ヒト受精胚へのゲノム編集技術等に対する法的規制のあり方、合同会議で具体的な規制範囲と方針が示される
令和8年7月15日に、ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の取扱い等に関する合同会議の第2回が開催されました。
この会議は、こども家庭庁、文部科学省、厚生労働省の専門委員会が合同で実施したものです。
急速に発展するゲノム編集技術等のヒト受精胚への適用について、規制のあり方や具体的な技術範囲が幅広く議論されました。
全体として、科学的な安全性や倫理的な課題を踏まえ、厳格な対応を求めるトーンで会議が進められています。
こども家庭庁、文部科学省及び厚生労働省による「ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の取扱い等に関する合同会議」(※)(以下「合同会議」という。)を開催し、ゲノム編集技術等の取扱いの規制のあり方、運用及び技術の範囲等について幅広く検討を行う。
(参考資料1 ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の取扱い等に関する合同会議の開催について.pdf, Page 1)
主要な論点の一つ目は、ヒト受精胚等を用いた臨床利用に対する法律による規制の必要性です。
これまでは学会の会告による自主規制や国の指針による運用にとどまっており、実効性を担保する公的な法律は存在しませんでした。
しかし、臨床利用においては次世代以降へ引き継がれる影響や社会的・倫理的課題が不明確であるため、確実な実効性を担保する必要があります。
そのため、諸外国の罰則付き規制の整備状況も鑑み、我が国においても法律による規制が必要であると判断されました。
ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用は、現時点では容認されていないため世界的にも実績がなく、また指針上で行うことが可能な基礎的研究においても知見も乏しいことから、技術上の限界や生じ得るリスクについて十分に評価することができないなどの科学技術的課題がある。また、次世代以降へ引き継がれた際の影響等の社会的倫理的課題が不明確であり、研究として行われる臨床利用と医療提供として行われる臨床利用双方に対して、確実に実効性を担保することが必要である。これらへの対応として、諸外国においては罰則付きの法的規制が整備されていることも鑑み、当該技術を用いたヒト受精胚等の臨床利用に対しては、我が国においても規制の実効性が現状の制度(表2)以上に担保できるような制度的枠組を設けることが必要であり、本委員会では法律による規制が必要と判断した。
(参考資料4 ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚等の臨床利用のあり方に関する専門委員会 議論の整理(令和7年12月10日).pdf, Page 11)
二つ目の論点は、法的規制の対象となる具体的な技術の範囲についてです。
規制の骨格として、DNAの配列を直接改変するゲノム編集や、従来からのウイルスベクター等を用いた遺伝子組換え技術が全て対象とされました。
さらに、直接塩基配列を変化させずに遺伝子発現を制御するエピゲノム編集や、RNAの配列を改変するトランスクリプトーム編集なども原則として規制の範囲に含まれます。
これらに加え、外来の核酸の導入や、ミトコンドリア病に対する核置換術、幹細胞から生殖細胞を作成する技術なども個別に指定して規制対象とする案が示されています。
ゲノム編集、エピゲノム編集/修飾、トランスクリプトーム編集/修飾、エピトランスクリプトーム編集/修飾、その他、を基本的な骨格としてはいかがか。さらに、ゲノム編集に含まれない従来からの遺伝子組換え技術の枠を設けてはいかがか。
(資料1 具体的な規制の範囲について.pdf, Page 7)
三つ目の論点は、生殖補助医療に関連する既存技術の規制対象からの除外です。
現時点で不妊治療などの生殖補助医療に広く用いられている技術については、一定の安全性が確立していると評価されました。
これらの技術は、予測し得ない遺伝子改変をもたらすものではないと考えられています。
具体的には、顕微授精や未成熟卵体外成熟、胚や生殖細胞の凍結・融解、高濃度ヒアルロン酸含有培養液の使用などが、規制の対象外であることを明示する方針が示されました。
現時点で生殖補助医療に広く用いられている技術については、一定の安全性が確立している。下表のような技術は、規制の対象外であることを明示することとしてはどうか。
(資料1 具体的な規制の範囲について.pdf, Page 8)
今後のスケジュールとして、国においては引き続き法的規制の策定に向けた検討が進められる予定です。
技術の進歩は非常に速いため、将来的な科学技術の進展や社会的価値観の変化、国際的な動向を踏まえる必要があります。
そのため、一度決めた規制を固定化するのではなく、柔軟かつ段階的に見直しが可能な枠組みを構築していくことが重要とされています。
国民的な合意形成を図りつつ、実効性のある法制度の整備が進められることが注視されます。
規制対象範囲を定めるにあたり、将来的に科学技術の進展や社会的価値観の変化、国際的な規制環境の動向等を踏まえ、柔軟かつ段階的に見直し可能な枠組みとすることが重要である。ヒトゲノム編集胚等の臨床利用の導入に際して必要な安全性等に関する評価方法についても、諸外国における議論の過程や検討状況等も参考にしながら、我が国の状況に合わせて引き続き検討が進められることが重要である。
(資料2-1 山口先生プレゼンテーション資料.pdf, Page 23)
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