令和6(2024)年度公的年金財政状況報告が公表、積立金は306.0兆円に増加も出生率低下など長期的な課題を注視
社会保障審議会年金数理部会は、令和8(2026)年6月16日に「公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度-」の概要をとりまとめました。
この報告書は、各制度や実施機関からの報告に基づき、専門的な観点から公的年金の財政状況を横断的に分析・評価したものです。
令和6(2024)年度は、令和6(2024)年財政検証の将来見通しと実績を比較する最初の年度にあたります。
「公的年金財政状況報告」は、社会保障審議会年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況について、公的年金の各制度・各実施機関からの報告に基づき、専門的な観点から横断的に分析・評価を行った結果をとりまとめたもの。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 1)
令和6(2024)年度は、令和6(2024)年財政検証の将来見通しと実績を比較する初年度となっている。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- の概要[1.2MB].pdf, Page 2)
最初の論点は、令和6(2024)年度の収支状況と積立金の推移についてです。
公的年金制度全体における令和6(2024)年度の収支は、運用損益分を除いた収入総額が55.7兆円、支出総額が55.8兆円となりました。
この結果、運用損益分を除いた単年度の収支残は0.1兆円のマイナスとなっています。
一方で、時価ベースの運用損益は2.0兆円のプラスを記録しました。
これらを合わせた結果、時価ベースの年度末積立金は前年度から2.0兆円増加し、306.0兆円となっています。
公的年金制度全体でみると、令和6(2024)年度は、運用損益分を除いた収入総額 55.7 兆円、支出総額 55.8 兆円であったことから、運用損益分を除いた単年度収支残は 0.1 兆円のマイナス。
また、時価ベースの運用損益は 2.0 兆円のプラス。
その結果、時価ベースの年度末積立金は前年度に比べ 2.0 兆円増加し、306.0 兆円。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 1)
次の論点は、被保険者数や受給者数の実績と将来見通しとの比較についてです。
国民年金第1号被保険者数と厚生年金被保険者数は、ともに実績が将来見通しを上回りました。
外国人入国超過数の実績が想定を上回ったことなどが、この増加に影響したと考えられます。
また、65歳の平均余命の実績は死亡高位の仮定値と概ね同水準であり、これらは財政にプラスの効果をもたらします。
しかしその一方で、合計特殊出生率は低下傾向が続いており、出生低位の仮定値と概ね同水準にとどまりました。
さらに、実質賃金上昇率についても前提を下回っており、これらは財政にマイナスの効果を与える要因となっています。
① 国民年金第1号被保険者数、厚生年金被保険者数ともに実績が将来見通しを上回った。これは、外国人入国超過数の実績が令和5(2023)年推計注におけるいずれの仮定値も上回っていることも影響していると考えられる。また、65 歳の平均余命の実績は、令和5(2023)年推計における死亡高位の仮定値と概ね同水準であった。これらは公的年金財政にはプラスの効果となる。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 2)
② 一方で、合計特殊出生率は平成 28(2016)年より低下傾向が続いており、令和 6(2024)年の実績は令和 5(2023)年推計における出生低位の仮定値と概ね同水準となっている。また、実質賃金上昇率(対物価)は令和 6(2024)年財政検証におけるいずれのケースの前提も下回っている。これらは公的年金財政にはマイナスの効果となる。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 2)
最後の論点は、積立金の実績と将来見通しとの乖離分析についてです。
令和6(2024)年度末の積立金は、厚生年金計、国民年金ともに実績が将来見通しを上回りました。
これは、前年度末にあたる令和5(2023)年度末の積立金において、実績が見通しを上回っていたことが主な要因です。
しかし、令和6(2024)年度の単年における発生要因のみをみると、積立金の乖離はマイナスとなっています。
この単年でのマイナス乖離は、名目運用利回りが見通しを下回ったことが大半を占めている状況です。
厚生年金計では12.9兆円から11.2兆円のマイナス、国民年金では0.64兆円から0.56兆円のマイナス影響が生じました。
○ 厚生年金計及び国民年金(国民年金勘定)の令和6(2024)年度末積立金は、実績が将来見通しを上回っている(厚生年金計+12.4~14.1兆円、国民年金(国民年金勘定)+0.22~0.30兆円)。これは、令和5(2023)年度末積立金の将来見通しからの乖離分が、令和6(2024)年度に係る発生要因の寄与計のマイナスを上回ってプラスになっていることによる。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- の概要[1.2MB].pdf, Page 40)
○ 令和6(2024)年度に生じた厚生年金計の積立金の乖離(△12.9~△11.2兆円)は名目運用利回りの乖離の寄与(△13.3~△11.6兆円)が、国民年金(国民年金勘定)の積立金の乖離(△0.64~△0.56兆円)は名目運用利回りの乖離の寄与(△0.66~△0.57兆円)が大宗を占めている。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- の概要[1.2MB].pdf, Page 41)
結びとして、今後の見通しと注視すべき点についてお伝えします。
年金数理部会は、見通しからの乖離が中長期的に続いた場合、年金財政へ与える影響は非常に大きいと指摘しています。
特に出生率の低下傾向が今後も継続すれば、将来の年金制度の運営に深刻な影響を及ぼしかねません。
そのため、一時的な短期の動向のみにとらわれることなく、長期的な視野を持って財政状況を注視していく必要があります。
部会としても、毎年の制度運営の動きをしっかりと見守っていく方針です。
○ これらの将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなる。特に、令和6(2024)年の合計特殊出生率は令和5(2023)年より低下し、令和5(2023)年推計における出生低位の仮定値と概ね同水準である。このような傾向が今後も継続するようであれば、将来の年金制度の運営は大きな影響を受ける。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 3)
○ 年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきである。
(公的年金財政状況報告 -令和6(2024)年度- ポイント[185KB].pdf, Page 3)
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