← 医療政策ウォッチャー 記事一覧

職域における労働者の健康保持増進をどう進めるか、第2回検討会で議論された具体的事例と論点整理

引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73505.html

引用元: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73505.html


厚生労働省は、令和8年6月1日に「第2回 事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」を開催しました。

この検討会は、労働者の健康保持増進に向けた効果的な取り組みや、今後の指針の在り方を検討するために設置されたものです。

当日は、健康保険組合や民間企業、労働衛生団体などから具体的な活動事例が報告されました。

それぞれの事例をもとに、今後の健康保持増進措置の位置付けや対象について、活発な意見交換が行われています。

会議は、終始、前向きで具体的な議論が交わされるトーンで進行しました。

令和8年6月1日(月)14:00~16:00

中央合同庁舎5号館 18 階専用第 23~24 会議室

議事次第

(第2回 議事次第.pdf, Page 1)

最初の主要な論点は、若年層や女性従業員を対象とした具体的なアプローチについてです。

関東ITソフトウェア健康保険組合からは、39歳以下の若年層を対象とした生活習慣病予防プログラムが報告されました。

このプログラムでは、健診データからリスク者を選定し、3ヶ月間で全12回の運動指導や食生活改善のアバイスを提供しています。

また、本田技研工業株式会社からは、トヨタ、日産、ホンダの3社が共同で行っている産業保健職の勉強会が紹介されました。

そこでは、個社の枠を超えて、女性の健康課題や更年期対策、メンタルヘルスといった共通のテーマについて学びを深めています。

女性の健康支援に向けては、2024年度から2025年度を「知る・理解する・体験する」ための基盤づくりの期間と位置付け、ロードマップに沿った活動が展開されています。

健診データから生活習慣病のリスク者を選定し、3ヶ⽉間の運動プログラムを提供しています。

(資料1 保健事業に関する取組み(関東IT健保様).pdf, Page 4)

目的:個社の枠を超えて、産業保健職としての仕事専門性の強化と成長支援を図る。“競争ではなく共創“

(資料3 トヨタ・日産・ホンダ 保健職の学びの場 ~他社交流を通じた知の探索・深化促進~(本田技研工業株式会社様).pdf, Page 2)

次に注目されたのが、中小企業における健康経営の具体的な実践事例です。

福島県会津若松市で工事用品の販売やレンタルを行う有限会社ワシオ商会は、従業員21名という規模ながら、非常に手厚い健康経営を行っています。

同社では、定期健康診断の際に、胃カメラや女性検診などのオプション検査を全額会社負担で実施しています。

さらに、要治療や要再検査と判定された従業員に対しては、医師に独自の意見書へ記入してもらい、会社へ提出することを義務付けています。

敷地内禁煙の徹底や、1品100円で購入できる置き型社食の導入など、従業員が自然と健康になれる環境づくりを工夫しているのが特徴です。

こうした事例を踏まえ、検討会では、経営資源の少ない中小企業が負担なく取り組めるよう、事業者と保険者の連携を強化することが重要であると整理されました。

定期健康診断時に、オプションのがん検診等(胃カメラ・便検査・女性検診・骨粗鬆症検査・付加健診等)を会社負担で毎年実施。

(資料2 健康経営の取り組み(有限会社ワシオ商会様).pdf, Page 4)

特に中小企業においては、経営資源が少ない中で、事業者と保険者の連携の強化が重要。事業者が負担なく取り組める環境づくりが必要。

(資料5 各論点に対する第1回の発言まとめ.pdf, Page 3)

3つ目の論点は、職域におけるがん検診の実績推移と、検診の精度管理、そして要精密検査者へのフォローアップについてです。

公益社団法人全国労働衛生団体連合会は、会員機関の実勢調査をもとに、がん検診の実施状況を報告しました。

令和6年度の職域がん検診の総受診者数は約1,830万人であり、前年に比べて2.8%増加しています。

一方で、胃がん検診については前年割れとなっており、検診種別によって動きに差が見られます。

さらに、がん検診で最も重要な「要精密検査」となった受診者へのフォローアップについて、健診機関が受診状況を把握することの難しさが課題として挙げられました。

検討会では、受診者に対して検診のメリットだけでなく、偽陽性や過剰診断などのデメリットも正しく説明する「がん教育」の必要性が議論されています。

年間の総受診者数は約1,830万人であった。

(資料4 全国労働衛生団体連合会からの報告(全国労働衛生団体連合会様).pdf, Page 3)

がん検診により、がんが存在しないのに陽性と判断されて不必要な検査を受ける場合(偽陽性に対して精密検査を受ける場合)や、寿命を全うするまでには症状を呈しないがんを診断し不必要な治療を受ける場合(過剰診断や過剰治療を受ける場合)等があることから、受診者ががん検診の不利益についても理解することが望まれる。

(参考資料1-1 職域におけるがん検診に関するマニュアル.pdf, Page 15)

今回の検討会では、職域における健康保持増進について、単に健診を勧めるだけでなく、その前段階の教育や事後フォローを含めた一連のプロセスが重要であることが示されました。

特に、業務起因性が必ずしも認められない疾病予防については、国や自治体が主体となって推進しつつ、事業者の主体的な取り組みを後押しする支援の在り方が求められています。

今後は、大企業だけでなく、中小企業や小規模事業場でも継続して取り組めるよう、地域や関係機関との連携体制づくりをさらに具体化していくことが期待されます。

次回の検討会でも、これらの論点を踏まえた指針の改訂や具体的な支援策についての議論が続けられる見通しです。

業務起因性が必ずしも認められない疾病予防については、国・自治体(ママ)が主体となって推進すべきであり、健康保持増進の取組は重要であるが、事業者の主体性に基づいて進めていくことが基本。一律的な取組を求めることについては慎重であるべき。事業者の自主的な取り組みの後押しとなるような支援を検討すべき。

(資料5 各論点に対する第1回の発言まとめ.pdf, Page 2)


← 記事一覧へ