血液製剤の適正使用に向けて大きな転換期、新ガイドラインの統合と在宅・災害時輸血の課題
厚生労働省の薬事審議会血液事業部会において、適正使用調査会が開催されました。
この調査会は、血液製剤の安全かつ適正な使用を推進するための具体的な方針を検討する場です。
今回の会議では、長年運用されてきた指針の廃止や、最新の実態調査に基づく新たな課題が多数報告されました。
全体として、医療環境の変化に迅速に対応するための具体的な対策が議論されています。
安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和 31 年法律第 160
号)において、血液製剤の適正な使用の推進が求められていることを踏まえ、血液
製剤の適正使用の推進方策に係る事項を調査審議することを目的として、薬事審
議会規程第4条に基づき、血液事業部会の下に「適正使用調査会」(以下「調査
会」という。)を設置する。
(適正使用調査会設置要綱[108KB].pdf, Page 1)
最初の重要な変更点は、これまで個別に改定されてきた複数の指針やマニュアルの廃止と統合です。
具体的には、「血液製剤の使用指針」、「輸血療法の実施に関する指針」、そして「血液製剤保管管理マニュアル」の3つが、令和8年3月24日をもって廃止されました。
これらの内容は整理され、新たに策定された「輸血療法実践ガイド」へと一本化されています。
科学的エビデンスに基づき、臨床現場でより使いやすい形に統合されたことが大きな特徴です。
なお、「血液製剤の使用指針」、「輸血療法の実施に関する指針」、「血液製剤保
管管理マニュアル」(以下「指針等」という。)については、本通知の発出をもっ
て廃止します。他の通知等において指針等を引用している場合は、当ガイドをご
参照ください。
(【参考資料1】(令和8年3月 24 日医薬発 0324 第2号)「血液製剤の使用指針」、「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤保管管理マニュアル」の廃止並.pdf, Page 1)
2つ目の重要な論点は、20床未満の診療所における血液製剤の使用実態と管理体制の課題です。
近年、国の方針として在宅医療が推進される中で、無床診療所などでの在宅輸血の需要が拡大しています。
しかし、これら診療所における輸血管理体制の向上は依然として緩やかです。
専用保冷庫を持たない施設が多いことや、検査体制、マニュアルの整備といった安全管理面での課題が指摘されています。
・ 日本でも在宅輸血が拡大傾向であることが血液製剤使用
実態調査のデータから示された。
・ 直近5年で診療所での輸血管理体制の向上はわずかであ
り、安全かつ適正な輸血療法の実施に向けた具体的な対
策が望まれる。
(【資料1-2】令和7年度血液製剤使用実態調査について(東京医科大学八王子医療センター 田中参考人提出資料)[801KB].pdf, Page 24)
3つ目の論点は、災害や緊急時における地域医療連携と血液製剤の融通体制の構築です。
災害時には道路の寸断や物流の途絶により、血液製剤の供給が困難になるリスクがあります。
各地域の研究事業では、広域災害救急医療情報システムであるEMISを活用した在庫情報の共有が進められています。
さらに、1対1の個別のやり取りではなく、地域全体で血液製剤を融通し合う「包括的な災害時血液融通協定」の締結に向けた検討が行われています。
災害拠点病院を中心に病院状況と院内血液在庫状況等をEMISにより情報共有することで、行政・血液センターも含め被
災早期の血液製剤の必要性判断を迅速化し得ると整理された。現在、秋田県全域でのEMIS入力訓練を5月22日に実施、
そこから得られた課題に基づき運用検討を継続していく。
(【資料2-2】令和7年度血液製剤使用適正化方策調査研究事業(秋田県合同輸血療法委員会 小笠原参考人提出資料)[2.8MB].pdf, Page 11)
医療体制が急速に変化する中で、血液製剤の適正使用と安全性の確保は極めて重要です。
今後は、新たに統合された「輸血療法実践ガイド」をいかに医療現場に浸透させるかが問われます。
特に、中小規模の医療機関や診療所に対する具体的な支援と、ガイドラインの周知が与える影響の継続的な評価が期待されています。
各地域での取り組みの進捗状況を、引き続き注視していく必要があります。
今後は中小規模施設へのガイドライン普及を推進するとともに、
ガイドライン周知が血液製剤の適正使用に与える影響を継続的
に評価することが重要である。
(【資料1-1】令和7年度血液製剤使用実態調査について(自治医科大学附属病院 藤原参考人提出資料)[2.9MB].pdf, Page 38)
この記事はアーカイブです。無料会員登録で続きをお読みいただけます。
登録は無料・パスワード不要(メールに確認リンクが届きます)。登録済みの方はログイン