第4期がん対策推進基本計画の中間評価報告書案が公表へ がん予防・医療・共生の進捗と課題が浮き彫りに
厚生労働省は、第95回がん対策推進協議会を開催し、第4期がん対策推進基本計画の中間評価報告書案を提示しました。
この計画は、誰も取り残さないがん対策の推進と国民全員でのがん克服を目指して策定されたものです。
中間評価では、がん死亡率の低下や自分らしい生活を送れている患者の割合向上など、全体として一定の成果が確認されました。
一方で、分野ごとに様々な課題も明らかになっています。
本中間評価では、「がん予防」、「がん医療」、「がんとの共生」及び「これらを支える基盤」の各分野について、取組の進捗状況と今後一層の推進が必要な課題が整理された。最終アウトカム指標の判定より、がん死亡率の低下、がん患者が自分らしい生活を送れていると感じる割合の向上等、全体として一定の成果と改善傾向が認められた。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 8)
1. 科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実
最初の論点は、科学的根拠に基づくがん予防とがん検診の充実についてです。
予防分野では、がんの年齢調整死亡率や年齢調整罹患率の指標が改善傾向にあります。
しかし、女性の乳房がんの罹患率は増加傾向にあり、背景の検証が必要です。
また、がん検診の受診率向上も依然として大きな課題となっています。
目標値である60%に対し、実際の受診率は40%台から50%台にとどまっているのが現状です。
さらに、精密検査の受診率を90%まで引き上げるための個別勧奨の徹底や、職域における検診実態の把握が求められています。
「がん予防」分野における全ての最終アウトカム指標「がんの年齢調整死亡率」、「がんの年齢調整罹患率」、「がん種別年齢調整死亡率」及び「がん種別年齢調整罹患率」がA判定(23 指標)となっており、分野全体で改善傾向であることが確認された。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 13)
がん検診の受診率の目標値は 60%であるが、令和4年度時点でがん検診の受診率が約 43%から 54%となっており、受診率向上施策の加速及び受診率の精密な把握の検討を進める必要がある。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 27)
「精密検査受診率 90%」の目標達成に向け、精密検査の重要性に関する効果的な普及啓発を行うとともに、精密検査未受診者に対する個別勧奨をより一層進める必要がある。あわせて、職域においても、科学的根拠に基づくがん検診精密検査の受診状況等について、実態把握を進める必要がある。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 28)
2. 患者本位で持続可能ながん医療の提供
2つ目の論点は、患者本位で持続可能ながん医療の提供についてです。
がん医療の均てん化や集約化に向けて、2040年を見据えた医療提供体制の検討が進められています。
広く普及した医療は身近な地域で受けられるように均てん化を図る一方、高度な医療技術は症例を集積するために集約化を検討する方針が示されました。
また、がんゲノム医療については、がんゲノム情報管理センターへの登録患者数が増加しています。
しかし、遺伝子パネル検査の結果から推奨された薬剤が実際に投与された割合は7.8%にとどまっており、アクセスの改善が課題です。
治療開始前に生殖機能への影響について説明を受けた成人の割合は増加しており、妊孕性温存に関する情報提供の強化も引き続き推進されます。
本取りまとめにおいて、2040 年に向けて、がん医療の需要変化等が見込まれる中、持続可能ながん医療提供体制となるよう、基本的な考え方として、医療技術の観点から、広く普及された医療について均てん化に取り組むとともに、高度な医療技術については、症例数を集積して質の高いがん医療提供体制を維持できるよう一定の集約化を検討していくといった医療機関及び関係機関の機能の役割分担及び連携を一層推進すること
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 9)
コア指標のうち、中間アウトカム指標として設定されている「がんゲノム情報管理センターに登録された患者数」が増加している一方で、「がん遺伝子パネル検査を実施した患者のうち、エキスパートパネルで推奨された薬剤が投与された割合」が 0.4 ポイント減少しており、がんゲノム医療へのアクセシビリティの向上については、改善の余地がある。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 41)
「治療開始前に生殖機能への影響に関する説明を受けた」と回答した成人がん患者・家族の割合が 52.0%から 71.5%へと増加しており、インフォームド・コンセントの中で妊孕性への配慮が含まれるようになってきていることを示しており評価できる。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 65)
3. がんとともに尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築
3つ目の論点は、がんとの共生やサバイバーシップ支援についてです。
がん相談支援センターの新規相談件数は増加しているものの、センターの認知度は成人患者において55.1%と、ベースラインから11.3ポイント低下しました。
このため、外来初診時から治療開始までの間に、患者や家族が少なくとも一度はセンターを訪問できる体制の構築が急がれています。
就労支援の分野では、治療開始前に就労継続の説明を受けた患者の割合が44.0%にとどまり、退職した患者のうち治療開始前に退職していた人の割合が58.3%と依然として高い水準です。
さらに、精神心理的な苦痛を抱えるがん患者の割合が26.2%と増加傾向にあり、緩和ケアや自殺対策を含む全人的な苦痛の早期把握と支援体制の強化が大きな課題となっています。
がん相談支援センターについて知っているがん患者(成人)の割合は、11.3ポイント低下している。一方で、新規相談件数が増加し、相談を利用した患者の70%以上が「役に立った」と回答していることから、認知している患者にとっては利用しやすい環境が整いつつあると考えられる。
(資料1-2 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案概要.pdf, Page 9)
治療開始前に就労継続について説明を受けたがん患者の割合は50%を下回っており、がん治療の開始前までに退職した者の割合も58.3%となっている。
(資料1-2 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案概要.pdf, Page 10)
「精神心理的な苦痛を抱えるがん患者の割合」は後退傾向であるため、緩和ケア研修や相談導線の整備と並行して、関係職種や関係機関と連携しながら、苦痛の早期把握と支援につながる実装(院内フロー等)を継続的に確認するための体制整備が必要である。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 93)
結び
今後は、この中間評価で浮き彫りになった課題に対応するため、各分野での取組が強化される見込みです。
また、今回の評価手法や指標の反省を踏まえ、第5期基本計画の策定に向けた準備も並行して進められます。
国や自治体、医療機関が連携し、誰一人取り残さないがん対策がどのように推進されていくか、今後の動向が注視されます。
今後は、中間評価を踏まえ、課題に対応した取組の強化と分野間の連携を図りつつ、総合的ながん対策を推進することにより、全体目標である「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」の達成に向けた取組を進めていく。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 8)
第5期基本計画策定に向けては、指標の性質に応じて、目標値を設定する指標、一定水準の確保を目指す指標、進捗確認を重視する指標を区別した目標設定や評価方法を検討すること。
(資料1-1 第4期がん対策推進基本計画中間評価報告書案.pdf, Page 116)
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