和歌山県田辺(二次医療圏)

CrossHealth / 薬局持久度レポート

薬局が1軒もない町と、高齢者が増える町が、同じ圏にある

田辺医療圏5市町の薬局を、供給・高齢化・経営体力で見える化。市区町村ごとの詳細レポートは順次公開します。

対象 田辺医療圏 5市町期間 2025年 → 2045年概要版・無料

田辺医療圏は5つの市町からなる、和歌山県の紀南にある圏域です。薬局69軒のうち43軒(62.3%)が田辺市にあり、いっぽうすさみ町には調剤薬局が1軒もありません。65歳以上人口の増減で見た圏内の落差は51.8ポイント(すさみ町-33.4% 〜 上富田町+18.4%)で、和歌山県の7医療圏どうしの落差(34.1ポイント)よりも大きく、県内7圏で最大です。

5
田辺医療圏の市町
69
圏内の薬局数
1
薬局が1軒もない自治体
-5〜+25%
経営体力の変化レンジ(市町差)

田辺医療圏の面積は約1,574km²で、和歌山県の33%——県土のおよそ3分の1を占めます。薬局は69軒で県内の13.8%ですから、広さのわりに薬局は薄い圏域です。田辺市は2005年に龍神村・中辺路町・大塔村・本宮町と合併して約1,023km²(県内の市町村で最大・県土の22%)になりました。圏全体では65歳以上人口が-5.6%と減り、ピークは2025年——つまりすでに減っていく局面です。総人口は11.3万→8.4万人(-26.2%)。ところが圏内を割ると、上富田町だけは65歳以上が+18.4%と増えます。経営体力(薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化・圏内の相対値)で見ると、いちばん沈むのが白浜町(-4.6%)、いちばん伸びるのが上富田町(+25.4%)で、その差は30.0ポイント。薬局のある4市町のうち3市町がマイナス側にいます。高齢化率がいちばん高いのはすさみ町で、2025年50.6%→2045年58.1%。そのすさみ町に、調剤薬局は1軒もありません。圏の平均(需要-5.6%)は、田辺市が圏の高齢人口の56.9%を抱えていることで決まっており、圏の平均は圏内のどの町の実感でもありません。閉局については、この12ヶ月に出た廃止届は4件、うち3件は移転・承継で事業が続き、そのまま消えたのは1軒(1.45%)でした。件数が1桁のため、この圏で閉局の多い少ないを論じることはできません。この圏で見るべきは閉局の数ではなく、すでに薬局がいない自治体があるという事実のほうです。機能の届出では、かかりつけ薬剤師指導料の届出率が65.2%で県平均(66.9%)並み、在宅患者訪問薬剤管理指導は28.8%で県平均(46.8%)を下回り、7医療圏で6位です。

地図 ── 地域差を見る薬局1軒あたり処方せんの、市町ごとの将来

色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化(=経営体力)。緑=圏内で相対的に増える、赤=減る。いちばん赤いのが白浜町(-4.6%)、いちばん緑なのが上富田町(+25.4%)で、同じ田辺医療圏の中に30.0ポイントの開きがあります。すさみ町は薬局が0軒のため色が付きません(1軒あたりの数値が定義できないため)。

白浜町:薬局8/1軒あたり処方せん -4.6%白浜町田辺市:薬局43/1軒あたり処方せん -1.1%田辺市みなべ町:薬局8/1軒あたり処方せん -0.7%なべ町上富田町:薬局10/1軒あたり処方せん +25.4%富田町すさみ町:薬局なしさみ町
色=経営体力の変化(→2045)
減る(-5%)増える(+25%)
薬局なし(すさみ町)
市区町村そのものの形で塗り分けています。

人口動態 ── 需要の源田辺医療圏は「人も、お年寄りも、もう減る」

なぜ市町で明暗が分かれるのか。もとをたどると人口の動きです。田辺医療圏全体では、総人口は11.3万→8.4万人(-26.2%)と減り、65歳以上も4.1万→3.9万人(-5.6%)と減ります。高齢化率は36.6%→46.8%へ。65歳以上のピークは2025年で、圏内5市町のうち4市町ではそのピークがすでに2025年——これから減っていく局面に入っています。65歳以上人口が2045年までに減る市町は4、増えるのは上富田町の1町だけです。

総人口65歳以上
0万5万10万15万20万2025203020352040204520508万4万
実データ(社人研 将来推計人口・2023年推計)。総人口は2025年から2050年まで一貫して減り、65歳以上のピークは2025年。

薬局のいない町すさみ町の高齢化率は50.6%、薬局は0軒

すさみ町(2025年の人口3,248人・うち65歳以上1,644人・高齢化率50.6%)には、調剤を行う薬局が1軒もありません。2045年の高齢化率は58.1%、総人口は-41.9%と推計されています。和歌山県全体では30市町村のうち3町村が薬局0軒で、田辺医療圏のすさみ町はそのひとつです。住民は隣接する市町の薬局を利用しているとみられ、「薬が手に入らない」という意味ではありません。ただし、1軒あたり処方せんや届出率といった「薬局を分母にする指標」は、この町については計算できません。圏の平均値だけを見ていると、この空白は数字から消えます。

ランキング ── 市町差経営がしんどくなる市町・楽になる市町

白浜町(-4.6%)から上富田町(+25.4%)まで30.0ポイントの開き。マイナスは薬局のある4市町のうち3市町です。田辺医療圏は、薬局のある市町がいずれも8軒以上あり、和歌山県7医療圏のなかで「分母が小さすぎる自治体を含まない」唯一の圏域です(県内では12市町村が8軒未満)。そのぶん市町どうしの比較が読みやすい圏になっています。

白浜町
-4.6%
田辺市
-1.1%
──── ここから経営が楽になる地域(需要増)────
みなべ町
-0.7%
上富田町
+25.4%
薬局0の自治体(すさみ町)はランキング対象外です

くわしい数字5市町データ一覧

市区町村薬局高齢率
2025
1軒あたり処方せん
2025 → 2045
変化
田辺市4336.4%9,820 → 9,716-1.1%
上富田町1028.9%7,897 → 9,904+25.4%
白浜町841.2%17,603 → 16,799-4.6%
みなべ町835.9%8,820 → 8,757-0.7%
すさみ町050.6%薬局なし

※処方せん需要は田辺医療圏全体の実績(NDB)を市町の高齢人口で按分した推計です。すさみ町は薬局0軒のため1軒あたりの値がありません。個店のランキングは作りません。

この地図の使い方(3段階のドリルダウン)

  • 和歌山県(ひとつ上・Lv1)=7つの二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
  • 田辺医療圏(このページ・Lv2)=5市町で「同じ圏域の中の差」を見る。
  • 市町(詳細・Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。

このレポートの範囲と、正直な限界

  • 【このレポートで言えること】地域単位(二次医療圏・市区町村)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
  • 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
  • 【処方せんの推計方法】田辺医療圏の院外処方せん実績(NDB 2023年・年間742,072枚)を、市町ごとの65歳以上人口シェアで按分した推計です。実際の処方せんは市町別には公表されていません(NDBの最小単位が二次医療圏のため)。
  • 【按分は居住地ベースであること】按分に使っているのは「住んでいる人」の年齢構成です。病院・診療所が中心市に集まっている圏域では、周辺の町の住民が中心市の医療機関にかかり、その門前の薬局で受け取ります。したがって田辺市のような中心市の「1軒あたり処方せん」は実際より低めに、周辺の町は高めに出る傾向があります。市町の順位づけには使わず、変化の向きを読むための指標としてお使いください。
  • 【「経営体力の変化」の意味】圏域全体の処方せん総数を現在の水準に固定したうえで、圏内での高齢人口シェアの移動だけを見た相対値です。圏全体として処方せんが増えるか減るかは、ひとつ上の階層(和歌山県=Lv1)の需要指数で別に示しています(この圏域は2025年を100として2045年に94.4)。
  • 【薬局数は2025年で固定】市町別の推計では、薬局の数はいまのまま変わらないと置いています。新規開局・閉局による将来の店舗数の変化は含みません。
  • 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
  • 【閉局の数え方と集計期間】近畿厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています(田辺医療圏で1件)。廃止届は全部で4件出ていますが、そのうち3件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだ=その場所から薬局が消えてはいない、と読めます(内訳は clo_gross / clo_relo として別に保持)。和歌山県分の廃止名簿は2025年7月号からの収録のため、集計期間は暦年ではなく完全な12ヶ月がそろう2025年5月〜2026年4月(12ヶ月)としています。大阪府・千葉県の公開値(暦年2025)と件数を直接並べることはできません。
  • 【件数が少ないこと】田辺医療圏の真の閉局は12ヶ月で1件、廃止届は4件です。市町別に割ると0〜1件になり、閉局率や「承継されなかった割合」は1件の増減で大きく振れます。このページでは閉局を主題に置かず、事実として記載するにとどめています。
  • 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません。薬局の位置は届出上の市町村コード、または座標の市町村境界への点内判定で割り当てています。
  • 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づき、申告データのある66店を分母にしています(圏内全69店のうち)。届出=実際の提供実績ではありません。
  • 【薬局0軒の自治体】すさみ町には調剤薬局がありません。薬局を分母にする指標(1軒あたり処方せん・届出率・閉局率)は計算できないため、表・地図では空欄になります。隣接市町の薬局を利用している住民が多く、「薬が手に入らない」という意味ではありません。到達時間の分析は250mメッシュのデータが和歌山県分未投入のため含めていません。
  • 【医療圏の区分】みなべ町は日高郡ですが、第8次医療計画では田辺医療圏に属します(御坊医療圏ではありません)。本分析は国土数値情報A38由来の医療圏マスタ(NDBの335圏と一致)に従っています。
  • 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。
  • 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計と、医療圏の「都市型/郊外型」分類は掲載していません(Lv1と同じ理由・供給の統計モデルを再学習中のため)。

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