2040年を見据えたがん医療体制の再構築へ、手術の集約化やゲノム医療の拡大など指定要件の見直しを議論
厚生労働省は、がん診療連携拠点病院などの指定要件に関する合同ワーキンググループを開催しました。
今回の会議では、成人、小児、そしてゲノム医療の各拠点病院における整備指針の見直しに向けて、関係学会や患者団体から多様な提言が行われました。
医療技術の進歩や、2040年に向けた人口減少、医師不足といった社会情勢の変化に対応するため、今後の体制整備の方向性が議論されています。
がん医療提供体制をさらに充実させるため、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」の下に本ワーキンググループを開催し、「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」の見直し等について検討し、その検討結果を同検討会に報告することとする。
(参考資料1 「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」開催要綱.pdf, Page 1)
がんゲノム医療提供体制の拡大と要件の見直し
最初の重要な論点は、がんゲノム医療をより多くの患者に届けるための提供体制の拡大についてです。
現在は、指定要件の一部を満たさないために申請ができない医療機関が存在しています。
そのため、高い質のゲノム医療を確保できることを条件に、がんゲノム医療連携病院の指定要件を緩和し、申請を可能にするべきだという提案がなされました。
また、白血病などの造血器腫瘍においては、移植適応の判断に直結するパネル検査を迅速に行う必要があります。
そのため、固形がんとは異なる施設要件を設定し、同種造血幹細胞移植を実施する施設でもパネル検査を提出可能にすべきであるという意見が出されました。
非がん診療連携拠点病院でも質の高いゲノム医療が確保できることを条件に、がん診療実績に応じて、がんゲノム医療連携病院の指定が可能とするよう見直しを行ってはどうか?
(資料6 公益社団法人日本臨床腫瘍学会提出資料.pdf, Page 3)
現行のがんゲノム医療提供体制にくわえて、同種造血幹細胞移植を実施する施設におけるパネル検査の提出を可能とする体制構築が望ましい
(資料4 一般社団法人日本血液学会提出資料.pdf, Page 6)
高度な手術療法の集約化と絶対数要件の厳格化
2つ目の論点は、がんの高度な手術療法の集約化と、それに伴う指定要件の厳格化についてです。
消化器外科や産婦人科、泌尿器科などの高難度手術では、手術件数が多い病院ほど治療成績が良好であるというデータが示されています。
さらに、2040年には外科医が大幅に減少する一方で、過疎地域での手術需要も減少することが予測されています。
このような背景から、地域がん診療連携拠点病院の指定要件である手術件数基準を厳格化し、集約化を進めるべきであるとの提言が行われました。
集約化の状況及び外科医数の減少速度等を踏まえ、令和11年度の整備指針改定においては、手術件数に係る絶対数基準の引上げや、現況報告書における手術件数の定義の見直しを含め、より厳格な手術件数要件の設定について検討する必要がある。
(資料5 一般社団法人日本癌治療学会提出資料.pdf, Page 5)
「医師の働き方改革」を同時に進める上では外科医と手術症例の集約化は避けられないと考える。
(資料5 一般社団法人日本癌治療学会提出資料.pdf, Page 6)
小児がん拠点病院の集約化と役割の再定義
3つ目の論点は、小児がん拠点病院の集約化と役割の見直しです。
日本の小児がん診療施設は、他の先進国と比較して非常に多いと指摘されています。
より質の高い医療を効率的に提供するために、拠点病院を全国で10施設程度に集約化する案が提示されました。
集約化された新たな小児がん拠点病院には、ドラッグラグやドラッグロスの解消に向けた国際共同治験の推進や、高度専門人材の育成など、我が国の小児がん医療を牽引する役割が求められています。
先進国と比較して日本の小児がん診療施設は多い
拠点病院がひとつに集約化されているオランダと比較すると、人口比で7倍、国土面積比で9倍となる。山岳地域が多い地理的な特徴を考慮すると、10施設程度に集約化するのが望ましい
(資料10 一般社団法人日本小児血液・がん学会提出資料.pdf, Page 15)
高度な専門性を必要とする診療や治療研究の中心となる施設やドラッグラグ・ドラッグロスの解消に貢献する施設、などの視点での;
●小児がん拠点病院の役割の見直し⇒更なる“集約化”
(資料11 公益財団法人がんの子どもを守る会提出資料.pdf, Page 7)
今後のスケジュールと見通し
今回の合同ワーキンググループでの議論を踏まえ、厚生労働省は新たな整備指針の改定案を提示する予定です。
今後は、令和8年7月に新しい整備指針が公表される見込みとなっています。
その後、秋には都道府県からの推薦回収が行われ、令和9年度からの新規指定や指定更新に向けて手続きが進められます。
医療の均てん化と集約化のバランスをどのように取るのか、今後の具体的な要件策定の動向が注目されます。
がん診療提供体制のあり方に関する検討会(WGからの報告) 令和8年7月
新整備指針公表 令和8年7月
新現況報告書の回収(都道府県からの推薦) 令和8年10月
(資料1 本合同ワーキンググループについて.pdf, Page 3)
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