厚生労働省が「労働者の健康保持増進のための指針」を改正 がん検診やPHR活用の推進などを明確化
厚生労働省は、事業場における労働者の健康保持増進のための指針を改正しました。
近年の高年齢労働者の増加や働き方の変化、がんやストレスの増加といった社会情勢の変化に対応するためです。
今回の改正では、従来の生活習慣病対策だけでなく、一次予防から二次予防までの総合的な取組やデジタルツールの活用などが明確に示されています。
近年の高年齢労働者の増加、急速な技術革新の進展等の社会経済情勢の変化、労働者の就業意識や働き方の変化、業務の質的変化等に伴い、定期健康診断の有所見率が増加傾向にあるとともに、心疾患及び脳血管疾患の誘因となるメタボリックシンドロームが強く疑われる者とその予備群は、男性の約2人に1人、女性の約5人に1人の割合に達している。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 1)
1つ目の重要な変更点は、がん対策をはじめとする二次予防の取組強化と受診勧奨の明記です。
我が国においてがんが死因の第1位であり、生涯で約2人に1人が罹患すると推計されている現状が示されました。
これに伴い、生活習慣改善などの一次予防にとどまらず、早期発見や早期治療を行う二次予防の位置づけが明確化されました。
事業者は、医療保険者や自治体と連携し、がん検診等の受診機会の提供や結果に応じた精密検査の受診勧奨を行うことが求められています。
さらに、費用助成や特別休暇の付与、治療と就業の両立支援に向けた環境整備も重要とされています。
また、がんは、我が国において死因の第1位であり、年間約4人に1人ががんで亡くなっているほか、生涯のうちに約2人に1人が罹患すると推計されている。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 1)
二次予防を進めるためには、事業者が、正しい情報の提供等を含む健康教育等や職場における健康診断等の機会を活用したがん検診等の提供及びその結果に基づく医療機関への受診勧奨を実施することが必要である。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 3)
2つ目の重要な変更点は、女性特有の健康課題や多様な疾患に関する健康教育・検査の追加です。
指針では、従来のメタボリックシンドロームやメンタルヘルスケアに加え、より幅広い健康課題への対応が明記されました。
具体的には、月経不順や月経困難症、過多月経、月経前症候群、更年期障害といった女性特有の健康課題が挙げられています。
また、歯科疾患や骨粗しょう症、眼科疾患についても、予防に向けた健康教育や検査等の取組が重要であると位置づけられました。
高齢化を見据えた取組として、転倒リスクの確認やフレイル、ロコモティブシンドロームの予防についての健康測定も盛り込まれています。
さらに、がん、女性特有の健康課題(月経不順、月経困難症、過多月経、月経前症候群、更年期障害等)、歯科疾患、骨粗しょう症及び眼科疾患(以下「がん等」という。)といった健康課題についても、疾病の予防に向けた健康教育等の取組が労働者の健康保持増進のために重要である。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 2)
さらに、筋力や認知機能等の低下に伴う転倒等の労働災害を防止するため、体力の状況を客観的に把握し、自らの身体機能の維持向上に取り組めるようにするためには、具体的には以下の健康測定等を実施することが考えられる。
・転倒等のリスクを確認する身体機能セルフチェック
・加齢による心身の衰えを確認するフレイルチェック
・移動機能を確認するロコモ度テスト
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 6-7)
3つ目の重要な変更点は、デジタルツール(PHR)の活用促進と「健康経営」・コラボヘルスの明確化です。
労働者自身が健康保持増進に取り組む観点から、事業者はデジタルツール等を活用して生涯にわたる保健医療情報であるPHRの把握に努めるよう促すことが考えられるとされました。
また、事業者が労働者の健康保持増進に取り組むことは、将来的に収益性を高める投資であるという「健康経営」の視点が盛り込まれました。
経営的視点から戦略的に取組を実践することが、労働生産性の向上につながると説明されています。
加えて、生活習慣病予防等のために医療保険者と連携して行うコラボヘルスや、地域関係者との連携の重要性も再確認されました。
また、労働者が、自身の健康保持増進につなげていく観点から、事業者は、労働者に対して、デジタルツール等を活用し、生涯にわたる自身の保健医療情報(PHR:Personal Health Record)の把握に努めるよう促すことも考えられる。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 2)
加えて、事業者が、労働者の健康の保持増進を図るために、健康経営といった労働者の健康保持増進の取組が将来的に収益性を高める投資であることを理解し、健康管理を経営的視点から考えた上で、戦略的に当該取組を実践することは、労働生産性向上の観点からも重要である。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 1)
今回の指針改正により、事業場における労働者の健康保持増進対策は、より多様で実践的な方向へと拡充されました。
事業者は、表明した方針や把握した課題に基づき、中長期的な視点に立って計画的に取組を進めることが求められます。
衛生委員会などを活用して労使や産業保健スタッフの意見を聴きながら、地域や医療保険者と連携した実効性のある取組がどのように展開されていくかが注目されます。
事業者は、健康保持増進対策を中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行うため、以下の項目に沿って積極的に進めていく必要がある。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 3)
また、健康保持増進対策の推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うため、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用して以下の項目に取り組むとともに、各項目の内容について関係者に周知することが必要である。
([事業場における労働者の健康保持増進のための指針][261KB].pdf, Page 4)
この記事はアーカイブです。無料会員登録で続きをお読みいただけます。
登録は無料・パスワード不要(メールに確認リンクが届きます)。あわせて、隔週の便り(街の数字をひとつ、薬剤師の目で翻訳したもの)もお届けします。登録済みの方はログイン