障害者支援施設の在り方を議論、地域生活への移行と居住支援の具体策とは
厚生労働省は、令和8年6月30日に「第5回 障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会」を開催しました。
この検討会では、障害者が地域で安心して暮らせる環境づくりに向け、施設から地域への移行や、それを支える居住支援の具体的な方向性について議論が行われました。
全国の自治体における入所待機者の実態把握の状況や、先進的な居住支援に取り組む民間団体へのヒアリング結果などが報告され、今後の制度設計に向けた多角的な検討が進められています。
令和 8 年 6 月 30 日( 火 )
17 : 0 0~1 9 : 0 0
於: TKP 新橋カンファレンスセンター14E
(議事次第.pdf, Page 1)
主要な論点1:自治体における待機者把握の現状と多様なアプローチ
最初の主要な論点は、自治体における施設入所待機者の把握方法についてです。
調査によると、待機者の把握方法には主に2つの方法があることが分かりました。
1つ目は、施設事業者が申請を受けて名簿を作成し、自治体と情報を共有する方法です。
2つ目は、評価基準に基づいて、調整機関が優先度を判断して名簿を作成する方法です。
しかし、待機者の把握状況は自治体間で大きなばらつきがあり、約半数の自治体が調査自体を実施していない現状も明らかになりました。
待機者の定義を全国的に統一することは難しいとの指摘もあり、実態把握に向けた事例の共有や支援の必要性が議論されています。
待機者の把握方法等を自治体に確認したところ、入所希望があった際に待機となった者を管理する待機者名簿を作成する方法として、主に以下の2つのケースが見られた。
① 施設事業者等が申請を受けて待機者名簿を作成し、関係自治体に情報共有するケース
② 申請内容について、待機者の優先度を判断する評価基準に基づき、調整機関が待機者名簿を作成するケース
(資料1 自治体における待機者の把握方法の状況について(報告).pdf, Page 3)
施設の待機者の考え方や把握方法は自治体間で相当のばらつきがあり、また、約半数の自治体が調査自体を実施していない現状にある。
(資料1 自治体における待機者の把握方法の状況について(報告).pdf, Page 2)
主要な論点2:地域移行を支える居住支援の実践と課題
2つ目の論点は、地域移行や地域生活を支えるための居住支援についてです。
検討会では、入所者の重度化や高齢化、地域の受け入れ体制の不足により、地域移行者数の伸び悩みが見られることが報告されました。
また、利用者の希望に応じた地域移行への取り組みを行っていない施設が、全体の約35%存在することも指摘されています。
これを踏まえ、千葉県船橋市で障害者への居住支援を行う「居住支援法人 あんど」などの事例が紹介されました。
重度訪問介護やグループホーム、生活介護を組み合わせることで、強度行動障害や重度知的障害のある人でも地域で単身生活を送ることが可能になる実例が示され、本人の意思決定を支える関係性の重要性が確認されました。
利用者の希望を踏まえた地域移行に係る取組について未実施施設が一定数存在(約35%)。そのため、施設入所者のニーズの実態が十分に把握されていない可能性がある。(183行目)
(資料2 地域移行や地域生活を支える居住支援について.pdf, Page 2)
居住支援法人 あんど(千葉県船橋市)
着眼点:居住支援法人(※)による障害者への居住支援。
地域の障害福祉サービス等と連携した地域生活への移行支援。
(資料2 地域移行や地域生活を支える居住支援について.pdf, Page 3)
本人の 意思決定支援・安心できる関係・孤立からの回復。
できることを先回りして奪わない ―― ここに「地域」の本質がある。
(資料3 ヒアリング資料 居住支援法人 あんど.pdf, Page 6)
主要な論点3:施設とグループホームの制度的格差の解消に向けた提言
3つ目の論点は、施設とグループホームの制度的な違いを解消するための具体的な提案です。
構成員からは、施設の個室化やユニット化をさらに進め、住環境をグループホームと同等に近づけるべきだという意見が提出されました。
また、施設とグループホームの間で生じている経済的負担の差が、地域移行を阻む要因になっているとの指摘もありました。
具体的には、施設利用者に支給されている補足給付をグループホームと同等に見直すことや、特別障害者手当の支給による経済的援護が提案されています。
さらに、障害者支援施設に入所している者が介護保険の被保険者から除外されている現状を見直し、40歳以上のすべての国民が被保険者となるよう制度を改めるべきだという主張もなされました。
令和7年の本検討会で当事者委員から強く希望があった施設の個室、ユニット化をさらに進め、住環境をグループホームと同等に近づけるべきである。
(資料4 構成員提出資料.pdf, Page 1)
施設とグループホームで経済的負担が大きく違うため、その差が「どこで暮らすか」という選択に影響し、施設から地域へ移ることをためらう理由になり得る。
(資料4 構成員提出資料.pdf, Page 1)
40 歳以上のすべての国民が被保険者となる介護保険制度から、施設利用者が適用除外されている現状を改め、施設入所の有無に関わらず介護保険の被保険者とするべきである。
(資料4 構成員提出資料.pdf, Page 2)
結び
今後の見通しとして、厚生労働省はこれらの議論を踏まえ、次期の障害福祉サービス等報酬改定や障害福祉計画の基本指針の見直しに向けた検討をさらに進める予定です。
施設入所者の地域生活への移行を円滑に進めるため、令和11年度末に向けた新たな目標値の設定や、地域移行に向けた意向確認の義務化などが予定されています。
障害者一人ひとりの意思が尊重され、地域社会とのつながりを維持しながら暮らせる土台づくりが、今後の政策において引き続き注視されるポイントとなります。
令和十一年度末における地域生活に移行する者の目標値を設定する。
(参考資料3 障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第4号)(抜粋).pdf, Page 1)
「生活の場の提供」にとどまらず ―― その人の人生が、社会とつながり続けるための土台づくり として捉え直す。
(資料3 ヒアリング資料 居住支援法人 あんど.pdf, Page 9)
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