生命科学・医学系研究の倫理指針見直しへ 第1タスクフォースが倫理指針の課題検討を開始
令和8年10月30日に「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議第1タスクフォース」の第1回会議が開催されました。
このタスクフォースは、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の運用上の課題を洗い出し、見直し案をまとめるために設置された専門の組織です。
合同会議のもとに設置され、現場の混乱を防ぎながら研究を円滑に進めるための具体的な見直しが議論されています。
今回の会議では、現行の倫理指針における用語の定義や手続の課題について、優先的に検討を進める事項が提示されました。
【日時】令和8年 10 月 30 日(金)13:00-15:00
【場所】ハイブリッド会議(厚生労働省9階国際課・厚生科学課会議室+オンライン)
【議題】1) 倫理指針の見直しの各論点について 2) その他
(議事次第.pdf, Page 1)
「生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議の開催について(令和7年2月 12 日決定)」に基づき、下記の特定の事項を調査・検討するタスクフォースの設置に関し、別紙1及び2のとおり委員及び座長を指名する。
(資料1:生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議におけるタスクフォース委員及び座長の指名について.pdf, Page 1)
主要な論点における1つ目の重要な変更点は、「既存試料・情報」の定義と取扱いの見直しです。
現行の指針ガイダンスでは、研究計画書の作成前か後かという時間軸や、取得目的によって分類されています。
しかし、研究者や一般市民にとって「既存」という言葉の解釈が分かりにくく、現場で混乱が生じているとの指摘がなされていました。
そのため、取得された時点ではなく、取得される対象の性質や利用目的に合わせた理解しやすい表現への見直しが検討されています。
医療情報の二次利用やレジストリ研究の実態に即した整理を行うことが目指されています。
「既存試料・情報」の定義について見直すことを前提にした場合、* 用語を見直すべきか。* 用語はこのままで定義の内容を見直すべきか。→ 検討するにあたり、試料・情報の取扱については、取得される時点ではなく取得されるものに可能な限り合わせた同意手続等とする事としてはどうか。
(資料2:倫理指針の見直しの各論点について.pdf, Page 5)
「新規/既存」を時間軸で区別する必要性は低く、取得目的を軸としてはどうか(神里委員など)
(参考資料3 : 各論点に関する意見一覧.pdf, Page 1)
2つ目の変更点は、研究における「介入」の定義の明確化です。
現行の指針における定義では、研究目的で行う検査などがすべて介入と読めてしまう構造になっていました。
そのため、健常者を対象とした研究で単に採血を行うような場合でも、「軽微な侵襲」に加えて「介入研究」と整理される課題がありました。
今回の見直しでは、臨床研究法との整合性を考慮しつつ、研究デザインとしての「介入」と単なる検査行為などの区別を明確にする方向で検討が進められています。
研究者が迷わずに判断できるよう、侵襲の概念と混同しない形での定義再整理が行われます。
現行の定義においては、研究目的で行う検査は全て介入と読める。
(資料2:倫理指針の見直しの各論点について.pdf, Page 6)
「介入」(倫理指針第2(3))の定義について、臨床研究法との整合性も考慮し、定義を明確化する。
(参考資料2: 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 見直しの方向性について(取りまとめ)(令和7年12月24日).pdf, Page 3)
「介入」と「介入研究」の概念が混同されている(玉腰委員など)
(参考資料3 : 各論点に関する意見一覧.pdf, Page 1)
3つ目の変更点は、インフォームド・コンセント(IC)等の手続の統一と「オプトアウト」の定義の新設です。
現行指針では「文書IC」「口頭IC」「適切な同意」といった多様な用語が混在し、事務局の点検作業や研究者の理解において複雑化が指摘されていました。
これら同意手続の用語を「IC」へと統一し、手続の大枠を整理する方針が示されています。
さらに、倫理指針ガイダンスのみで用いられていた「オプトアウト」について、指針本文に明確な定義を新設することが提案されました。
研究対象者等に通知し拒否できる機会を保障する方法として規定し、個人情報保護法上のオプトアウトとの混同を防ぐ配慮がなされます。
同意手続等については、「文書IC」、「口頭IC」と「適切な同意」という用語をなくし、「IC」のみに整理し、「IC」とオプトアウトの2本柱へと見直す。
(参考資料2: 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針 見直しの方向性について(取りまとめ)(令和7年12月24日).pdf, Page 6)
研究対象者等に通知又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置き、研究が実施又は継続されることについて、研究対象者等が拒否できる機会を保障する方法をいう。
(資料2:倫理指針の見直しの各論点について.pdf, Page 9)
「文書IC」、「口頭IC」及び「適切な同意」の用語を「IC」に統一する。また、研究に際しては、リスクに応じてIC又はオプトアウトいずれかを行うものとする。
(参考資料4-1 : 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(概要)(第7回合同会議参考資料2-1).pdf, Page 2)
最後に、今後のスケジュールと注視すべき点について説明します。
タスクフォースでは、今回挙げられた優先検討事項について引き続き審議を行い、見直し案を作成していきます。
また、個人情報保護法のいわゆる「3年ごと見直し」の議論の状況も踏まえながら、段階的な見直しが進められる予定です。
今回の指針改正案の公布は令和8年3月下旬、適用は令和8年7月を目指して準備が進められています。
研究者や倫理審査委員会の負担軽減を図りつつ、研究対象者の権利利益の保護を両立させることが今後の重要課題となります。
今後、必要に応じて少数の委員で構成するタスクフォースを設置し、見直し案をまとめる。
(資料1:生命科学・医学系研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議におけるタスクフォース委員及び座長の指名について.pdf, Page 4)
公布日 :令和8年3月下旬(予定)
適用期日:令和8年7月(予定)
(参考資料4-1 : 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針の一部を改正する件(概要)(第7回合同会議参考資料2-1).pdf, Page 3)
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