2040年を見据えたがん医療の再構築へ、拠点病院の指定要件と提供体制が大幅見直し
導入
厚生労働省は、令和8年7月27日に「第21回がん診療提供体制のあり方に関する検討会」を開催いたしました。
この検討会では、2040年を見据えたがん医療提供体制の構築に向け、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、およびがんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件の見直しについて、具体的な改定案が示されました。
今回は、この検討会で示された重要な3つの見直し案について、事実を中心に分かりやすくお伝えいたします。
日 時 :令和8年7月 27 日(月)14:00~16:00
場 所:新橋ビジネスフォーラム(※オンライン会議 )
(議事次第.pdf, Page 1)
変更点1:がん診療連携拠点病院等における実績要件の厳格化とゲノム医療の要件化
1つ目の大きな変更点は、成人のがん診療連携拠点病院における診療実績要件の厳格化です。
現行の制度では、手術件数などの絶対数要件を満たさない場合でも、がん医療圏内の患者の約2割を診療していれば「カバー率に係る要件」として代替が認められていました。
しかし、今回の見直し案では、令和11年度の整備指針改定の際にこの代替措置を廃止し、「年間400件以上の手術実績」や「年間200人以上の放射線治療実績」を必須要件とすることが検討されています。
さらに、薬物療法におけるがんゲノム医療の均てん化を進めるため、がん遺伝子パネル検査に基づくがんゲノム医療を提供できることを、まずは望ましい要件として加え、将来的には必須要件とすることが目指されています。
悪性腫瘍の手術件数に係る要件について、地域がん医療提供体制への影響等を踏まえ、令和11年度の整備指針改定の際に、カバー率に係る要件による代替は行わず、「年間400件以上の実績を有すること」を必須要件とすることを検討してはどうか。
(資料1 がん診療連携拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 14)
質の高いがんゲノム医療の提供体制の構築を図る観点から、拠点病院等については、令和8年度の整備指針改定の際に、「がんゲノム医療中核拠点病院等として指定されていること」を望ましい要件とすることを検討してはどうか。さらに、令和11年度の整備指針改定の際に、がん診療連携拠点病院については、「がんゲノム医療中核拠点病院等として指定されていること」を必須要件とすることを検討してはどうか。
(資料1 がん診療連携拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 19)
変更点2:小児がん拠点病院の集約化と「都道府県小児がん拠点病院」の新設
2つ目の変更点は、小児がん医療提供体制における拠点病院の集約化と、新たな類型の創設です。
少子化に伴い小児がん患者数が減少する中、医療資源の集約化を図るため、国が指定する「小児がん拠点病院」の数を、従来の15か所程度から10か所程度へと集約する方向で検討されています。
これと同時に、各都道府県において患者が適切な医療へ円滑にアクセスできるよう、都道府県知事の推薦に基づく「都道府県小児がん拠点病院」の類型を新設する案が示されています。
また、従来の「小児がん連携病院」は「小児がん連携医療機関」へと見直すことが提案されており、診療所も指定の対象に含めることで、治療後の長期フォローアップや在宅医療を地域で切れ目なく提供できる体制を整える方向で検討が進められています。
小児がん罹患者数の減少が見込まれる中、質の高い小児がん医療提供体制を維持するため、高難度医療、希少がん診療、国際共同治験等について一定の症例集積を図る観点から、小児がん拠点病院の指定数を15か所程度から10か所程度へ集約化
(資料2 小児がん拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 22)
各都道府県において、小児がん患者が適切に診断され、必要な医療へ円滑にアクセスできる体制を確保するとともに、治療後の長期フォローアップや地域での支援を切れ目なく受けられるようにする観点から、「都道府県小児がん拠点病院」の類型を新設
(資料2 小児がん拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 22)
各都道府県において診療所も含めて長期フォローアップを実施できる体制を構築するために、小児がん連携病院を小児がん連携医療機関へと見直し
(資料2 小児がん拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 22)
変更点3:がんゲノム医療拠点病院の全国展開と「エキスパートパネル連携グループ」の構築
3つ目の変更点は、がんゲノム医療の提供体制における役割分担の見直しと、新たな連携グループの導入です。
がんゲノム医療を必要とする患者が全国どこにいても医療を受けられるよう、各都道府県に「がんゲノム医療拠点病院(都道府県拠点)」を配置することが目指されます。
これにより、現在は28都道府県に留まっている拠点病院の設置を、全国全ての都道府県へと拡大していく方針です。
さらに、効率的な運営と質の確保を図るため、中核拠点病院や拠点病院が、連携するがんゲノム医療連携病院と構成する「エキスパートパネル連携グループ」を新たに設ける案が示されています。
このグループ内において、がん遺伝子パネル検査の結果を多職種で検討する「エキスパートパネル」の実施や調整を病院間で柔軟に行う仕組みの導入が検討されています。
現在、がんゲノム医療中核拠点病院とがんゲノム医療拠点病院は28都道府県の設置に留まっているが、国は、各都道府県にがんゲノム医療拠点病院を設置できるよう、都道府県の推薦に基づきがんゲノム医療拠点病院を指定することとし、当該病院は、都道府県におけるがんゲノム医療提供体制の確保及び地域課題の解決に取り組むこととする。
(資料3 がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 21)
がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院のいずれか又はその双方が、連携するがんゲノム医療連携病院とグループ(以下「エキスパートパネル連携グループ」という。)を構成する。エキスパートパネル連携グループを構成する病院は、エキスパートパネル連携グループ内において、エキスパートパネルの実施を調整することができるものとする。
(資料3 がんゲノム医療中核拠点病院等の指定要件について.pdf, Page 30)
結び
今回の指定要件の見直し案に伴い、成人、小児、がんゲノムの各拠点病院における指定の有効期間は、現行の4年間から「3年間」へと短縮することが提案されています。
これにより、がん対策推進基本計画の中間評価の結果などを踏まえ、より機動的な制度の見直しが可能となります。
厚生労働省は、令和11年度に予定されている次期整備指針の改定に向けて、院内がん登録や現況報告書から各拠点病院等の活動実績の状況把握と分析を進めていく方針です。
今後も、持続可能ながん医療提供体制の構築に向けた動向が注視されます。
がん対策推進基本計画策定後に実施される中間評価の結果を踏まえて整備指針の改定を行うため、当該指針の指定期間については、現行の期間を見直し、3年間とすることについても併せて検討してはどうか。
(資料4 令和11年度の整備指針改定に向けた検討課題.pdf, Page 2)
がん診療連携拠点病院等の次期整備指針の見直しに向けて、以下について院内がん登録及び現況報告書等から状況把握及び分析する。
(1) 都道府県がん診療連携協議会における2040年を見据えたがん診療連携体制に関する協議状況
(2) 悪性腫瘍に対する手術件数
(3) 放射線治療の件数
(4) がんゲノム医療の提供状況
(5) 緩和ケアに関する取組状況
(6) がん相談支援に関する取組状況
(資料4 令和11年度の整備指針改定に向けた検討課題.pdf, Page 3)
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