患者・当事者の視点から再設計を、日本医療政策機構が難病・希少疾患政策の新たな提言を発表
日本医療政策機構は、2026年9月に難病・希少疾患政策に関する新たな政策提言を発表しました。
この提言は、患者や当事者、市民の視点から、診断前後の医療提供体制を再設計することを目指したものです。
2025年4月時点で指定難病は348疾患に達しており、少なくとも約110万人の患者や当事者がいると推計されています。
専門医の偏在や医療資源の限界といった構造的な制約がある中で、当事者が安心して医療を受け続けるための具体的な方向性が示されました。
日本医療政策機構(HGPI)では、難病・希少疾患への社会的関心を高め、一段と効果的かつ有機的に対策を進めるため、難病・希少疾患対策プロジェクトを立ち上げ、中長期的に社会が目指すべき難病・希少疾患政策の方向性を整理した。これらを踏まえながら、保健医療システムの全体像や国内政策の動向を見据えてさらに一歩踏み込み、本提言では難病・希少疾患をとりまく医療提供体制に注目する。
(HGPI_20260925_Policy-Recommendations_Intractable-and-Rare-Disease_JPN.pdf, Page 2)
提言の第1の柱は、難病や希少疾患を特定の少数派の課題ではなく、誰もが当事者になり得る社会全体の課題として捉え直すことです。
医療費助成の対象外となる軽症の患者や未診断の患者も含めると、実際にはより多くの人々が難病や希少疾患に関わっている可能性があります。
2025年5月には世界保健機関(WHO)が難病・希少疾患に関する初の決議を採択し、国際的にも保健システムの強化や患者参画の推進が示されました。
国や自治体が連携し、義務教育や地域、職場で医療のかかり方を学ぶ機会を充実させ、多様な疾病への理解を深めることが求められています。
個々の疾患の患者・当事者は少なくても、難病・希少疾患全体で考えると決して限られた人たちだけの課題ではない。今後は、希少性を強調した普及啓発から、誰もが当事者となり得る身近な健康課題という視点へ転換することが求められる。
(HGPI_20260925_Policy-Recommendations_Intractable-and-Rare-Disease_JPN.pdf, Page 13)
第2の柱は、患者が早期に適切な医療を受けられるよう、地域の診療所から専門医療機関へ円滑につなぐ体制の構築です。
難病の初期症状は倦怠感や微熱など一般的な症状であることが多く、最初の受診先である一般内科などで見過ごされるケースが少なくありません。
また、神経内科専門医の数は人口10万人あたり全国平均4.2人ですが、京都府の9.5人に対し青森県は2.0人と、都道府県間で4倍以上の地域差が存在します。
こうした課題に対し、診療科を横断する共通の症状から難病の可能性を考慮する教育の充実や、地域の医師が専門医にオンラインで相談できる窓口の設置が提案されました。
患者・当事者が適切な医療を受けるためには、最初に診療する医師が難病・希少疾患の可能性に気づき、適切な専門の医療機関へつなぐことが重要である。一方で、すべての医師に多様な難病・希少疾患に関する専門的知識を求めることは現実的ではない。重要なのは、診断が困難な患者・当事者に対して難病・希少疾患の可能性を念頭に置き、自らの専門領域だけでは対応が難しい場合には、専門の医療機関へつなぐ判断ができることである。
(HGPI_20260925_Policy-Recommendations_Intractable-and-Rare-Disease_JPN.pdf, Page 15)
第3の柱は、診断の有無に関わらず必要な支援を受けられる相談体制の整備と、切れ目のない地域連携の強化です。
これまでの多くの支援制度は診断の確定を前提としており、診断前の患者が必要な支援を受けにくいという構造的な課題がありました。
特に指定都市などの行政機関が、診断未確定を理由に支援から取り残すことがないよう、保健師等による継続的な相談支援を行う体制を整備すべきとしています。
さらに、病状の安定後は地域の「かかりつけ医」と専門医が役割を分担し、急変時の受け入れ体制を含めた地域連携を明確にすることが必要です。
国、都道府県及び市町村は、診断の有無にかかわらず、難病・希少疾患の患者・当事者やその家族の相談を受け止め、必要な保健・医療・福祉につなぐ身近な相談支援体制の在り方を整理し、整備すべきである。難病医療費助成制度をはじめ、多くの制度が診断の確定を前提としているため、診断前の患者・当事者は必要な支援を受けづらい状況にあることを踏まえ、診断前の段階から相談を受け止め、適切な医療や支援へつなぐ仕組みを構築する必要がある。
(HGPI_20260925_Policy-Recommendations_Intractable-and-Rare-Disease_JPN.pdf, Page 18)
今回の提言では、患者が心身の違和感に気づいてから地域で継続的な医療を受けるまでの各フェーズにおける課題が整理されました。
今後は、国内の難病法や基本方針の見直しにおいて、患者や当事者の参画を制度上より明確に位置づけることが重要となります。
医療提供体制の再設計に向けた具体的な施策が、地域医療の現場や行政においてどのように実装されていくかが今後の注視すべき点です。
難病・希少疾患とともに生きる患者・当事者が、生涯にわたって安心して医療を受け、その人らしい生活を送ることができる社会の実現に向けて、本提言がその一助となれば幸いである。
(HGPI_20260925_Policy-Recommendations_Intractable-and-Rare-Disease_JPN.pdf, Page 24)
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