我が国の薬剤耐性対策の現在地:「ワンヘルス」動向調査から見るヒトと動物の課題と2027年目標への道のり
我が国における薬剤耐性(AMR)対策は、ヒトの医療だけでなく、動物や食品、環境までを一体として捉える「ワンヘルス」のアプローチが重視されています。
厚生労働省をはじめとする関係省庁は、2023年4月に策定された「AMR対策アクションプラン(2023-2027)」に基づき、定期的な動向調査を行ってきました。
このたび、最新の調査結果をまとめた「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(サマリ版)」の2025年版が公表されました。
今回は、2027年度の目標達成に向けた現状と、明らかになった主要な課題について、最新のデータを交えてお伝えします。
我が国の薬剤耐性(AMR)に関する取り組みとして、2023 年 4 月に策定された「AMR 対策アクション
プラン(2023-2027)」では、「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(NAOR)」の作成及び公表を継
続させ、内容を充実させることを推進しており、ヒト、動物、食品、環境の健康が相互に関連していること
を考慮に入れた施策の推進が求められています。
(001675597.pdf, Page 3)
第一の論点として、ヒトにおける薬剤耐性菌の分離率と、2027年度目標値とのギャップが挙げられます。
バンコマイシン耐性腸球菌感染症の報告数は、2023年に115人となり、2027年の目標である「80人以下」に向けて着実に減少しています。
しかし、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の割合は減少傾向にあるものの、目標値の20%以下に対して依然として高い水準です。
さらに、大腸菌に対するフルオロキノロン系薬の耐性率は、2021年に初めて減少へ転じたものの、こちらも目標値である30%以下には達していません。
このように、菌種や薬の種類によって、目標達成に向けた進捗状況に大きな違いが生じています。
➢ バンコマイシン耐性腸球菌感染症の報告数は 2023 年は 115 人でした。
➢ メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の割合は減少傾向にありますが、2020 年目標値(20%以
下)と比べて高い水準にあります。
➢ 大腸菌に対するフルオロキノロン系薬の耐性率は増加傾向にありましたが、2021 年に初めて減少
しました。
(001675597.pdf, Page 7)
第二の論点は、ヒトに対する抗菌薬の使用量が再び増加に転じているという事実です。
日本国内におけるヒト用抗菌薬の使用量は、2024年に全体で12.96 DIDを記録しました。
これは2020年の10.18 DIDと比較して、約27.3%もの大幅な増加を示しています。
2027年度の目標値は、2020年比で15%削減した「8.65 DID」と設定されていますが、現状は目標から遠ざかる形となっています。
特に、経口マクロライド系薬や経口第3世代セファロスポリン系薬などの適正使用に向けた取り組みが、改めて急務とされています。
日本におけるヒト用抗菌薬の販売量に基づいた抗菌薬使用量(※DID)は、2024 年は全体で 12.96
DID であり、2020 年と比較し約 27.3%増加しましたが、2015 年と比較すると約 9.0%減少しました。
(001675597.pdf, Page 9)
第三の論点として、動物(畜産)分野における抗菌剤使用量の着実な減少が挙げられます。
畜産分野における動物用抗菌剤の全販売量は、2023年に559.4トンを記録し、前年の568.0トンからさらに減少しました。
これは、2027年度の目標値である532.8トン(2020年比15%減)に向けて、順調な減少傾向を維持していることを示しています。
また、ヒトの医療において極めて重要とされる第二次選択薬の販売量についても、2023年は23.5トンに抑えられました。
これにより、目標値である「27.0トン以下」を十分に下回る成果を達成しています。
動物用抗菌薬のうち畜産分野における抗菌剤販売量(トン:t)は 2023 年は 559.4 tであり、2022 年
の 568.0 tから 8.6 t減少しました。なお、2027 年目標値は 2020 年から 15 %減の 532.8 tとなってい
ます。また畜産分野における第二次選択薬の販売量の成果指標は 27.0 t以下に抑えることとなってい
ますが、2023 年は 23.5 tでした。
(001675597.pdf, Page 9)
今回の報告書からは、動物分野における抗菌剤の使用管理が進む一方で、ヒトの抗菌薬使用量が増加しているという対照的な現状が明らかになりました。
2027年度の目標達成に向けては、医療現場における抗菌薬の適正使用の徹底や、一般市民への意識啓発がさらに重要となります。
今後もワンヘルスの視点に基づき、各分野の連携を強めながら、薬剤耐性菌の動向を継続して監視していく必要があります。
NAOR では、国内におけるヒト、動物、食品及び環境の各分野における薬剤耐性菌及び抗微生物薬
使用量(または販売量)の現状及び動向について把握できるように整備されており、各種 AMR 施策の
選定、評価の際などに活用されています。
(001675597.pdf, Page 3)
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