医学研究の倫理指針が改正へ、患者参画の推進や「試料・情報」の定義見直しなど主要な論点を解説
みなさん、こんにちは。
医療政策の最新ニュースをお伝えします。
令和8年6月2日に、第8回生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議が開催されました。
この会議では、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の一部改正案について議論が行われました。
今回の指針改正案は、個人情報保護制度の見直しやこれまでの合同会議での意見を踏まえて作成されたものです。
本日は、この会議で示された重要な変更点や主要な論点について、事実に基づきお伝えいたします。
生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議(第8回)
文部科学省 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する専門委員会(第8回)
厚生労働省 厚生科学審議会 科学技術部会医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会(第 16 回)
経済産業省 産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会 個人遺伝情報保護 WG(第 35 回)
議事次第
【日時】令和8年6月2日(火)16:00-18:00
(議事次第.pdf, Page 1)
まず1つ目の重要な変更点は、指針の基本方針に「患者・市民の視点を尊重」することが追加された点です。
これは、人を対象とする生命科学・医学系研究において、患者や市民の経験、知見、ニーズを活かそうとする「患者・市民参画」の理念を意味しています。
ガイダンス案では、ここで言う「患者・市民」として、患者やその家族、元患者、未来の患者、研究参加経験のある者などが幅広く含まれることが明記されました。
具体的な参画の進め方については、日本医療研究開発機構のウェブサイトなどが参考に挙げられています。
① 患者・市民の視点を尊重し、社会的及び学術的意義を有する研究を実施すること
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 2)
「患者・市民の視点を尊重し」とは、人を対象とする生命科学・医学系研究に患者・市民の経験や知見、ニーズを活かそうとする考え方を指し、いわゆる患者・市民参画の理念を意味する。
なお、「患者・市民」とは、患者、家族、元患者(サバイバー)、未来の患者、研究参加経験のある者、その他研究によって影響を受ける幅広いコミュニティ等が考えられる。
(資料3:指針改正に伴うガイダンス等に記載する内容の方向性について.pdf, Page 3)
次に2つ目の変更点は、用語の定義における見直しと整理です。
これまで「試料及び研究に用いられる情報」とされていた「試料・情報」の定義が、「試料若しくは研究に用いられる情報又は試料及び研究に用いられる情報」へと変更されました。
さらに、研究の実施には携わらず、自らが保有する既存の試料や情報を研究者等に提供することのみを行う者を、「既存試料・情報の提供のみを行う者」として新たに定義づけました。
この定義の追加に伴い、これら提供のみを行う者が行う手続きについても、指針内で明確な区分が設けられることとなりました。
⑹ 試料・情報
試料若しくは研究に用いられる情報又は試料及び研究に用いられる情報をいう。
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 2)
⒄ 既存試料・情報の提供のみを行う者
一の研究において、当該研究の実施(試料・情報の収集・提供を行う機関における業務の実施を含む。次の⒅において同じ。)に携わらない者であって、既存試料・情報を用いて研究を実施しようとする研究者等からの依頼を受けて、自らが保有する既存試料・情報を当該研究者等に提供することのみを行うものをいう。
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 3)
そして3つ目の変更点は、外国にある者へ試料や情報を提供する場合の手続きに関する規定の整備です。
個人情報保護法との整合性を図るため、提供先が個人情報保護法施行規則第16条に定める基準に適合する体制を整備している場合を除き、原則として適切な同意を得る必要があります。
また、適切な同意を受けることが困難な場合の例外要件や、提供に際して研究対象者等へ提供すべき情報の内容が詳細に定められました。
具体的には、提供先となる外国の名称、その外国における個人情報の保護に関する制度の情報、そして提供先が講ずる保護措置に関する情報などをあらかじめ提供することが求められます。
⑹ 外国にある者へ試料・情報を提供する場合の取扱い
ア 外国にある者(個人情報保護法施行規則第 16 条に定める基準に適合する体制を整備している者を除く。以下ア及びイにおいて同じ。)に対し、試料・情報を提供する場合(当該試料・情報の取扱いの全部若しくは一部を外国にある者に委託する場合又はそれらの者と共同して利用する場合を含む。)は、当該者に対し試料・情報を提供することについて、あらかじめ、イに掲げる全ての情報を当該研究対象者等に提供した上で、研究対象者等のインフォームド・コンセントを受けなければならない。
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 22)
イ 外国にある者に対し、試料・情報を提供する者が、アの規定において、研究対象者等に提供しなければならない情報は次のとおりとする。
① 当該外国の名称
② 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報
③ 当該者が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 25-26)
最後に、今後のスケジュールについてお伝えします。
今回議論された一部改正案は、令和8年中の適用を目指して準備が進められています。
また、指針の改正に伴い、具体的な手続の留意点などを説明する「ガイダンス」についても、明確化に向けた検討が続けられる予定です。
研究の適正な実施と個人情報の保護の両立に向け、今後の動向が注目されます。
人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和三年厚生労働省、告示第一号)の一部を次の表のように改正し、令和八年月日から適用する。
(資料2:人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(案).pdf, Page 1)
今回の指針改正においてガイダンス等で明確化する事項
✓ 基本方針①に追記した「患者・市民の視点を尊重」の考え方について ②
✓ 「適切な手続」の考え方について ①
✓ 一括審査に係る留意点(倫理審査における配慮・審査の視点、各研究機関の手続等において注意すべき点等)①
(資料3:指針改正に伴うガイダンス等に記載する内容の方向性について.pdf, Page 2)
お伝えしたニュースは以上です。
それでは、また次回お会いしましょう。
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