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【Vol.8】問われる制度の持続、強化される危機への備え。(2026年1月17日号)

はじめに

こんにちは、医療政策ウォッチャー編集長の木内翔太です。
第8号のニュースレターをお届けします。

新年が明け、令和8年度の報酬改定が目前に迫る中、医療・介護の現場では「制度の持続可能性」という根源的な問いが突きつけられています。
45兆円を超える国民医療費、減り続ける現役世代、そして相次ぐ感染症危機。この構造的な転換期において、私たちは何を守り、何を変えるべきなのでしょうか。

今週は、「制度改革の論点」「危機管理の基盤」「治療の最適化」「医療提供体制の実態」という4つの視点から、2026年の医療政策を読み解く4つのニュースを厳選しました。

1つ目は、「日本医療政策機構による医療制度持続への5つの論点」
薬価制度改革を軸に、医療費の見える化、保険収載の在り方、感染症対策医薬品の供給、財源確保、自治体助成の適正化まで、制度の根幹に関わる課題が体系的に整理されました。

2つ目は、「国立健康危機管理研究機構(JIHS)の設立と中期目標」
令和7年4月に発足した新たな司令塔は、平時から有事までを見据えた機動的な組織運営、感染症インテリジェンスのハブ機能、一気通貫の研究体制により、日本の公衆衛生構造を根本から転換します。

3つ目は、「WHOによるHIV治療ガイドライン2026年版」
第一選択薬の確立、治療の簡素化、母子感染予防の方針転換、結核予防療法の短縮など、科学的根拠に基づいた治療の最適化が、患者中心のアプローチとして示されました。

4つ目は、「令和7年10月の病院報告が示す医療提供体制の構造変化」
入院患者の減少と外来患者の急増、病床利用率の低下、在院日数の短縮──データが映し出すのは、「入院から在宅・外来へ」という不可逆的な潮流です。

今週も、足元の経営から世界の潮流までを繋げて、サクッと解説します。

医療制度の持続可能性を問う5つの論点 日本医療政策機構が示す改革の全体像

導入

  • 日本医療政策機構(HGPI)は、医療システムの持続可能性とイノベーションの両立に向けた政策提言を発表しました。

事実

  • 提言は、2024年から2025年度の活動を取りまとめたものです。

  • 日本の国民医療費は2021年度で45.0兆円に達し、このうち患者負担は約12%にとどまる一方、公費への依存度は32.5%に上ります。

  • 現役世代が減少し、経済の低成長が続く中で、制度を支える基盤が揺らいでいます。

  • 提言では、薬価制度改革を中心に5つの主要な論点が整理されました。

3行要約

  • 保健医療システムの「見える化」と指標の統一

    • 国全体の医療費の状況を、より迅速に国民へ伝えるべきだと指摘しました。現在は公表データに2年から3年のタイムラグが生じています。

    • 2028年度以降には医療機関で発行される明細書の完全義務化が予定されており、点数表記から円/値段表示への移行も検討課題に挙がりました。

    • 「多剤服用」の定義など、制度ごとに異なる評価指標を統一し、データを活用できる環境を整える必要があります。

  • 医薬品の保険収載と価格算定の在り方の見直し

    • 既存の医薬品の中で役割が変化したものについて、保険給付範囲を見直す仕組みが必要だと訴えました。諸外国の医療技術評価(HTA)の事例も参考に、関係者による議論を開始すべきとしています。

    • 革新的な医薬品については、医学的有効性に加え、患者自身の感覚や社会的価値(痛みや介護負担の軽減)も考慮すべきとされました。

    • 市場拡大によって価格が引き下げられる現行のルールについても見直しが提案され、新たな名称案として「持続可能性価格調整(PASSS)」などが示されています。

  • 感染症対策医薬品の安定供給と安全保障上の備え

    • 抗菌薬や抗ウイルス薬は、平時の使用量が限られるため、現行制度では採算が取れず企業が製造から撤退するリスクがあります。

    • 提言は、こうした医薬品を安全保障上の備えと位置づけ、市場価格に依存しない価格保証や、備蓄と連動した仕組みを検討すべきだとしています。

    • 医療現場では抗菌薬の確保に苦労する事態も起きており、国による価格維持や支援策の強化が求められます。

地域現場への影響

  • [経営・収益]

    • 医療費の実態が国民に広く共有されることで、給付と負担のバランスを見直す議論が加速しそうです。

    • 革新的な新薬が高い価格で評価される一方、既存薬の保険適用範囲が縮小される可能性があります。

    • 薬価の引き下げだけでは限界があるため、社会保険料や税負担の増加についても正面から議論する必要があります。

  • [連携・実務]

    • 国民負担率は1970年度の24.3%から2024年度には45.8%へと上昇しており、特に社会保障負担率は3倍以上に増えました。

    • 消費税を含む税財源の投入や、負担能力に応じた制度設計が不可欠ですが、低所得者層への配慮や世代間の公平性について丁寧な説明が求められます。

    • 多くの自治体が実施する子供の医療費無料化についても、所得に応じた一部負担の導入など、制度の適正化が議論される可能性があります。

  • [チャンス]

    • データに基づいた客観的な議論を通じて、持続可能な医療システムの構築を目指す姿勢が示されました。

    • 平時の需要が少ない重要医薬品に対し、国による価格維持や支援策が強化されることで、薬局は医薬品供給の「インフラ」としての価値を高める機会を得られるかもしれません。

    • 誰もが安心して医療を受けられる社会を守るため、痛みを伴う改革も含めた国民的な対話が求められています。

引用

日本医療政策機構 医療制度持続へ5つの論点 hgpi.org

感染症危機管理の新たな司令塔が始動 国立健康危機管理研究機構が描く5つの戦略目標

初出:note(@ski_sph)

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