「勤務時間が短い正規型」の個人事業主等における社会保険適用判断を明確化、厚労省が新通知
厚生労働省は、令和8年9月14日、勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等の被保険者資格の取扱いについて、新たな通知を発出しました。
この通知は、全国健康保険協会理事長、健康保険組合理事長、および日本年金機構理事長宛てに送られたものです。
近年、個人事業主等を極端に短い勤務時間の正規型労働者として雇用し、健康保険等の資格取得届を提出する一方で、報酬を上回る会費等を支払わせるような事例が報告されています。
このような実態を受け、今回の通知では、事業所と労働者との間の常用的使用関係の有無を判断するための具体的な基準が示されました。
本日、勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業
主等に係る被保険者資格の取扱いについて、別添のとおり全国健康保険協会理事
長、健康保険組合理事長及び日本年金機構理事長へ通知を発出いたしましたので
お知らせいたします。
(勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて[173KB].pdf, Page 1)
今回の通知では、被保険者資格の有無を判定するにあたり、「①報酬が業務の対価として経常的な支払いとは認められない場合」と「②業務が経常的な労務の提供と認められない場合」の2つの基準が示されています。
これら①と②のいずれにも該当する場合は、原則として被保険者資格を有さないものとして取り扱われます。一方で、①又は②のいずれかに該当する場合は、就労の実態に照らして、個別具体的に常用的使用関係の有無を総合的に判断することとされています。
まず、基準①である、報酬が業務の対価として経常的に支払われていると認められるかどうかについてです。
具体的には、労働者が受け取る報酬を上回る額の会費などを事業所に支払っている場合、実質的に業務の対価に見合った報酬を受けておらず、業務の対価としての経常的な支払いがあるとは言えないため、原則として常用的使用関係は認められません。
また、自らの業務を第三者に委託した上で、その第三者に雇用される形をとり、実質的に自分で支払った委託費が報酬となっている場合も同様です。
さらに、会費等が報酬と同額かそれを下回る場合であっても、会費の額が報酬の多くを占めていることが常態化している場合は、個別に慎重な判断が必要とされています。
なお、ここでの会費等には、勉強費、広告費、掲載料、参加料、コンサルタント料、協力金、委託費など、名称の如何を問わずすべて含まれます。
また、個人事業主等から事業所の関連法人等へ会費等を支払わせている場合であっても、それが実質的な雇用条件となっている場合は、同様に常用的使用関係にあるとは認められません。
① 報酬が業務の対価として経常的な支払いとは認められない場合
勤務時間が短い正規型労働者が事業所に対して、労働者として受け取る報
酬を上回る額の会費等を支払っている場合、実質的に業務の対価に見合った
報酬を受けておらず、業務の対価としての経常的な支払いがあるものとは言
えないため、原則として、当該事業所との間に常用的使用関係があるとは認め
られない。
(勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて[173KB].pdf, Page 3)
次に、基準②である「業務が経常的な労務の提供と認められない場合」の判断要素についてです。その一つ目が、勤務時間が極端に短い場合における取扱いです。
1週間または1ヶ月の労働時間が極端に短い場合は、一般的に経常的な労務の提供を行っているとは言い難いと判断されます。
就労の実態を総合的に勘案し、社会通念に照らして経常的に労務を提供していると言えないと判断される場合は、常用的使用関係があるとは認められません。
これにより、形だけの雇用契約を結び、極端に短い時間だけ働くようなケースが排除されることになります。
(1) 勤務時間が極端に短い場合
1週間又は1月間の労働時間が極端に短い場合は、一般的に経常的な労
務の提供を行っているとは言い難く、事業所との間に常用的使用関係があ
ると認められない可能性がある。
(勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて[173KB].pdf, Page 4)
基準②のもう一つの判断要素が、業務の内容や目的が特定の活動にとどまっているかどうかです。
例えば、単なる知識向上のためのアンケートへの回答や、勉強会への参加など、その業務の実態が単なる自己研さんに過ぎない活動は経常的な労務とは認められません。
また、具体的な指揮命令に基づかない活動報告や情報の共有、事業紹介への協力なども、経常的な労務の提供とは言えません。
労働者同士の相互互助的な連携に過ぎないものや、個人事業主として行っている事業活動を形式的にそのまま事業所の業務としている場合も同様です。
その他、業務の内容や実質が乏しく、不適切に被保険者資格を取得するための形式的な業務に過ぎないと認められるものは、常用的使用関係を否定する要因となります。
(2) 業務の内容又は目的が、専ら以下のいずれかにとどまっていると認めら
れる場合
・ 単なる知識向上のためのアンケートへの回答や勉強会への参加等、そ
の業務の実態が単なる自己研さんに過ぎないもの
(勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて[173KB].pdf, Page 4)
今回の通知により、事業所と労働者との間の常用的使用関係の有無は、契約の文言だけでなく、労働日数や時間、就労形態などの実態に照らして個別具体的に総合判断されることが改めて明確にされました。
この取扱いは、主として労働者から会費等を徴収し、不適切な健康保険等の適用が疑われる事案を想定したものです。
関係機関には、今回の明確化された基準に基づき、遺漏のないよう適切な事務処理を行うことが求められています。
健康保険等の被保険者資格の取扱いについて、事業所と労働者との間の常用
的使用関係の有無を判断するに当たっては、契約の文言のみを見て判断するの
ではなく、労働者の労働日数、労働時間、就労形態、勤務内容など、就労の実態
に照らして個別具体的に総合的に判断することとしているところである。
(勤務時間が短い正規型の労働者として事業所に使用されている個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて[173KB].pdf, Page 3)
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