月経や更年期症状による経済的負担は年2.2兆円超、日本医療政策機構らが推計を発表
就労世代の女性が抱える健康課題が、社会全体にどのような影響を与えているかを示す最新の研究成果をお伝えいたします。
日本医療政策機構などの研究チームによる論文が、国際学術誌「Reproductive Health」に掲載されました。
この論文は、月経や更年期の症状に伴う労働生産性の低下が、国全体でどの程度の経済的損失を生み出しているかを推計したものです。
調査結果からは、女性特有の健康課題が個人の問題にとどまらず、多大な経済的負担をもたらしている実態が明らかになりました。
日本医療政策機構(HGPI:Health and Global Policy Institute)女性の健康プロジェクトの調査研究に基づく論文「月経・更年期症状による経済的負担:就労世代女性におけるアブセンティーズムとプレゼンティーズムによる生産性損失(Financial burden of menstrual and menopausal symptoms: productivity loss from absenteeism and presenteeism among working-age women)」が、国際学術誌 Reproductive Health に掲載されました。
(月経・更年期症状による経済的負担)
まず、この研究の基礎となったデータについて詳しく見ていきましょう。
本研究は、2022年9月に全国の25歳から59歳の男女10,000名を対象として実施されたインターネット調査に基づいています。
その中から、実際に働いている女性3,046名の回答を抽出して分析を行いました。
分析にあたっては、国際的に検証されている「労働生産性・活動障害質問票」、いわゆるWPAIを用いています。
これにより、月経や更年期に伴う症状が、仕事にどれほどの影響を与えているかを国レベルの規模で推計しました。
本論文は、当機構が女性の健康週間に合わせて2023年3月に公表した調査報告書「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」の基礎データを用いたものです。全国の25歳から59歳の男女10,000名を対象に2022年9月に実施したインターネット調査のうち、就労中の女性3,046名の回答を分析し、検証済みの労働生産性・活動障害質問票(WPAI)を用いて、月経および更年期に伴う症状による生産性損失(アブセンティーズムおよびプレゼンティーズム)の経済的影響を国レベルで推計しました。
(月経・更年期症状による経済的負担)
次に、就労女性たちが実際に経験している具体的な影響についてのデータです。
調査によりますと、働く女性の約7.0%から8.8%が、症状を理由にして欠勤や労働時間の短縮を経験していました。
また、これらの症状による欠勤は、直近の3か月間で平均して2日から3日の休業に相当することが分かりました。
さらに、労働時間の短縮についても、直近3か月で2時間から5時間に及んでいる実態が示されています。
そして、全体の79.7%に達する女性が、月経または更年期の症状が日々の仕事の生産性に影響を及ぼしていると回答しています。
就労女性の約7.0〜8.8%が、症状を理由とする欠勤または労働時間の短縮を経験していた。
月経・更年期に伴う欠勤は、直近3か月で2〜3日の休業および2〜5時間の労働時間短縮に相当していた。
79.7%の女性が、月経または更年期の症状が仕事の生産性に影響したと回答した。
(月経・更年期症状による経済的負担)
続いて、最も注目すべき経済的な損失額の推計結果についてお伝えします。
月経や更年期の症状による生産性損失がもたらす全国レベルの経済的負担は、年間で約2兆2,963億円、ドル換算では約146.5億ドルに上ると推計されました。
この巨額な損失の内訳を詳しく分析すると、二つの要因に分けることができます。
一つは、病気などを理由に仕事を休む「アブセンティーズム」によるもので、これが約3,240億円、ドル換算で約20.7億ドルとなっています。
もう一つは、出勤はしているものの体調不良により業務効率が落ちる「プレゼンティーズム」によるもので、これが約1兆9,724億円、ドル換算で約125.9億ドルを占めています。
このように、出勤はしているものの生産性が低下している状態による損失が、全体の大部分を占めていることが示されました。
これらの症状による生産性損失に起因する全国レベルの経済的負担は年間約2兆2,963億円(約146.5億ドル)と推計され、その内訳はアブセンティーズムによるものが約3,240億円(約20.7億ドル)、プレゼンティーズムによるものが約1兆9,724億円(約125.9億ドル)であった。
(月経・更年期症状による経済的負担)
最後になりますが、今回の研究成果が示す今後の方向性と注視すべき点についてまとめます。
この研究は、就労世代の女性が抱える健康課題への対応が、単なる職場環境の整備にとどまらないことを示しています。
適切な支援を行うことは、社会全体に対して極めて大きな経済的効果をもたらす可能性を秘めているのです。
女性が社会経済活動に十分に参画できる環境を実現するため、女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスのニーズに応える職場の取り組みが求められます。
今後、この研究結果をもとに、各企業や政府がどのような支援策を打ち出していくのか、その動向に大きな関心が集まっています。
本研究は、就労世代女性の月経・更年期に伴う症状への対応が、ジェンダーに配慮した働きやすい職場環境の整備にとどまらず、大きな経済的効果を生み出しうることを示すものです。女性が社会経済活動に十分に参画できる環境を実現するため、女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスのニーズに応える職場の取り組みが求められます。
(月経・更年期症状による経済的負担)
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