← CrossHealth

大阪都構想の「区割り」を、統計的に考えてみた

—— 2050年の人口を、ベイズとオペレーションズリサーチで

※これは特定の制度改革(いわゆる「都構想」)の是非を論じる記事ではありません。「大阪市の行政区をどう分けるか」を、将来人口推計と統計手法で分析し、手順まで開示する試みです。立場は一貫して中立——特定の区数・区割りを推すのではなく、統計的に何が言えて、何が言えないか(=不確実性)を示します。

はじめに

「大阪を何区にすべきか」——この問いには、実はもう一つ手前の問いが隠れています。各区に、どれだけ"医療・福祉の自立"を求めるか。

救急・入院・在宅医療・福祉を区が自前で支えるには、一定の人口規模が要る。つまり区数を決める前に、まず「一つの区に、どれだけ"健康を守る力"を持たせたいか」を決める必要がある。

本稿は、その構造を公開データと統計手法で示す試みです。特定の区数は推しません。お渡ししたいのは、答えではなく"正しい問い"です。

① 2050年、大阪市は「不均一に」縮む

社人研(令和5年推計)から大阪市24区の2020→2050年を見ると、市全体は275.2万人 → 243.0万人(−11.7%)。区差は大きく、大きく減る区=大正(−37%)・西成(−36%)・住之江(−29%)、増える区=西(+11%)・北(+9%)・中央(+9%)。

大阪市24区 2050年 人口変化率(社人研 令和5年推計)
大阪市24区の2050年人口変化率。同じ市内に「4割減る区」と「1割増える区」が併存する。

② 方法:ベイズ × オペレーションズリサーチ

区割りを「統計的に推定」するため、三つを組み合わせました。手順はすべて開示します。

  1. ベイズ(将来人口の不確実性):各区の2050人口を、点推定ではなく確率分布として何千通りもサンプリング。市全体に共通する幅は、社人研の全国出生高位・低位推計(2050年で中位比 +3.9%/−3.3%)で較正。区ごとに固有の幅(主に人口移動の不確実性)は感度分析で扱いました。
  2. OR(最適化):各人口サンプルについて、飛び地を作らない(連結)制約のもと、区役所どうしの近さ(地理的まとまり)人口バランスを最適化して、24区をK個のグループにまとめる問題を解く。
  3. コンセンサス(合意):何千通りもの結果を重ね、「多くのシナリオで同じグループになる区(=安定したコア)」と「シナリオ次第で所属が変わる区(=揺れる境界)」を確率で抽出しました。

※最適化は近似解法(多スタート)です。連結制約付きの厳密最適解は計算量が大きく、区数は手法により前後1区の幅があります。だからこそ「単一の正解」ではなく分布で扱います。

③ 結果:安定したコアと、揺れる境界

「5区/6区/7区に分けるなら」それぞれについて、統計的に推定したコンセンサス区割りがこちらです。赤いハッチの区=所属が揺れる境界区(=どのグループに入るか、将来人口次第で変わる区)です。

大阪市24区 コンセンサス区割り(2050推計×ベイズ×連結最適化)
2050推計×ベイズ×連結最適化による合意的な区割り(一例)。赤ハッチ=帰属が揺れる境界区。特定案の提案ではありません。

読み取れることは、こうです。

④ これは「将来 × 統計」の問いである

なぜこう考えるのか。区が救急・入院・在宅医療・福祉を自前で完結させるには一定の人口規模が要り、小さすぎる区は自立できません。逆に大きすぎれば住民自治は薄れる。このトレードオフは、将来人口を入れると一段シビアになる。だから区割りは、“今”ではなく“2050年でも自立できるか”を、不確実性ごと設計する必要があります。統計は、その「揺れ」まで含めて見せられます。

正直な限界(隠さず)

結論

「大阪を何区にすべきか」に単一の正解を探すと、議論は水掛け論になりがちです。でもデータは、もっと生産的な問いを示します——各区に、どれだけ"医療・福祉の自立"を求めるか。 それさえ決まれば、区数はおのずと絞られる。

私たちがお渡しできるのは、答えの断定ではなく、この"問いの立て直し"と、確からしさの見せ方です。その先を、読んでくださっているみなさんと、これからも一緒に考えていきたいと思っています。

データ出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別/将来推計人口(令和5年推計)」/国土地理院 行政区界・地名情報(区役所位置)。分析:CrossHealth(ベイズ×オペレーションズリサーチ)。本記事は公開データのみを用い、個人情報は含みません。特定の政策の是非を主張するものではありません。