータと、独自の保健指導などの任意事業データを統合できる仕組みの構築を求めています。
また、転職や退職によって保険者が変わることで、健診データの連携が途絶える課題も指摘されています。
これを解消するため、保険者間で健診・医療データを共有できる共通基盤の構築と、連携強化が不可欠であるとされています。
保険者が保有する健診・レセプトデータと任意事業データを統合・活用できる仕組みを構築すべきである
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 4)
2つ目の重要な論点は、受診勧奨基準のばらつきの解消と、優先度に応じた対象者の抽出です。
現在、健診でCKDを疑う所見があった場合の受診勧奨判定基準は、学会や省庁によって異なっています。
提言では、このばらつきを分野横断的な議論を通じて統一することを求めています。
さらに、単年度の検査値だけでなく、腎機能を示す推算糸球体濾過量、いわゆるeGFRの急激な低下といった経年変化を捉える必要があります。
経年変化を踏まえ、より早急に受療が必要な対象者を階層化し、優先度を設定して受診勧奨を行う仕組みへの転換が提言されています。
受診勧奨基準のばらつきを分野横断的な議論を通じて統一すべきである
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 4)
3つ目の重要な論点は、保険者と医療機関の連携強化、そして医療提供の標準化です。
健診で異常を指摘された人が受診した際、医師から十分な説明が得られず、受診の意義を実感できないケースがあります。
また、治療が漫然と続けられ、追加の検査や治療変更が行われない、いわゆるクリニカル・イナーシャも課題となっています。
提言では、健診後の受療をシームレスにフォローアップするため、自治体や職域と医師会などとの連携強化を求めています。
さらに、ガイドラインの策定などを通じて、専門医以外の医師も含めた適切な対応の標準化を進めるべきだとしています。
健診後の受療をシームレスにフォローアップできるよう、自治体・職域と医師間の連携を強化すべきである
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 4)
今後のスケジュールや注視すべき点として、制度の実効性を高めるインセンティブ設計が挙げられます。
保険者努力支援制度や加算減算制度を、実施件数などの量的指標から、受療行動の変化などのアウトカムを評価する仕組みへと再設計することが求められています。
また、国による民間ヘルスケアサービス活用の指針策定も不可欠です。
慢性腎臓病対策を確実な政策実装へとつなげるため、産官学民の分野横断的な協働が今後ますます重要となります。
慢性腎臓病(CKD)対策においては、学校保健から職域・地域保健、プライマリケア、専門医療と様々なステークホルダーが密接に関係し、多くの慢性疾患と関連する領域であるからこそ、この縦割りの限界が顕著に表出している。
(HGPI_PolicyRecommendation_202607_Early-Detection-and-Early-Intervention-of-CKD_J.pdf, Page 17)
この記事はアーカイブです。無料会員登録で続きをお読みいただけます。
登録は無料・パスワード不要(メールに確認リンクが届きます)。登録済みの方はログイン