熊本県熊本・上益城(二次医療圏)

CrossHealth / 薬局持久度レポート

県ぜんぶの落差が、ひとつの圏の中に入っている

熊本・上益城医療圏10市町村の薬局を、供給・高齢化・経営体力で見える化。市区町村ごとの詳細レポートは順次公開します。

対象 熊本・上益城医療圏 10市町村期間 2025年 → 2045年概要版・無料

熊本・上益城医療圏は、熊本市の5区に上益城郡の5町を加えた10市町村からなる圏域です。薬局は428軒——熊本県全体(873軒)の49.0%がここに集まっています。圏全体では65歳以上人口が2025→2045年で+10.0%と増え、県全体(-3.0%)とは逆を向いています。ただし圏の中身は一様ではありません。薬局1軒あたり処方せんの変化は山都町の-45.6%から中央区の+8.8%まで54.4ポイント——熊本県の10医療圏どうしの落差(43.5ポイント)よりも大きく開きます。

10
熊本・上益城医療圏の市町村
428
圏内の薬局数
8
2025年に閉じた薬局(承継・移転を除く)
-46〜+9%
経営体力の変化レンジ(市町村差)

熊本・上益城医療圏の中身は、熊本市の市街地と、その東に広がる上益城郡とではっきり分かれます。65歳以上人口がすでにピークを過ぎているのは山都町・甲佐町・御船町の3町。残る7市区町は、まだ増える側にいます。経営体力(薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化)で見ると、いちばん沈むのが山都町(-45.6%)、いちばん伸びるのが中央区(+8.8%)で、その差は54.4ポイント。マイナス側は6市区町です。山都町の高齢化率は現時点で54.6%、2045年には59.3%。総人口も-44.9%と圏内でもっとも減ります。いっぽう中央区は薬局136軒で圏内の31.8%を占め、経営体力も+8.8%とプラス側です。ここで目を引くのが閉局の分布です。直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)に出た廃止届29件のうち21件は移転・承継で事業が続き、そのまま消えたのは8軒(1.87%)でした。その8軒が起きたのは中央区4軒・益城町1軒・北区1軒・東区1軒・嘉島町1軒——いずれも65歳以上人口がこれから増える市区町です。逆に、65歳以上人口が減る3町(山都町・甲佐町・御船町)で消えた薬局は0軒でした。「高齢者が減る地域から薬局が消える」という順番には、少なくともこの1年、この圏域ではなっていません。引き継がれなかった割合は27.6%で、熊本県全体(28.1%)とほぼ同じ水準です。

地図 ── 地域差を見る薬局1軒あたり処方せんの、市町村ごとの将来

色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化(=経営体力)。緑=圏内で相対的に増える、赤=減る。いちばん赤いのが山都町(-45.6%)、いちばん緑なのが中央区(+8.8%)で、同じ熊本・上益城医療圏の中に54.4ポイントの開きがあります。

山都町:薬局7/1軒あたり処方せん -45.6%甲佐町:薬局3/1軒あたり処方せん -26.4%御船町:薬局10/1軒あたり処方せん -17.8%西区:薬局47/1軒あたり処方せん -6.3%西区益城町:薬局11/1軒あたり処方せん -5.2%益城町北区:薬局59/1軒あたり処方せん -5.1%北区南区:薬局57/1軒あたり処方せん +5.7%南区東区:薬局88/1軒あたり処方せん +6.1%東区嘉島町:薬局10/1軒あたり処方せん +6.1%中央区:薬局136/1軒あたり処方せん +8.8%中央区
色=経営体力の変化(→2045)
減る(-46%)増える(+9%)
市区町村そのものの形で塗り分けています。

人口動態 ── 需要の源人は減るのに、お年寄りは増える圏域

なぜ市町村で明暗が分かれるのか。もとをたどると人口の動きです。熊本・上益城医療圏全体では、総人口は81.3万→73.8万人(-9.1%)と減りますが、65歳以上は23.5万→25.8万人(+10.0%)と増えます。高齢化率は28.9%→35.0%へ。65歳以上のピークは圏全体で2045年です。熊本県全体では65歳以上が-3.0%と減る推計ですから、この圏域は県の平均とは逆を向いています。ただし圏内10市町村のうち3町(山都町・甲佐町・御船町)はすでに2025年がピークで、65歳以上人口が2045年までに減る市町村は3あります。熊本市という政令指定都市を抱える圏域の平均値は、郡部の町の数字をほとんど覆い隠してしまいます。

総人口65歳以上
0万22万45万68万90万20252030203520402045205071万26万
実データ(社人研 将来推計人口・2023年推計)。総人口は減り続ける一方、65歳以上のピークは2045年。

ランキング ── 市町村差経営がしんどくなる市町村・楽になる市町村

山都町(-45.6%)から中央区(+8.8%)まで54.4ポイントの開き。マイナスは6市区町です。なお山都町・甲佐町は薬局が8軒に満たないため、1軒あたりの数値は振れやすい点にご注意ください。圏内に薬局が1軒も無い自治体はありません。

山都町
-45.6%
甲佐町
-26.4%
御船町
-17.8%
西区
-6.3%
益城町
-5.2%
──── ここから経営が楽になる地域(需要増)────
東区
+6.1%
嘉島町
+6.1%
中央区
+8.8%

くわしい数字10市町村データ一覧

市区町村薬局高齢率
2025
1軒あたり処方せん
2025 → 2045
変化
中央区13624.9%8,525 → 9,278+8.8%
東区8827.1%14,348 → 15,222+6.1%
北区5931.4%17,885 → 16,977-5.1%
南区5728.0%16,154 → 17,080+5.7%
西区4731.9%15,075 → 14,130-6.3%
益城町1131.5%23,344 → 22,137-5.2%
御船町1035.4%14,419 → 11,857-17.8%
嘉島町1026.9%6,437 → 6,830+6.1%
山都町754.6%22,936 → 12,473-45.6%
甲佐町341.1%32,665 → 24,053-26.4%

※処方せん需要は熊本・上益城医療圏全体の実績(NDB)を市町村の高齢人口で按分した推計です。かかりつけ・地域連携・在宅の届出率は、熊本県では元データが未取込のため掲載していません。個店のランキングは作りません。

この地図の使い方(3段階のドリルダウン)

  • 熊本県(ひとつ上・Lv1)=10つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
  • 熊本・上益城医療圏(このページ・Lv2)=10市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
  • 市区町村(詳細・Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。

このレポートの範囲と、正直な限界

  • 【このレポートで言えること】地域単位(二次医療圏・市区町村)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
  • 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
  • 【処方せんの推計方法】熊本・上益城医療圏の院外処方せん実績(NDB 2023年・年間5,830,492枚)を、市町村ごとの65歳以上人口シェアで按分した推計です。実際の処方せんは市町村別には公表されていません(NDBの最小単位が二次医療圏のため)。
  • 【「経営体力の変化」の意味】圏域全体の処方せん総数を現在の水準に固定したうえで、圏内での高齢人口シェアの移動だけを見た相対値です。圏全体として処方せんが増えるか減るかは、ひとつ上の階層(熊本県=Lv1)の需要指数で別に示しています(この圏域は2025年を100として2045年に110.0=実数としては増えます)。
  • 【薬局数は2025年で固定】市町村別の推計では、薬局の数はいまのまま変わらないと置いています。新規開局・閉局による将来の店舗数の変化は含みません。
  • 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
  • 【閉局の数え方と集計期間】九州厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています(熊本・上益城医療圏で8件)。廃止届は全部で29件出ていますが、そのうち21件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだ=その場所から薬局が消えてはいない、と読めます(内訳は clo_gross / clo_relo として別に保持)。集計期間は直近12ヶ月(2025年5月〜2026年4月)で、九州厚生局管轄8県で統一した窓です(福岡県・佐賀県・大分県・宮崎県・沖縄県の公開値と同じ期間)。全国比較のために暦年2025(2025年1月〜12月・12ヶ月)でも数えており、この圏域では真の閉局8件・廃止届18件です。どちらの期間も、名簿の号がすべてそろっていることを確認しています。
  • 【多年の件数は下限です】廃止の名簿には欠号が5号(2024-02・2024-03・2024-05・2024-06・2024-08)あり、暦年2023・2024の件数は下限(実際にはもっと多い)です。上の集計期間はこの穴の外なので影響を受けません(詳細は熊本県ページ=Lv1の data_gaps.issue_coverage)。
  • 【閉局は「縮む地域だけの話」ではありません】この圏域で2025年に消えた8軒は、いずれも65歳以上人口がこれから増える市区町で起きています。65歳以上人口が減る3町で消えた薬局は0軒でした。1年ぶん・8軒という小さな数の観察であり、傾向として断定はできませんが、「需要が減る地域から順に薬局が消える」という思い込みは、少なくともこのデータからは支持されません。
  • 【機能の届出率は掲載していません】かかりつけ薬剤師指導料・地域連携薬局・在宅対応の届出率は、熊本県では薬局機能情報提供制度(GMIS)のデータが当データベースに未取込のため掲載していません。集計すると全店0%になりますが、それは「届け出ている薬局が無い」のではなく「データが無い」という意味です。他県版にはこの軸があります。
  • 【徒歩圏カバー率も掲載していません】250mメッシュ人口が熊本県分未投入のためです。
  • 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません。薬局の位置は届出上の市区町村コードで割り当てています(未割当0件)。熊本市は政令指定都市のため、5つの行政区に分けて集計しています。
  • 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
  • 【小さすぎる分母】山都町・甲佐町は薬局数が8軒に満たない自治体です。1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れるため、傾向としてのみお読みください。
  • 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類は掲載していません(Lv1と同じ理由・供給の統計モデルを再学習中のため)。

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