ゲノムデータの個人識別性をめぐる新たな方向性:体細胞バリアントと単一遺伝子疾患の個人識別性「なし」と整理
厚生労働省において、第3回ゲノムデータの個人識別性に関する検討会が開催されました。
開催期間は、令和8年8月7日から8月21日までとなっており、持ち回りでの開催です。
今回の検討会では、ゲノムデータの利活用に向けた「2026年版とりまとめ(案)」が審議されました。
ゲノムデータの重要性が急速に高まる中、個人識別符号に該当する範囲について科学的な観点から整理が行われています。
【日 時】
令和8年8月7日(金)~ 8月 21 日(金)
【方 法】
持ち回り開催による
(議事次第.pdf, Page 1)
ゲノムデータの利活用は、先進的な医療を更に発展させるとともに新たなイノベーションを生み出す上で不可欠な要素であり、保健医療分野におけるゲノムデータの重要性が急速に高まっている。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 4)
主要な論点・合意事項として、重要な変更点が3つあります。
1つ目の論点は、体細胞バリアントの情報に個人識別性がないと整理されたことです。
体細胞バリアントは、受精後に細胞のDNAに発生する変異を指します。
この変異は、治療やがんの進展、紫外線などの影響により、時間や組織ごとにパターンが大きく変わり得る特徴を持ちます。
このように情報の可変性が極めて高いため、安定して保持されるものではありません。
そのため、科学的な観点から、体細胞バリアントの情報のみを切り出した情報については、特定の個人を識別できる情報ではないと整理されました。
以上を踏まえると、体細胞バリアントの情報は、時間の経過を通じて安定的に保持されるものとはいえず、情報の「可変性」の程度が大きく、個人識別性がないものといえる。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 10)
2つ目の論点は、単一遺伝子疾患などの生殖細胞系列の病的バリアントについても、個人識別性がないとされたことです。
病的バリアントは、集団の中で血縁関係のない複数の人の間で共有される可能性が高いことが知られています。
また、得られる情報量も限定的であり、特定の個人との結び付きが弱いとされています。
同じバリアントを持つ別の個人を排除することができないため、情報の「一意性」が低いと考えられます。
したがって、これらの病的バリアント情報のみを切り出した場合も、常に特定の個人を識別できる情報ではないと整理されました。
単一遺伝子疾患等の生殖細胞系列の遺伝的バリアントの情報は、多くの場合には、40 箇所未満の SNPで構成される等、情報量が限定的であり、複数の非血縁者との間で同じ情報が共有される可能性が高いという意味において特定の個人との結び付きが弱く、情報の「一意性」が低いと考えられることから、個人識別性がないものといえる。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 12)
3つ目の論点は、ゲノムデータそのものの取扱い方針と、匿名加工や仮名加工の技術的な難しさが明確にされたことです。
疾患の原因遺伝子を探る研究などでは、ゲノム全体の情報をマスクせずに解析することが本質的に必要となります。
また、将来的な科学的知見の向上によって、新たに重要なゲノム領域が出現する可能性もあります。
このため、研究に必要な情報量を保ったまま、匿名加工や仮名加工を行うことは技術的に困難であるとされました。
結論として、現時点ではゲノムデータそのものの多くが特定の個人を識別できる情報に該当することを前提とし、その上で利活用の方策を検討していくことが適当であると確認されました。
現時点での科学的な観点からは、ゲノムデータについて、研究に必要な情報量を保持した状態で匿名加工や仮名加工を行うことは難しい。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 7)
他方で、現時点ではゲノムデータそのものについては、その多くが特定の個人を識別することができる情報に該当すること、また、ゲノムデータが個人識別性を有することを前提として、利活用の方策を検討していくことが適当であることも確認された。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 16-17)
今回の検討会では、科学的なエビデンスに基づき、ゲノムデータの個人識別性について明確な整理が行われました。
今後は、このとりまとめの考え方を広く周知し、研究環境の整備を進めていくことになります。
医療研究の現場が萎縮することなく、ゲノムデータの利活用や研究を円滑に行えるよう、さらなる方策の検討が期待されています。
とりまとめの考え方を周知し、研究環境を整備するとともに、その利活用の在り方について、各所で行われている議論を踏まえ、研究現場が萎縮することなくゲノムデータに係る研究を行えるような方策を検討していくこともあわせて重要であることが確認された。
(資料1 ゲノムデータの個人識別性に関する検討について 2026年版とりまとめ(案).pdf, Page 17)
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