長野県諏訪(二次医療圏)

CrossHealth / 薬局持久度レポート

県内でいちばん「薄い」のは、山の圏域ではなく諏訪

諏訪医療圏6市町村の薬局を、供給・高齢化・経営体力で見える化。市区町村ごとの詳細レポートは順次公開します。

対象 諏訪医療圏 6市町村期間 2025年 → 2045年概要版・無料

この記事の数字について:出所は公開データ(厚生局・薬局機能情報提供制度=GMIS・NDBオープンデータ・社会保障人口問題研究所の将来推計人口など)。分析期間は上の「対象・期間」のとおりで、将来値は推計であり幅があります。検算のやり方と不確実性の扱いは方法論のページ →で説明しています。

薬局1軒あたりの処方せん9,923枚は県内10医療圏で最少。かかりつけ44.6%・地域連携29.7%も県内最低。けれど諏訪医療圏は面積715.4km²と県内でいちばん小さく、薬局1軒あたり7.1km²は県内で2番目に密です。薄さの正体は距離ではなく、院外処方率69.5%=県内最低——処方せんの30.5%が院内で完結していて、薬局に届いていないことにあります。

6
諏訪医療圏の市町村
101
圏内の薬局数
3
2025年に閉じた薬局(承継・移転を除く)
-15〜+11%
経営体力の変化レンジ(市町村差)

諏訪医療圏は6市町村・薬局101軒。諏訪市33軒・茅野市28軒・岡谷市25軒と湖の周りに分散して立地し、薬局0軒の自治体はありません。それなのに「薄さ」の指標がそろって県内最低です。かかりつけ44.6%(県平均66.2%)、地域連携29.7%、在宅34.7%は下から2番目。1軒あたり処方せん9,923枚も県内最少です。ただしこれを「薬局が多すぎる」と読むのは誤りです。人口1軒あたり1,839人は県内で薄い側ではなく、効いているのは院外処方率69.5%=県内最低——院内処方の比率が県内でいちばん高い圏域だという事実です。需要の先行きは、65歳以上人口が2025→2045でほぼ増減なし(6.4万→6.4万人)と県内では安定側です。圏内では原村(+11.0%)が伸び、下諏訪町(-15.4%)と岡谷市が沈みます。暦年2025の真の閉局3件のうち2件は下諏訪町で、薬局11軒の町としては重い動きです。

地図 ── 地域差を見る薬局1軒あたり処方せんの、市町村ごとの将来

色は薬局1軒あたり処方せんの2025→2045変化(=経営体力)。緑=圏内で相対的に増える、赤=減る。いちばん赤いのが下諏訪町(-15.4%)、いちばん緑なのが原村(+11.0%)で、同じ諏訪医療圏の中に26.4ポイントの開きがあります。

下諏訪町:薬局11/1軒あたり処方せん -15.4%諏訪町岡谷市:薬局25/1軒あたり処方せん -7.5%岡谷市富士見町:薬局3/1軒あたり処方せん -1.1%士見町諏訪市:薬局33/1軒あたり処方せん +2.5%諏訪市茅野市:薬局28/1軒あたり処方せん +9.3%茅野市原村:薬局1/1軒あたり処方せん +11.0%原村
色=経営体力の変化(→2045)
減る(-15%)増える(+11%)
市区町村そのものの形で塗り分けています。

距離 ── この圏域のかたち薬局1軒がかかえる面積は、諏訪市と富士見町で14.6倍ちがう

諏訪医療圏の面積は715.4km²(県内10位)、薬局1軒あたり7.1km²は県内9位の広さです(県平均13.4km²)。市町村別では諏訪市の3.3km²から富士見町の48.1km²まで開きます。いっぽう薬局1軒あたりの人口は圏全体で1,839人(県平均1,951人)。面積は道路網・公共交通・冬期の通行止めを含まない幾何の指標です。

徒歩圏 ── 「近くの薬局」の実像(直線近似)徒歩10分圏に住む人は54.0%(直線近似)

250mメッシュ人口(2025年推計)で見ると、諏訪医療圏で最寄り薬局まで徒歩10分圏(直線近似)に住む人は54.0%(県全体54.4%)、20分圏で76.5%です。徒歩10分圏の外には85,533人が住んでいます。市町村別では下諏訪町の73.8%から原村の12.1%まで開きます。この値は直線距離×迂回係数1.3÷分速80mの近似で、OSRMの実道路網による実測ではありません(実測化すると数ポイント下がる傾向があります)。冬期の通行止め・公共交通は含みません。

人口動態 ── 需要の源諏訪医療圏の65歳以上人口はほぼ横ばい

なぜ市町村で明暗が分かれるのか。もとをたどると人口の動きです。諏訪医療圏全体では、総人口は18.6万→15.2万人(-18.0%)と減り、65歳以上は6.4万→6.4万人(±0%)と、ほぼ増減なしです。高齢化率は34.2%→41.7%へ。65歳以上のピークは2040年で、その波がいつ来るかが市町村で違うのです。圏内6市町村のうち3市町村でピークが2025年、65歳以上人口が2045年までに減る市町村は3あります。

総人口65歳以上
0万5万10万15万20万20252030203520402045205014万6万
実データ(社人研 将来推計人口・2023年推計)。65歳以上のピークは2040年です。

医療計画 ── 県の記述県の医療計画は、この圏域をどう書いているか

この圏域を名指しした記述は、収録済みの計画本文からは見つかりませんでした。

4年の推移この圏域で、4年間に閉じた薬局と、引き継がれた薬局

長野県は廃止名簿が2022年から連続してそろうため、暦年で4年ぶんを並べられます。諏訪医療圏の真の閉局は1件→0件→2件→3件、移転・承継は1件→1件→4件→10件でした。4年合計では真の閉局6件・移転承継16件、薬局101軒に対する年平均の真の閉局率は1.49%になります。注意が要るのは承継側です。暦年2025の移転・承継10件のうち9件は、県全体で特定の日にまとまって出た法人単位の一斉付け替えの一部で、個々の薬局の代替わりが活発だったという意味ではありません。1年ぶんだけを見ると数件の差で印象が変わってしまう規模なので、単年の数字は幅をもって読んでください。

ランキング ── 市町村差経営がしんどくなる市町村・楽になる市町村

下諏訪町(-15.4%)から原村(+11.0%)まで26.4ポイント。湖の南北で明暗が割れ、茅野・諏訪がプラス側、岡谷・下諏訪がマイナス側です。なお富士見町・原村は薬局8軒未満のため1軒あたりの数値は振れやすい点にご注意ください。

下諏訪町
-15.4%
岡谷市
-7.5%
富士見町
-1.1%
──── ここから経営が楽になる地域(需要増)────
諏訪市
+2.5%
茅野市
+9.3%
原村
+11.0%

くわしい数字6市町村データ一覧

市区町村薬局高齢率
2025
1軒あたり処方せん
2025 → 2045
変化
諏訪市3332.1%7,186 → 7,365+2.5%
茅野市2832.0%9,895 → 10,817+9.3%
岡谷市2535.3%9,991 → 9,240-7.5%
下諏訪町1139.3%10,042 → 8,499-15.4%
富士見町338.9%27,571 → 27,256-1.1%
原村137.6%45,036 → 49,984+11.0%

※処方せん需要は諏訪医療圏全体の実績(NDB)を市町村の高齢人口で按分した推計です。薬局が8軒に満たない自治体では1軒あたりの値が大きく振れます。個店のランキングは作りません。

この地図の使い方(3段階のドリルダウン)

  • 長野県(ひとつ上・Lv1)=10の二次医療圏で「どの地域が細るか」をざっくり。
  • 諏訪医療圏(このページ・Lv2)=6市町村で「同じ圏域の中の差」を見る。
  • 市町村(詳細・Lv3)=境界・薬局分布・経営シナリオまで。

医療圏の型 ── 競争で減るのか、需要で減るのかこの圏は郊外型(需要減)です

薬局が閉じていく筋道には、大きく2つあります。ひとつは近くに薬局が多く、競争のなかで数が絞られていく道(都市型)。もうひとつは周りに薬局が少ないまま、患者そのものが減っていく道(郊外型)。諏訪医療圏にいまある101軒それぞれについて、どちらの効き方が強いかを計算し、閉局の起こりやすさで重みづけて足し上げると、競争側の比率は0.37です(0.5以上なら都市型、それ未満なら郊外型)。この地域は郊外型(需要減)にあたります。需要の側は、この地域の総人口が2025→2045で-18.0%です。社人研の推計では、この地域は減り方が急な側(20年で15%超の減少)に入ります。全国47都道府県・335の二次医療圏・65,634行(うち移転や承継を除いた本当の閉局3,952件)を学習した統計モデルによる分類です。特定の地方だけで学んだモデルを他の県に当てはめたものではありません。共通の係数は47都道府県すべての実データから学習しており、この地域の値は、この地域に実際にある薬局の実測値から計算しています。この分類は「どの筋道で薬局が減りやすい地域か」を示すもので、個々の薬局の見通しではありませんし、出店や撤退の判断もしません。

機能の届出 ── 厚生局の名簿で数える地域支援・医薬品供給対応体制加算の届出は92.8%です

薬局の機能は、これまで薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告で数えていましたが、ここからは地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で数え直しています。諏訪医療圏でこの名簿に載っている保険薬局は97軒で、そのうち届出があるのは──地域支援・医薬品供給対応体制加算 90軒=92.8%、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)(推定) 40軒=41.2%、在宅薬学総合体制加算 26軒=26.8%、電子的調剤情報連携体制整備加算(推定) 64軒=66.0%です。名簿の版は令和8年7月1日版(東北厚生局=青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県のみ令和8年6月1日版。7月分が未公開のため入手可能な最新を使用)。8つの厚生局・47都道府県をすべて同じ月の版でそろえてあるので、県どうしを並べて比べられます(GMISの自己申告は県によって取り込みの穴があり、これができませんでした)。推定を含む項目があります。「かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)」は令和8年度改定でかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料は服薬管理指導料に統合され、単独の届出名称が無くなりました。新様式の名簿にある「服薬管理指導料の注1」を代理指標として数えた推定値です(告示・通知文の逐語確認はしていません)。「電子的調剤情報連携体制整備加算」は令和8年度改定で「医療DX推進体制整備加算」の後継と判断して数えた推定値です(同一制度の後継という対応関係は未確認)。このページがこれまで載せていた届出率は、改定前の版の名簿を店名で突き合わせて数えたものでした。並べると、かかりつけ薬剤師(服薬管理指導料の注1)は今回41.2%/これまで44.6%(差-3.4ポイント)、地域支援・医薬品供給対応体制加算は今回92.8%/これまで29.7%(差+63.1ポイント)、在宅薬学総合体制加算は今回26.8%/これまで34.7%(差-7.9ポイント)です。差の主な理由は3つで、(1)令和8年度改定で後発医薬品調剤体制加算が地域支援・医薬品供給対応体制加算に統合されたこと(地域支援の届出率が跳ね上がる)、(2)かかりつけ薬剤師指導料が服薬管理指導料に統合され、代理指標に切り替えたこと、(3)これまでが店名の突き合わせ、今回が医療機関コードでの集計であること。どちらかが誤りという意味ではありません。これから先は、47都道府県を同じ月の版でそろえた今回の数え方を主に使います。分母は名簿に載っている薬局の数で、このページの他の場所に出てくるGMIS由来の薬局数とは出典が違うため一致しません。また届出は「その体制をとると届け出た」という記録で、実際に提供された量ではありません。

このレポートの範囲と、正直な限界

  • 【このレポートで言えること】地域単位(二次医療圏・市町村)の薬局供給と、将来の高齢人口から見た需要の傾き。地域の持続可能性を映すためのものです。
  • 【言えないこと】個々の薬局の経営状態・存続の見通しは一切わかりませんし、扱いません。個店のランキングや「この店は無くなる」といった予測は作りません。出店・撤退の判断はしません。事実をお見せし、判断は読み手に委ねます。
  • 【処方せんの推計方法】諏訪医療圏の院外処方せん実績(NDB 2023年・年間1,002,191枚)を、市町村ごとの65歳以上人口シェアで按分した推計です。実際の処方せんは市町村別には公表されていません(NDBの最小単位が二次医療圏のため)。
  • 【「経営体力の変化」の意味】圏域全体の処方せん総数を現在の水準に固定したうえで、圏内での高齢人口シェアの移動だけを見た相対値です。圏全体として処方せんが増えるか減るかは、ひとつ上の階層(長野県=Lv1)の需要指数で別に示しています(この圏域は2025年を100として2045年に100.0)。
  • 【薬局数は2025年で固定】市町村別の推計では、薬局の数はいまのまま変わらないと置いています。新規開局・閉局による将来の店舗数の変化は含みません。
  • 【高齢人口=需要の代理指標】処方せんの多くを高齢者が占めるという前提を置いています。受診率・在宅化率・オンライン服薬指導・後発品比率などの制度変更は織り込んでいません。
  • 【閉局の数え方と集計期間】関東信越厚生局の保険薬局廃止情報のうち、移転・承継を除いた「真の閉局」だけを数えています(諏訪医療圏で3件)。廃止届は全部で13件出ていますが、そのうち10件は新しい機関コードが記載されており、別の担い手が事業を引き継いだ=その場所から薬局が消えてはいない、と読めます(内訳は clo_gross / clo_relo として別に保持)。既定の集計期間は暦年2025(暦年2025年(1〜12月))です。名簿が2022年から連続してそろうため、暦年2022〜2025の4年ぶんも clo_multiyear に持っています。件数は生成時点の名簿によるもので、掲載遅れにより今後も増える可能性があります。
  • 【廃止届の総数を閉局と読まないでください】長野県全体では、廃止届の80.5%が移転・承継で、しかもその大半が特定の日にまとまって出た法人単位の一斉付け替えです(Lv1の注記を参照)。この圏域でも、暦年2025の移転・承継10件のうち9件がこの一斉付け替えに当たります(clo_relo_bulk_2025 として別に保持)。承継の件数を「地域で代替わりが活発」と読まないでください。
  • 【面積の指標について】面積は国土数値情報の行政区域ポリゴンから計算した幾何の値です。道路網・公共交通・冬期の通行止め・地形の起伏はまったく含みません。「薬局1軒あたり7.1km²」は距離のものさしであって、住民が実際にどれだけ移動するかではありません。
  • 【徒歩カバー率は直線近似】徒歩10分圏カバー率54.0%は、250mメッシュ推計人口(2025年)と県内の薬局から、直線距離×迂回係数1.3÷分速80mで近似した値です(walk_access.access_method = "fallback_haversine")。OSRM実道路網による実測ではなく、実測化すると数ポイント下がる傾向があります(河川・線路・冬期条件で迂回が生じるため)。最寄り薬局は市町村・医療圏の境界を越えて探しています(越境あり・県境は越えません)。
  • 【薬局の範囲】調剤を行う薬局のみを対象とし、ドラッグストア専業(調剤なし)は含みません。薬局の位置は届出上の市町村コードで割り当てています。
  • 【機能の届出率】かかりつけ薬剤師指導料などの届出状況は薬局機能情報提供制度(GMIS)の自己申告に基づきます。この圏域は全101店に届出データがあり、分母は薬局数と一致します。届出=実際の提供実績ではありません。
  • 【将来人口】国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(2023年推計)」。推計であり、実績ではありません。e65_peak_year が2025年の自治体は、起点年がピーク=すでに減少局面という意味です。
  • 【小さすぎる分母】富士見町・原村は薬局数が8軒に満たない自治体です。1軒あたりの数値は1店の開廃で大きく振れるため、傾向としてのみお読みください。届出率も同様で、薬局1〜2軒の自治体では届け出るかどうかで0%か100%かに振れます。
  • 【いま出していない数字】2045年の薬局店数の推計は、いまも出していません(参入と退出の数え方がそろわず、そのまま回すと全国で薬局が2割以上増える計算になってしまうため)。医療圏の「都市型/郊外型」分類は、供給の統計モデルが47都道府県フル学習になったので掲載に切り替えました。

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