気候変動に伴う暑熱リスクと社会の備え、国際的な「暑熱健康行動計画」と日本の課題
地球温暖化の進行に伴い、熱波や猛暑の発生頻度が世界的に増加しています。
日本医療政策機構は、暑熱がもたらす多様な健康リスクと、国内外における社会的な備えについて、政策コラムを公表しました。
本記事では、気候変動がもたらす公衆衛生上の課題と、今後の対策のあり方についてお伝えします。
気候変動の進行に伴い、世界各地で熱波や猛暑の発生頻度が増加している。
暑熱は熱中症だけでなく、循環器疾患や呼吸器疾患の悪化など様々な健康影響をもたらす公衆衛生上の重要課題となっている。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
近年、日本国内でも記録的な猛暑が頻発しており、熱中症による救急搬送者数が急増しています。
暑さは一時的な気象現象にとどまらず、人々の生活や健康を脅かす重大な公衆衛生上の課題です。
世界気象機関も、今後数年間は世界の平均気温が記録的な高水準で推移すると予測しています。
近年、日本では記録的猛暑が頻発し、熱中症による救急搬送者数が増加しています。
暑さは一時的な異常気象にとどまらず、人々の健康や生活に大きな影響を及ぼす公衆衛生上の課題となっています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
それでは、今回のコラムから明らかになった主要な3つの論点について詳しく見ていきましょう。
まず1つ目の論点は、暑熱がもたらす多様な健康リスクと社会的要因の関連性です。
暑熱は、従来の熱中症だけでなく、循環器疾患や呼吸器疾患の悪化、さらには精神疾患や労働生産性の低下をもたらします。
特に労働環境においては、欠勤だけでなく、在職中の生産性低下であるプレゼンティーズムにも影響を及ぼすことがわかっています。
また、高齢者や基礎疾患を持つ人だけでなく、電気料金への不安から冷房を控える人や、断熱性能の低い住宅に暮らす人、屋外労働者などが特に影響を受けやすい脆弱層とされています。
暑熱とは高温環境への曝露によって身体に負担がかかった状態を指し、熱中症だけではなく、循環器疾患や呼吸器疾患の悪化、精神疾患、労働生産性の低下など、さまざまな健康障害をもたらすことがわかっています。
加えて、暑熱は欠勤(アブセンティーズム)だけでなく、集中力や作業効率の低下による在職中の生産性低下(プレゼンティーズム)にも影響することが報告されています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
さらに、高齢者や基礎疾患のある人だけでなく、電気料金への不安から冷房の使用を控える人や、断熱性能が十分でない住宅で暮らす人、そして屋外や高温環境での業務に従事する労働者も、暑さの影響を強く受けやすいと考えられています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
2つ目の論点は、国際的に推進されている「国家保健適応計画」と「暑熱健康行動計画」の枠組みです。
世界保健機関は、気候変動に伴う健康リスクに対応するため、ヘルスセクターが横断的に取り組む中長期戦略である「国家保健適応計画」の策定を推進しています。
また、暑熱リスクに特化した具体的な実施計画として、「暑熱健康行動計画」の策定や早期警戒システムの整備が各国で進められています。
G7各国においても、イギリスの「悪天候・健康計画」やフランスの「国家熱波計画」など、それぞれの実情に応じた計画が策定され、警報レベルに応じた具体的な行動指針が運用されています。
世界保健機関(WHO: World Health Organization)が提唱する国家保健適応計画(HNAP: Health National Adaptation Plan)の策定が推進されています。
HNAPは、感染症の拡大や水・食料安全保障の変化など、気候変動に伴う幅広い健康リスクに対し、ヘルスセクターが横断的に取り組むための中長期的な国家戦略です。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
この中(注:HNAP)でも特に対応が急がれている暑熱リスクへの具体的な実施計画として、暑熱健康行動計画(HHAP: Heat-Health Action Plan)の策定や、早期警戒システムの整備が各国で進められています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
例えばイギリスでは、英国健康安全保障庁(UKHSA: UK Health Security Agency)が「天候・健康警報システム(Weather-Health Alerting System)」を運用しています。
このシステムでは、健康への影響が予測される高温やその他の異常気象に対して警報が発表されます。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
3つ目の論点は、日本国内における暑熱対策の進展と、国際基準と比較した際の課題です。
日本国内では、2021年の「熱中症対策行動計画」策定や熱中症警戒アラートの導入に加え、2023年の気候変動適応法改正による特別アラートの開始など、法制度の整備が進んでいます。
また、2025年には労働安全衛生規則が改正され、事業者に対する重症化防止手順の策定などが義務付けられました。
しかし、日本の対策は熱中症による急性期被害の防止が中心であり、国際的な計画と比較すると、都市計画や住宅政策との連携、脆弱層へのアウトリーチ、サーベイランス体制の整備などが発展途上にあると指摘されています。
日本においても気候変動の影響により、猛暑日や熱中症による救急搬送者数が増加しており、暑熱対策は重要な公衆衛生課題となっています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
日本の計画は熱中症による死亡者数や救急搬送者数の削減を主要な目標として設定しており、暑さ指数(WBGT)に基づく警戒アラートの発出やクーリングシェルターの指定など、急性期の被害防止が中心となっています。
一方、WHOが示すHHAPは、熱中症だけでなく循環器疾患・呼吸器疾患の悪化や精神健康への影響、労働生産性の低下なども対象とし、前述したガバナンス、警報システム、脆弱層への支援、コミュニケーション、保健医療システムのレジエンス、暑熱曝露の低減(都市計画・住宅性能向上等)、サーベイランス、モニタリング・評価・学習という8つのコア要素を包括的に組み込む枠組みとして設計されています。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
第二に、日本の計画は個人への注意喚起や事業者による管理措置が中心であり、都市計画・住宅政策・エネルギー政策との連携や、脆弱層への個別的なアウトリーチといった要素は、HHAPが求める水準に比べて発展途上にあります。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
最後に、今後の展望と注視すべき点についてまとめます。
気候変動の進行に伴い、暑熱による健康リスクは今後さらに深刻化することが予想されます。
今後は、単なる熱中症対策にとどまらず、環境、福祉、都市計画、エネルギー政策など、多様な分野が連携した包括的な対策を進める必要があります。
健康を守るための適応策を推進すると同時に、気候変動そのものを抑制する緩和策をいかに統合的に進めていけるかが、持続可能な社会の実現に向けた重要な鍵となるでしょう。
暑熱問題は、気候変動が人々の健康にどのような影響を及ぼすのかを示す例であり、こうした課題に対応するためには、環境・福祉・都市計画・エネルギー政策など多分野が連携し、暑熱による健康影響を包括的に捉えた対策を進めることが重要です。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
あわせて、健康を守るための適応策を着実に進めるとともに、気候変動の進行そのものを抑える緩和策も統合的に推進していくことが、持続可能な社会の実現に向けて重要です。
(暑熱と健康:気候変動がもたらす健康リスクと社会の備え)
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